上野樹里:朝顔は「持続可能なキャラクター」 30代で「俯瞰で物事を見られるように」

ドラマ「監察医 朝顔」シリーズで主演を務める上野樹里さん
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ドラマ「監察医 朝顔」シリーズで主演を務める上野樹里さん

 2019年にフジテレビの月曜午後9時の「月9枠」で放送された連続ドラマ監察医 朝顔」。その後2020~21年にかけて同じ月9で2クール連続放送と長期シリーズとなった作品が、9月にスペシャルドラマ「監察医 朝顔2022スペシャル」として戻ってくる。物語の舞台は連続ドラマ終了から1年半後。主人公・朝顔として向き合う上野樹里さん(36)はどんな思いで本作に挑んだのだろうか――。

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 作・香川まさひとさん、画・木村直巳さんの同名コミックを実写化した本作。上野さんは興雲大法医学教室の法医学者・万木朝顔を演じているが、3年にわたる放送のなかで、朝顔自身、ドラマの中で、東日本大震災で亡くなった母親の思いに向き合い、結婚や出産などを経験し、成長した姿を見せる。

 本作では連続ドラマ終了時から、1年半後の万木家が描かれる。上野さんは「生きていくうえで人が変化することは避けられない。台本のなかの朝顔も、私たちと同じように生きていて、当時と違う景色に直面している。時任(三郎)さん演じるお父さんとのある大きな決断も含めて、現在進行形で生きていると思ったんです。だからこそ、当時の気持ちに戻るのではなく、いまの自分で向き合える朝顔を演じられたらいいなと思って臨みました」と役へのアプローチ方法を語る。

 連続ドラマで放送されていた作品だけに、万木家や研究室、さらに解剖室など作品なじみのセットはしっかりと残っていた。上野さんは「やっぱりセットに入るとスッと引き戻されていくんです」とすんなり役に入り込めたというと「スタッフさんたちも、会った瞬間に関係性が戻れる、地元の友達みたいな領域にまで関係性が築けていると思います」とシリーズならではのチームワークで撮影に臨めたという。

 ◇“普通のこと”を描ける尊さ

 改めて「監察医 朝顔」の現場に戻ってきて、上野さんは「日常が丁寧に描かれていて、それがとても尊い。今回、牛乳瓶を木箱から取ってくるシーンや、畳にちゃぶ台でご飯を食べたりするシーンがあります。昭和を感じさせる風景で、とてもすてきだと思う」と改めて感じたことを述べると「あとは今回も陸前高田市のいまを映像として伝えられることは、とても意義のあること」と作品の魅力を語った。

 続けて上野さんは「今もあのときの震災の記憶を抱えて生きている人たちがたくさんいる。10年という歳月が流れて、DNA鑑定が始まるなど変化している部分もあります。そんな人々の思いを映像と共に、軽やかに優しく、温かく伝えていけるところが、ドラマなのですがドキュメンタリーの要素もあると感じています」と本作ならではの特徴を述べる。

 実際ロケで陸前高田市に行ったという上野さん。「以前と一番変わったのは、お祭りが開催されたこと。今年3年ぶりに“七夕まつり”が開催されて、活気が戻ってきたことはとても喜ばしいことだと思いました。撮影ですが、浴衣を着て参加できたことがうれしかったですし、一生懸命掛け声を出して太鼓をたたいている姿を見て感動しました」

 ◇「肩の力抜けた」30代 「より見極めて、深めていく時間に」

 約3年にわたって演じた朝顔という役。上野さんは「彼女を演じていると、心に宿った思いをしっかりと吐き出すことが大切なんだなと実感します」と述べると「それは脚本がとても優しいから感じたこと。朝顔の気持ちを丁寧に切り取ってくださっているので、自然とそう思える。このスタッフ、チームじゃなければ、また違うテイストの作品になっていたのかなと思うんです。その意味で、本当に『チーム朝顔』でドラマを作ることができることはとても楽しいです」と思いを吐露していた。

 女優活動も20年以上になるが「朝顔は、演じたあとも、その後どうやって生きているんだろうとまた見たくなり、会いたくなってしまう人物。いわゆる持続可能なキャラクターですかね」と笑うと「リアルに登場人物が成長していく。そんな役を続けて演じさせてもらえるというのは、とても貴重です」と、上野さんにとって朝顔は特別な存在であるという。

 そんな朝顔を演じるうえで大切なのは、“いま”をしっかり生きること。上野さんは「朝顔が懸命に生きているように、私も目の前のことを真剣に取り組むことが大切。それ以外に自分のスキルや魂は磨けない」と熱い思いを吐露する。

 いまあることをひたむきに、前向きに生活しているという上野さん。気がつけば30代も半ばに差し掛かった。「自分の直感や感覚が鋭いとは思わないのですが、30代になっていろいろなものが見えてきたなという実感があります」と変化を述べると「20代はとにかくいろいろな世界を見たいというバイタリティーがすごくあって、どんどん突き進んでいく感じだったのですが、そのエネルギーは維持したいなと思いつつも、肩の力が抜けて、俯瞰(ふかん)で物事を見られるようになった気がします。だから今すごく楽しい。これから40代に向けては、よりしっかりいろいろなことを見極めて、深めていく時間にしたいです」と抱負を語った。(取材・文・撮影:磯部正和)

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