山田裕貴:俳優としての“土台”が完成「30代からは骨組み」 朝ドラ出演後の反響や心境も語る

連続ドラマ「SEDAI WARS」と「ホームルーム」で主演した山田裕貴さん
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連続ドラマ「SEDAI WARS」と「ホームルーム」で主演した山田裕貴さん

 MBS・TBS深夜の「ドラマイズム」枠の連続ドラマ「SEDAI WARS(セダイウォーズ)」が放送中だ。世代間のあつれきで多くの問題が深刻化した近未来の日本を舞台に、首相に代わって日本を治める大統領を決める「SEDAI WARS」が開催されるという内容。連ドラ初主演で、MBS深夜の「ドラマ特区」枠で放送される連ドラ「ホームルーム」と合わせて同時期に2作品で主演を務める山田裕貴さんに、俳優としての20代の活動や現状、今後について聞いた。

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 ◇朝ドラ出演の反響の大きさには悔しさも

 山田さんは2019年、“100作目の朝ドラ”として注目を集めた連続テレビ小説(朝ドラ)「なつぞら」の小畑雪次郎役や、映画「HiGH&LOW THE WORST」の村山良樹役など、多くの作品に出演し、注目を集めた。

 中でも朝ドラの雪次郎の注目度は高かったが、反響を聞くと、「予測はしていましたが、『朝ドラ見ているよ』と言われることはすごくうれしい部分もあり、逆に自分に対して悔しくなる部分もある。今までと熱量は変わっていないし、やってきていることも変わっていないので……。なんか悔しい」と揺れる心境を明かす。

 続けて、「今までは違う肩書きで紹介されていたのが『朝ドラ俳優』に。最初から応援してくれている人からすれば、『そんなことない』って思ってくれるのでしょうが、そこから知った人には、その印象が強い」といい、「9年やってきて、これに出たらそういうことになるんだろうなって。もちろんマイナスなイメージじゃなくて、まあ“やきもち”みたいなものですね」と真意を説明する。

 そして、「朝ドラという特別なものではなくても、そういうふうに認めてもらえるような俳優になってなきゃいけなかったなと反省しました」と話し、「そうじゃないところでも認められるようにならなきゃなと思います」と決意を新たにしていた。

 ◇2019年も現場に「愛されたな、愛せたな」と実感

 そんな状況の中で、2020年1月期は連ドラ2作で主演を務めるという異例の挑戦をする山田さん。忙しいスケジュールが容易に想像できるが、山田さんは「(昨年は)結構シリアスな役が多かった。刑事ものをやったり徳川慶喜をやったり、雪次郎は悩んでいたし『HiGH&LOW』もあったりで、僕の中でいろいろぐちゃぐちゃだった」と振り返り、「だから(『SEDAI WARS』の現場の雰囲気が)逆にすごくいいんだと思う。考え込んでいないというか」と話す。

 その理由を、「だいたいアクションものは『うおー!』とか『はー!』とかそういう声が多いじゃないですか」と前置きし、「出合(正幸)さんが気合を入れて走り出すシーンで、(甲高い声で)『やーい!』って。初めて聞いたんですけど、みんな大爆笑。流行語大賞ですよ」と笑いながら説明する。

 また「ホームルーム」の現場では、「演技なのか、演技じゃないのか分からないところが、僕の強み。本当にこの人そうなんじゃないかという変態性が出ていると思う」と自信をのぞかせ、「ポリシーとして“演技しない”ということをずっとやってきた強みというか、『僕の中にあるのでは……』というのを引き出して引き出して、ラブリン(という役)を“生きている”。2019年も愛されたな、愛せたな現場を、と思いますし、味方されているなっていう感覚がすごくあります」と語る。

 ◇同世代俳優を全員“仲間”にしたい

 「SEDAI WARS」ではバブルやゆとりといった「世代」が一つのテーマになっているが、山田さん自身、世代というくくりは気にならないという。そんな山田さんにあえて「同世代俳優」をどう思っているかと聞くと、「同世代の人たちはすごいんです。三浦春馬君、林遣都君、柳楽優弥君、佐藤健さん、岡田将生さんも一つ上で、なんなら僕がテレビの、この世界に来る前から見ている人たちばかり」と答える。

