海に眠るダイヤモンド
最終話前編(9話) あの夜
12月22日(日)放送分
耳に難病を抱えたかつての恋人と再会した主人公が、現実と向き合いながら共に乗り越えていく姿を描く連続ドラマ「silent」(フジテレビ系、木曜10時)。毎話印象的なシーンで流れ、作品を切なく彩っているのが「Official髭男dism」の主題歌「Subtitle」だ。11月24日はサッカーW杯のため放送休止だが、ここでは「Subtitle」が彩ったこれまでの名シーンをプレーバックしてその魅力に迫りたい。
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主人公の青羽紬(あおば・つむぎ、川口春奈さん)は、8年前に突然姿を消した昔の恋人・佐倉想(そう、目黒連さん)と偶然再会するも、想が「若年発症型両側性感音難聴」のために、ほとんど聴力を失っていた事実に直面。2人の気持ちとともに、紬の今の恋人・戸川湊斗(鈴鹿央士さん)や、聴覚を失って失意の中にあった想を支えた、ろう者の桃野奈々(夏帆さん)ら周囲の人々のさまざまな思いさえもすくい上げたストーリーが話題を呼び、見逃し配信が6話までの累計で3400万回再生という異例のヒットを記録している。
第1話で「Subtitle」が流れたのは、想を演じる目黒さんの約2分40秒にわたった手話での熱演が話題を呼んだクライマックスのさらに最終盤だ。
偶然、想と再会するも、想の耳が聞こえなくなっていることを知らない紬は懸命に話しかけ、想もまた意を決して手話で返すが、互いの言葉は伝わらない。想は「何言ってるかわからないだろ? 俺たち、もう話せないんだよ」と告げて去ろうとする。なおも引き留めようとする紬に、想は「うるさい。お前、うるさいんだよ」と手話で伝えたところで、「Subtitle」のイントロが流れる。それまで紬の声と環境音だけだっただけに、強烈なインパクトを与える。そのまま、「電話するね」と2人が笑顔で約束し合う幸せだった高校時代のシーン、そして、想の母・律子(篠原涼子さん)が想のベッドの下にあった大量のCDを見つけ、からっぽになったCDラックを見つめる印象的なシーンにつながっていった。
第2話では、手話を学び始めた紬と想が再び会い、8年前に紬に別れを告げた本当の理由を想が明かし、2人の距離が縮まった直後の帰り道のシーンで「Subtitle」が流れた。
想は「今は、青羽のこと泣かせない優しい人がいるの?」と尋ねる。紬は湊斗の名を伏せつつ「いるよ。今度会ってよ」と笑みを見せる。苦笑するだけの想に、紬は「何でよ。会ってよ」と笑いかけるところでイントロが流れ始める。帰り道、別れ際になって紬の携帯に湊斗から着信が入る。しかし、電話先の湊斗が突然声を詰まらせる。紬が振り返ると、そこには紬と想を見つめる湊斗の姿が……。そこで曲も突然途切れ、衝撃の大きさを表したラストとなった。
第3話 「名前呼んで、振り返ってほしかっただけなのに」
第3話では、紬と想が一緒にいるところに遭遇してしまった後の湊斗の苦悩が色濃く描かれた。「Subtitle」もまたそんな湊斗の心情に寄りそって流れた。
紬のアパートで想は湊斗と再会。どこかで想の耳が聞こえると信じたい湊斗は、背後から想に何度も話しかけるが、想は反応しない。そんな想に向かって、湊斗は泣きながら「無視すんなよ」と呼びかける。
その後、高校生だった8年前の湊斗と想の回想シーンが展開。そこには、想を呼ぶ湊斗の姿と、呼びかけに気づかないふりをする想の姿が。湊斗が笑いながら「ちょっと! 無視すんなよ、想」と言うと、想は笑顔で振り向く。そんな幸せだった瞬間を「Subtitle」が彩った。
そのまま場面は現在に転換。アパートを飛び出した湊斗は、追いかけてきた紬に「想のこと悪く思えば楽だったから。友達の病気受け入れるよりずっと楽だったから」と本心を打ち明ける。そして、「名前呼んで振り返ってほしかっただけなのに」と口にして泣きじゃくるのだった。
第4話は、湊斗の大きな決断を「Subtitle」が彩った。
アパートを飛び出した湊斗を連れ戻した紬の計らいで、湊斗と想は和解。さらに、高校時代と同じように仲間たちとフットサルを楽しむことができた。しかし、湊斗は紬に別れを告げる。
