NHK:番組担当が語る「混乱だらけ」の“テレワークドラマ”制作 見どころは俳優の「熱演」

「今だから、新作ドラマ作ってみました」のワンシーン(C)NHK
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「今だから、新作ドラマ作ってみました」のワンシーン(C)NHK

 NHKの“テレワークドラマ”「今だから、新作ドラマ作ってみました」が5月4日から、3夜にわたって放送される。打ち合わせやリハーサル、本番収録などを直接会わずに行って制作された新作ドラマで、出演者が自らメークや衣装、カメラワークまで担当しているという。過去に連続テレビ小説(朝ドラ)「ごちそうさん」や大河ドラマ「おんな城主 直虎」の制作統括を務め、今回ドラマ全体を統括する編成局編成センター副部長の岡本幸江さんに、テレビ会議システムを使って“テレワークドラマ”制作の裏側や見どころなどを聞いた。

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 ◇まったくの手探りで、本当に試行錯誤

 ドラマは、満島真之介さんと前田亜季さんが出演する第1夜「心はホノルル、彼にはピーナツバター」、小日向文世さんと竹下景子さんが出演する第2夜「さよならMyWay!!!」、柴咲コウさん、ムロツヨシさん、高橋一生さんが共演し、森下佳子さんが脚本を手がけた第3夜「転・コウ・生」の3本。それぞれのドラマで描かれるのは、2020年4月以降の現在の世界。新型コロナウイルスの影響により外出自粛を余儀なくされている人々の姿が描かれる。第1夜は5月4日午後11時40分、第2夜は5月5日午後11時15分、第3夜は5月8日午後11時40分からNHK総合で放送される。

 新型コロナウイルスの影響で多くのドラマが当面の収録を見合わせている中での制作。岡本さんは、ドラマを制作した背景について「新しいドラマは収録が止まってしまったけれど、(ニュースなどで)正確な情報をお伝えするとともに、何か人の心に届くもの、温めるものが両輪として必要なのでは、と思いました。こういう状況の中でもフィクションや物語をお届けできないかと考えていました」と説明する。

 通常、ドラマの撮影は、俳優のほか監督ら演出陣や、衣装、照明、撮影などのスタッフが狭い範囲に集まるため、“密”を避けることは難しい。そこで採用した手法が“テレワーク”での制作だ。企画が走り始めてからの展開は速く、一例を挙げると、約1週間でプロットが完成、10日少々で脚本が出来上がり、2週間後には収録が始まっていたという。オファーした俳優陣の反応については、「『面白いからやりたい』という方や『こういう時期だから何か自分もできないかと思っていた』と言ってくださる方が多かったですね」と振り返る。

 そうした中で始まったテレワーク制作だが、技術的には「混乱だらけ」だったという。「収録では、月曜の午前9時ごろは日本中でテレワークが始まるのか、回線が固まって声が途切れ途切れで全然姿が見えない、とか(笑い)。やったことがなかったので『こんなところでトラブルになるか』となり、まったくの手探りでしたね。本当に試行錯誤です」。また、カメラアングルなどは出演者に委ねている部分もあるといい、「『こういう方がいい』とか、“マルチなスタッフ”として助けられました。衣装も、普通は我々が提案するんですが『そういう設定ならこういうのはどうですか』と(出演者から)ご提案もありました」と裏側を明かす。

 そのように俳優陣が担当することは多く、撮影後は「へとへとになっていました」という。第3夜「転・コウ・生」で主演を務める柴咲さんも自身のツイッターで「へとへとです」と明かしていたが、「自分で(スマートフォンなどで)撮影して、自分でカメラアングルを決めて、動き回って、チェックもして……。本当にへとへとになって、『本当に大変だった、終わらないかと思った』とおっしゃっていたり(笑い)。あと、30分ほぼ2人芝居とかなので、あまりのせりふ量の多さに、またへとへとな思いをされて……ご苦労をかけたなと思います」と振り返る。

 ◇俳優の熱い熱い思いに、何とか支えられ…
 
 そうして完成した3本のドラマ。仕上がりについて岡本さんは「ドラマの(NHKとしての)独自性がどこまで発揮できているか、ご覧になる方の判断に委ねられる部分かなと思う」としつつ、「地上波の電波で放送される番組なので、見た後にほっとするとか、明るい気持ちになるとか、力が湧くとか、人に寄り添うような、温かみのあるものにしたいと思っていました」と説明する。

 テレワークゆえ作中のロケーションも変化がなく、登場人物も2~3人と少ないなど、通常のドラマと比べて異色。だが、そうした制約の多い状況だからこそ、出演した俳優たちの芝居に支えられている部分が大きいという。岡本さんはドラマの見どころに俳優陣の熱演を挙げ、「本当に俳優のお芝居そのものに支えられている。ものすごく熱のこもったお芝居をしてくださっていて。俳優の熱い熱い思いに、何とか支えられている部分があります。熱演はぜひご覧いただきたいと思います」と手応えを語った。

 今回の企画がきっかけとなり、現在は「『こういったこともできるんじゃないか』という提案を、次々といろいろなところからいただいている状況」だという。長引く外出自粛で、ドラマの収録も思うようにいかない状況だが、「これを足掛かりに、新たな表現を探していく、という試みが継続していくといいなと思っています」と岡本さんはテレワークドラマの可能性を口にする。最後に「どうやったら発展させられるのかは今後の議論になると思いますが」としたうえで、「ノウハウをためて、また、新たな作品をお届けしたいなと思っています」と新作への意欲もみせていた。

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