 続けて、「劣っているなとしか思わない。劣っているというのもマイナスの意味ではなくて、経験では確実にかなわないということ。作品数だったりいろんな監督や共演者の方との出会いだったりは、まだ少ない」といい、「だからまだまだだなって思う」と説明する。

 さらに、「若手俳優といわれても、今年30歳だしなって(笑い)。若い子たちはどんどん出てくるし、林君とか岡田さんとかも仲よくしていて、みんな仲間にしちゃえばいいやって。世代とか関係なく、監督もスタッフさんも共演者の方も、全員仲間にしたら絶対やりやすいと思う」と持論を展開する。「ちゃんと愛される人格者にならなきゃなって。有言実行の男であり、ユーモアもあり、人に愛されて、そういうふうに生きていたら、まあ笑って死ねるんだろうなって思いながらやっています」と語った。

 ◇引っ張りだこの現状を冷静に見つめる

 今年9月には30歳となる山田さんに20代を振り返ってもらうと、「せりふがないエキストラから始めているから、(こんなに)出られると思っていなかった」と本音をちらり。「(『ホームルーム』)で“レギュラー生徒”と呼ばれて撮影に来ている子たちよりも全然で、歩いているだけとかからだった。みんなの気持ちは分かるから名前を覚えて、名前を絡めながら授業のシーンとかできたら、より学校感が出るなとか。そういう経験があって良かった」と実感を込める。

 さらに「舞台のセットを組み立てたりもしていたので、舞台に立つときに感謝できるし、出られるだけですごくうれしい」と笑顔を見せ、「だからいいものにしたい。せっかく出させてもらっているのに、『あの作品あまり良くなかった』ってスタッフさんたちに言われたら終わり。お返しできるくらいのところまでは来たのかなって。まだまだですけど……」と自己分析する。

 その根底には、「18歳のときに書いたノートに28歳でアカデミー新人賞を取ると書いてあったけど超えちゃっている。僕の中では、まだまだ。そんなに甘くないなと思っている」といい、「やってきた仕事すべてにおいて、いろいろ変われたし、進化できたと思っている。芝居だけでなく人との関わり方とか、自分には人を変える力があるのかもしれない、愛される力があるのかもしれない、みたいなことを信じさせてもらえる現場が多かった」と感謝する。

 そして、「演技や人物として、もっと残せる人にならないと、30代以降きついのだろうなって」と気を引き締める。

 自身の現状を「城づくりだとしたら、土台です。30代からが骨組み」と表現する山田さんに“完成予定”を聞くと、「人間50年。戦国武将をやっていたので、50代のときに天守閣に座れていたらいいなって思います」と回答。そのときは乗りに乗っていいのでは……と水を向けると、「50代までいったら、乗りに乗っていていいんじゃないですかね。今はまだ“ペーペー”ですよ」と笑う。

 そんな山田さんは、「周りに『すごいね』って言われてふんぞり返っている自分を見たら、その自分をぶん殴りたくなるぐらい嫌いな自分になっていると思う。だからこそ今、一番ピリピリしているし、演技に対しても何かもっとできるのではとか、面白くできたのではとか思ってしまう。抜け目なくやりたい」と真摯(しんし)に語った。

 ◇作品情報

「SEDAI WARS(セダイウォーズ)」は、世代間のあつれきで多くの問題が深刻化した近未来の日本を舞台に、首相に代わり、日本を治める大統領を決める「SEDAI WARS」が開催されるという内容。山田さんは、「SEDAI WARS」の出場者「SEDAI」に選ばれてしまったゆとり世代の主人公・柏木悟を演じる。MBSで毎週日曜深夜0時50分、TBSは毎週火曜深夜1時28分に放送。

 「ホームルーム」は、ウェブコミック配信サイト「コミックDAYS」で連載されている千代さんの同名マンガが原作。山田さんは、「ラブリン」の愛称で親しまれている爽やかイケメン教師で、生徒の桜井幸子を好きすぎるあまり、自分でいじめて自分で救う、自作自演の救出劇を繰り返し、幸子のヒーローを装う愛田凛太郎を演じる。MBSで1月23日から木曜深夜0時59分に放送。

 (取材・文・撮影:遠藤政樹)

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