その少し前、湊斗は飲み物を買いに行こうと想を連れ出し、「紬、ちゃんと食べて寝てるかだけ、それだけは気にかけてね」と紬の“トリセツ”を伝えていた。さらに湊斗が「紬、想の横にいるときが一番可愛いんだよね」と話し、別れを告げる決意をにおわせる。そして「言ったじゃん。みんな戻れると思うって。戻れたら俺はうれしいって」と涙ぐみながら想に語りかけたところで「Subtitle」が流れた。これまでの流れを大きく転換させたエピソードで、ラストは紬、想、湊斗の気持ちがコートを挟んで交錯した印象深いシーンだった。
第5話では、別れた後の紬と湊斗の新たな一歩を「Subtitle」が後押しした。
突然、湊斗に別れを告げられた紬はしばらく気持ちの整理がつかなかったが、湊斗の決意は変わらないまま。紬は湊斗の家にあった荷物を回収し、別々の道を歩むことを受け入れる。
ヘアピンを部屋に忘れていたことをきっかけに電話をかけてきた湊斗との会話を終え、「おなか減った」と完全に吹っ切れた紬。そして湊斗もまた紬のヘアピンをゴミ箱に捨てて、「おなか減った」と独りごちて気持ちに区切りを付ける……。そうした場面で「Subtitle」が流れた。
湊斗との電話で想の好きな髪形がポニーテールであることを知った紬は、翌日想に会う前にヘアゴムで髪の毛を束ねてみる。しかし鏡の中の自分に「フッ……いやいや」と照れ笑いを浮かべて髪をほどき、想に会いに行くのだった。
失聴した想とともに歩んできた奈々にスポットが当たった第6話。「Subtitle」は奈々の切ない思い出に彩りを添えた。
新たな一歩を踏み出した紬と想。一方で想は、一人で生きようとしていた大学時代にそばに寄りそってくれていた奈々とちゃんと向き合わなければいけないと感じていた。
そんな中、手話教室から出てきた紬を「ちょっとお話ししませんか?」と連れ出した奈々。想からも手話を教わっていることを明かした紬に、奈々は「私が想くんに手話を教えたの。プレゼント使い回された気持ち」と思いをぶつけて、店を飛び出すのだった。
かつて「奈々にだけ伝わればいいから」と手話で伝えてくれた想のことを思い、泣きじゃくりながら歩く奈々。そこに「Subtitle」のイントロがかぶさってくる。
そこに奈々を見つけた想から電話がかかってくる。「どうしたの?」と手話で問いかける想の前で、奈々は想からの着信で震え続けるスマホを聞こえるはずのない耳に当てるのだった……。
第7話では、紬が想に声を発さない理由を尋ねて2人の気持ちがすれ違う一方、奈々と紬、想の心は通い合う。そして紬と想の関係が進展の兆しを見せる場面で「Subtitle」が流れた。
「プレゼント使い回された気持ち」と奈々から伝えられた紬だったが、奈々ともう一度会い、つらかった想を支えてくれた感謝を手話で懸命に伝える。そんな紬の姿に心を打たれた奈々は「上達したいなら、とにかく手話で話すようにしたほうがいい。想くんとたくさん話したほうがいいよ」と伝える。そして奈々は想とも会い、わだかまりが氷解する。
「Subtitle」が流れたのは、楽しく笑い合っている想と奈々のシーンからだった。そして3年前に発売されたスピッツのCDを手に物思いにふける紬。アルバイトが終わった紬は想と会うが、高校時代に想が書いて紬に渡した作文の話になり、紬は「うちにあるよ。読み来る?」と誘う。すぐに「うちに来るっていう意味じゃなくて」と慌てる紬だったが、想は「行こうかな」と応じる。2人の関係が進展を見せる象徴的なシーンだった。
なお、第7話では「Subtitle」が終わった後にも、奈々と手話教室の講師、春尾正輝(風間俊介さん)が「久しぶり」と手話で言葉を交わすシーン、さらに紬の家で紬が「しゃべんなくても好きだから」と話し、想と心を交わしてハグをする姿が描かれており、次回に向けてさらなる展開をうかがわせる。
12月1日の第8話は15分拡大で放送されることが既に発表されており、終盤に向けて新たな展開も期待できる。これまでさまざまシチュエーションを彩ってきた「Subtitle」。果たしてこれからどういった場面で流れるのか、物語の展開と併せて注目したい。
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