機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ:小説発表から30年 今、映像化する理由 富野監督が予見した未来

「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の一場面(C)創通・サンライズ
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「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の一場面(C)創通・サンライズ

 人気アニメ「ガンダム」シリーズの最新作「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」(村瀬修功監督)が5月21日に公開される。同シリーズの“生みの親”である富野由悠季総監督が1989~90年に発表した小説が30年以上の時を経て、映像化される。なぜ、映像化されるまで30年以上の時が必要だったのだろうか? アニメを手がけるサンライズの小形尚弘プロデューサーに聞いた。

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 ◇“不可能”の理由 Ξガンダム、ペーネロペーの形状が複雑 

 「閃光のハサウェイ」は、1988年公開の映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(富野監督)のその後を描いた小説。宇宙世紀0105年を舞台に、第二次ネオ・ジオン戦争で苦い別離を経験したブライト・ノアの息子ハサウェイ・ノアが新型モビルスーツ・Ξ(クスィー)ガンダムを駆って、地球連邦政府に反旗を翻す。アニメは「虐殺器官」の村瀬さんが監督を務める。全3部作。公開劇場全館で劇場限定版ブルーレイディスクが5月21日に発売される。

 名作「閃光のハサウェイ」はなぜこれまで映像化されなかったのだろうか? 「閃光のハサウェイ」は映像化が不可能とも言われてきた。小形プロデューサーは、その理由の一つを「Ξガンダム、ペーネロペーの形状が複雑。30年前は3DCGもなかったので、難しかったのかもしれません」と説明する。

 「閃光のハサウェイ」では3DCGと手描きを融合して、複雑な形状のΞガンダム、ペーネロペーを表現した。技術の進化によって、映像化が可能になり、小形プロデューサーは「これまでの『ガンダム』とはまた違うモビルスーツ戦を表現できた」と自信を見せる。

 ◇富野監督が考えていたことに時代が追いついた 

 小形プロデューサーは「富野監督は、作品の合間に小説を書きます。『閃光のハサウェイ』は、小説ですが、企画書でもあったようです」とも話す。刊行当時、映像化のタイミングを逸してしまったことも、これまで映像化されてこなかった理由のようだ。

 「富野監督は常に新作を作りたいと考えています。富野監督は一度やった仕事をわざと忘れるから、新しいものができる。だから、『閃光のハサウェイ』をやりたいとは思わないでしょうからね。2000年代にゲーム用に『閃光のハサウェイ』の設定を足したことはありましたが、映像化しようとは誰も言わなかったようです。富野監督に言いにくかったのかもしれませんが」

 「閃光のハサウェイ」は30年以上前の作品ではあるが、古くささは感じない。むしろ現代的な作品であるという意見はある。確かに、環境問題、大国同士の戦いではなく、テロリズムとの戦いを描いているところなどは、現代的と言える。

 「富野監督は常に進化していて、未来を見ている方です。富野監督が描いたものは20、30年後に受け取るとちょうどいいところがあるんです。『Gのレコンギスタ』にしても、本当の意味で作品を理解できるのは20、30年後かもしれません。『閃光のハサウェイ』で描かれた世界は、未来を予見していました。当時の社会情勢を基に、正確に物語を描くと、未来にいきつくのは当然ですよね。結果、富野監督が考えていたことに時代が追いついた。だから、古くさくないんです」

 「閃光のハサウェイ」が2021年に公開されるのは必然だったのかもしれない。時代を超えたメッセージ、今だからこそできた最高の映像を堪能できるはずだ。

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