名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの最新作「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」の「前章 -TAKE OFF-」が10月8日から上映される。「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」に続き、福井晴敏さんがシリーズ構成、脚本を担当。福井さんは以前、「2202」について「震災後10年の気分」を描いたと話したこともあった。「2205」は“未来”を予言したかのような内容になっている。福井さんに「2205」で描こうとしたもの、“大河路線”を目指すという「宇宙戦艦ヤマト」の展開について聞いた。
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「宇宙戦艦ヤマト」は1974年にテレビアニメ第1作が放送され、「宇宙戦艦ヤマト2」「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」なども制作されてきた。第1作をリメークした「宇宙戦艦ヤマト2199」が2012~14年、「2199」の続編「2202」が2017~19年に劇場上映、テレビ放送された。「2205」は、安田賢司さんが監督を務め、サテライトが制作する。全2章。
「2205」はコロナ禍、イスラム武装組織タリバンがアフガニスタンで権力を掌握した“今”とリンクし“未来”を予言しているのでは?と感じるほど時代とリンクした作品だ。福井さんは「コロナ禍が始まる前に脚本を書き終わっている」と明かし、結果として時代とリンクしたところもあったようだ。
「不思議なことに今の世の中に向けたような内容になっていますね。しょうがないじゃないか?と皆が座り込み、膝を抱えている状況で、もう一度立ち上がってみないか?と呼びかるために何をしたらいいのか? 人間が生きていくのは何のためだろう?と。昔は、疑いなく発展するため、幸せになるためだったけど、今は、その発展の代償をここまで突きつけられていると、素直にそうは言えなくなっている。でも、やっぱり幸せになるためには譲れないものがある」
「2205」は「2202」で描いた時代の空気にさらに踏み込んだ結果、時代とリンクしたのだろう。
「下り坂が続いていることを本能では理解してるけど、生き方、社会のシステムが、それに全く付いてきていない。その中でどうするのか? 近年、持続可能といった言葉も出ていますが、あれにしてもちょっと極端に走っているようなところがありますよね。新しい生活様式もそうですよね。“新しい”と何でそんなにうかつに言えてしまうのか? コロナ禍の生活様式ですよね。“新しい”というのは“ずっとこうなります”とその場で宣言しているようなものですし」
「2205」は、古代の変化も印象的だ。「2202」の経験をへて、一つ一つの言葉に確信めいたものを感じる。古代の成長なのだろうが、福井さんの脚本ということもあり、一筋縄ではいかないのでは?とも考えてしまう。
「古代は本心でしゃべってはいますが、『2202』で全人類の総意で助けてもらい、だから自分を殺してでも尽くさないといけない……と思っている。そういう人間が組織のトップに立っていると危ない。後章ではそのことによるクライシスが起きます。デスラーは、古代よりも一足早く、自分に対して誠実に生きることを成し遂げていますが、『2205』で最悪なことが起きてしまう。そんな二人が再会した時にどうなるか?が大きなポイントになってきます」
新キャラクターとして畠中佑さんが声優を務める土門竜介も登場する。新世代の登場によって、新しい風が吹いた。
「衝突のドラマがなければ、物語は前進しない。古代にとって傷口に触れる土門というキャラクターを面前に置いた。(土門を演じる)畠中君の持ち味も大きいと思うんですけど、彼が新しい空気を持ってきてくれました」
土門の存在には、ある種の泥臭さも感じるところがある。福井さんは「原点回帰のような懐かしい感じもしませんでした?」と語る。
「原作は、ファミリー路線に転換しようとしたんですよね。大河路線をやろうとしていたけど、子供向けにすることを考えて、そうなったと思うんです。そこを踏襲するわけではないけど、若者だけに視点を置くのではなく、沖田の世代、古代の世代にも視点を置くことで、結果として3世代の視点、ファミリー向けとして見ることができるようになった。懐かしさの正体はそこです。今はファミリーものがあまりない。特定の世代に向けた作品ばかりですしね。『2199』が始まった頃から時代も変わりました。全世代に向けようとすると、デッサン狂いが生じてしまうと思うんです。倉本聰さんが『やすらぎの郷(さと)』で特定の世代に向けたようなものは、アニメでは意外にまだありません。特定の層に向けているけど、もっと広く見ていただきたい。それこそ、映画は400万人を動員したわけなので、まだまだできると思うんですよね」
福井さんは、6月に開催された「『宇宙戦艦ヤマト』という時代 西暦2202年の選択」の上映記念舞台あいさつで「ここからは大河路線に走っていきます」と宣言したことがあった。
「本来、『ヤマト』はそうしたかったはずなんです。新しいキャラクターを育て、古代を沖田のような立場にして、新世代の活躍も描き、地球とガミラスの関係をしっかり描く。ただ、古代と雪がやっぱり人気がありますしね。『新たなる旅立ち』以降、前進できなかった。そこを前進させようとしている」
後章に向けて「これまで、気になっていることが一つあると思うのですが、その正体が明らかになります。古代、デスラーができれば知りたくなかった残酷な真実と直面します」と語る福井さん。“重い”内容になりそうではあるが「タイトルから喚起する爽やかさ、すがすがしさはある」とも話す。
「2202」でもまさか!の展開で驚かされたが、「2205」はどんなドラマを見せてくれるのだろうか? 大河路線にかじを切った「ヤマト」の今後の展開を含めて期待が高まる。
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