わたしの宝物
第6話 生まれ変わったら本当の親子になれるかな・・・
11月21日(木)放送分
NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「おかえりモネ」(総合、月~土曜午前8時ほか)で、ヒロイン・永浦百音(清原果耶さん)の同級生であり、漁師見習いの及川亮を演じている人気グループ「King & Prince」の永瀬廉さん。7月5〜9日に放送された第8週「それでも海は」では、亮の家族にスポットが当てられ、親子の間に今もなお残るつらい過去が明らかにされた。永瀬さんは複雑な思いを抱く亮を好演。ツイッターでは連日、亮の愛称「りょーちん」がトレンド入りするなど大きな反響を呼んだ。“抱える”役で存在感を発揮した、永瀬さんの演技の魅力に迫りたい。
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亮は百音と家族ぐるみで付き合う同級生で、高校卒業後から漁師見習いとして海の仕事に就いている。父・及川新次(浅野忠信さん)もかつて漁師をしていたが、東日本大震災の津波で船が流されてしまったことをきっかけに仕事を手放し、酒に溺れる日々。亮は働きながら、度々警察の世話になる父親の面倒も見ている、という設定だった。
そんな亮を演じる永瀬さんは、2019年4月期に放送された連続ドラマ「俺のスカート、どこ行った?」(日本テレビ系)でも事情を抱えた男子高校生・明智秀一を演じた。明智の父親は自らの過ちをきっかけに仕事を失い、荒れ果てた末に家族に暴力を振るうように。母は明智に200万円を残して家を出て行き、明智はその200万円を使って一人暮らしをしていた。しかし、父は200万円は自分の金だと言い張り、使った分を働いて返すようにと学校を辞めさせようとする。
明智のために、担任の原田のぶお(古田新太さん)は2人に対決の場を用意し、父が勝ったら明智は学校を辞めて働く、明智が勝ったら借金を帳消しにする条件を持ちかける。これまで自らの境遇に諦めを覚え、飄々(ひょうひょう)と振る舞うことで苦しみを押し殺していた明智は、その場で初めて内に秘めていた感情をあふれさせる……。
劇中での明智は他人と表面上でしか関わらず、周囲の物事に対しても常に冷ややかな目を向けていた。永瀬さんは輝きのない瞳や、伏し目がちな視線などで明智が持つ“陰の要素”を体現。思いが込み上げた対決シーンでは一変、表情を崩して泣く姿を見せ、クールなキャラクターの中にある人間味を引き出していた。
一方、朝ドラでの亮は、自分のことよりも周囲に気を配る優しさの持ち主。しかし、つらさや弱さを表に出さず、どんな時でも「大丈夫」だと周りからの心配をはね返してしまう。第8週より前の登場回でも、永瀬さんは所々で“光を失った瞳”の演技を披露し、他人を頼ることができない“孤独”な少年であることをうかがわせた。
そして第8週では、亮の母が震災の被害に遭い、行方が分からなくなっていたことが発覚。亮が一人の時に、携帯電話に残された家族の写真を眺め、静かに涙を流す場面では「亮の涙が切なかった」「胸が張り裂けそうだった」と視聴者の感情を揺さぶり、「孤独、悲しみ、寂しさを、一言も声を発さず表現してる」といった声も上がっていた。
さらに、新次が酒にすがるようになった理由には妻の不在も関係しており、新次がかつて自宅のあった場所で酒に酔っていたところを百音の家族に引き取られるシーンも登場。連絡を受けて永浦家を訪れた亮は、自身の成長を喜びながらも、それを分かち合う相手がいないと嘆く新次の背中を切なそうにじっと眺めていた。
第8週の亮の姿を通して、永瀬さん自身の持つ美しさも際立った。亮を演じる永瀬さんは“光を失った瞳”で一点を見つめる演技が印象的だったが、そこに彼本来の美しさがプラスされることで、よりはかなげな雰囲気が増していたように感じられた。永瀬さんの美貌は、アイドルとしてだけではなく、俳優としても役の魅力を広げられる武器になっているのかもしれない。
7月9日に放送された第40回では、亮が「俺たちは好きなように生きていい」と前を向く姿が描かれ、第8週が締めくくられた。自分の意志で、自らの人生を確かに歩き出した亮の未来を見守ると共に、永瀬さんはこの先の物語でどのような演技を繰り広げるのか、引き続き注目していきたい。