和月伸宏さんの人気マンガを俳優の佐藤健さん主演で実写化した映画「るろうに剣心」(大友啓史監督)シリーズの最終章「るろうに剣心 最終章 The Final」が、4月23日に公開される。今作のクライマックスに登場する、佐藤さん演じる緋村剣心と、新田真剣佑さん演じる“シリーズ最恐の敵”雪代縁(ゆきしろ・えにし)との1対1のアクションシーンの撮影が2019年3月、報道陣に公開された。現場で大友監督は「縁はラスボスだけど剣心にとって倒すべき敵ではない。本来なら、戦いたくない相手のはず。そんな感情が見えるアクションにしたいと伝えました」と語った。
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原作は、幕末に人斬り抜刀斎として恐れられた剣心が明治維新後、不殺(ころさず)を誓った流浪人(るろうに)として新たな時代の生き方を模索していく姿を描いた和月さんの人気マンガ。1994~99年にマンガ誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載され、テレビアニメ化もされた。実写映画はこれまで「るろうに剣心」「るろうに剣心 京都大火編」「るろうに剣心 伝説の最期編」の3作が公開されている。
最終章は、剣心の“十字傷の謎”に迫る物語と、中国大陸の裏社会を牛耳る謎の武器商人で“シリーズ最恐の敵”雪代縁との戦いを、動乱の幕末期と明治維新後の新時代の二つの時代を通して描く。シリーズ最後の作品となる「最終章 The Beginning」は6月4日に公開予定。
最終章の2作は、2018年11月から7カ月間かけて撮影され、熊本、広島、大阪、京都、滋賀、奈良など12都道府県43カ所以上という大規模ロケを行った。エキストラは延べ6000人を動員、総製作費50億円という日本映画空前のスケールで作られている。
最終章「The Final」のクライマックスとなる剣心と縁の対決シーンは、東宝スタジオ(東京都世田谷区)の最も大規模なスタジオに、縁のアジトとなる建物を庭とともに建造した。ここでのアクションシーンについて、大友監督は「アクション監督の谷垣(健治)さんには、感情が見えるアクションにしたいと伝えました」と明かす。
「縁は、ラスボスなんだけど剣心にとって倒すべき敵ではない。本来なら、戦いたくない相手。剣心はこの時代、人を斬りたくない、殺したくない。そして縁は剣心が一番戦いたくない相手、自分が手にかけてしまった巴(有村架純さん)という最愛の女性の弟で、剣心としては、贖罪(しょくざい)の意識というか、『すまない』としか言えない人と戦わないといけない……」と剣心の感情を慮る。
一方の縁も「同じようなニュアンスが感じられる。母親代わりだった姉を剣心に取られた感覚、命だけでなく心までも取られてしまったような感覚で、憎しみ以外の感情が生まれてきている」とし、「義理の兄と弟でもある2人の戦いは、濃密なエモーションがほとばしるものになっています」と力を込める。
今作でシリーズ初登場となる縁を演じる新田さんについて、大友監督は「初めて会ったとき抜群のポテンシャルは感じましたが、アクションはまだ見たことがなかった。現場に入って実際に撮影してみて、改めて身体性の高さを感じるし、それと相反する繊細な芝居も魅力的」と評する。
事実、新田さんは、事前準備はもちろん、現場でも体を作り続け、胸板を厚くしたという。撮影では「落ち着いた感じで、役に対しての取り組み方、アプローチの仕方もすごく真っすぐだった。姉への思いを抱えて1人たたずむシーンを撮ったんですが、美しいんです……」と大友監督は、その存在感を絶賛する。
新田さんのアクションは「振りが大きくて、正確で、すごく魅力的。縁らしい立ち回りを考えながらやっているし、謙虚にアクションシーンに取り組んでいて、きれいな立ち回りでした。澄み切った剣を感じられる」と表現。
対峙(たいじ)する佐藤さんは「剣心は役柄上、受け止めに行く剣なので。剣心も、縁の剣をすべて受け止める覚悟でここに来ているんだなということが分かるアクションになっています」と語る。
仕上がったアクションシーンは「これまでに見たことのないものになった」とエグゼクティブプロデューサーの小岩井宏悦さん。大友監督は「とにかく肉体とアナログにこだわった。2人の気力を受け止められる美術セットになるのか、それは壊しも含めての仕掛けや、ワイヤの動きも縦、横の組み合わせなど、谷垣さんも含めてスタッフが今までため込んできたアイデアが、いっぱい詰め込まれている」と自信をのぞかせる。
小岩井さんは、最終章について「実は2011年の第1章を撮影したときから佐藤健くんと大友監督とは『剣心が人斬りだった時代の話(エピソードゼロ=The Beging)をいつかやりたいね』という話はしていました」と明かす。スタッフ誰もがそう思っていたが、前2作の製作が困難を極めたため、「痛みと苦労を忘れるのに5年かかった」という。
2017年に検討用のシナリオが上がり、現実的に今作の製作が動き出したが、スタッフ・キャストの表現したいレベルがかなり高くなっていたため、撮影は困難を極めたという。大友監督は「これまでの人生で経験したことがないハードなものだった」と振り返る。
「前後編だった前2作とは違う、2作のまったく異なる映画を同時進行で撮ったからでしょうね。明治と幕末二つの時代を描かなくてはいけない。登場人物も重ならないし、ロケハンも衣装合わせも作業が倍。立ち回りも違う。撮影が永遠に続くんじゃないかと思ったこともありました」と途方に暮れた時期もあったという。
それを乗り越え、「(フルマラソンの)42.195キロを100メートル走の速さで走り抜けた感じ。今は最高の“登頂”ができた気分です」と晴れやかな表情で語った。
小岩井さんは「The Final」について、「(マーベルの)『アベンジャーズ』的なヒーロー大集合です。佐藤健はもちろん、武井咲、青木崇高、蒼井優、江口洋介、土屋太鳳らオリジナルキャストが再集結して、ものすごくエンターテインメント感が出た」と仕上がりに満足げだった。
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