松本潤さん主演のNHK大河ドラマ「どうする家康」(総合、日曜午後8時ほか)で、今川義元(野村萬斎さん)の嫡男・今川氏真を演じている溝端淳平さん。溝端さんにとって「どうする家康」は初の大河ドラマで、撮影現場ではある理由から「血が騒いだ」という。氏真については「すごく弱い人間だと思う」とし、「自分の身の丈にあったことができていない」部分が20代の頃の自身と重なり、「共感できた」とも明かす溝端さんがドラマや役について語った。
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氏真は、坊ちゃん育ちのプライド高い御曹司だが、実は偉大な父を持つがゆえの劣等感に苦しむ。今川家を譲り受けるが、桶狭間の戦いで義元が討ち死にしたことで、その運命が大きく揺らぐ。キャッチコピーは「なすことすべて裏目に出る」。
ドラマには第1回「どうする桶狭間」(1月8日放送)から登場。瀬名をめぐる“直接対決”に敗れるなど、父・義元が目をかける家康(元康、松本さん)に対してコンプレックスを感じてはいたものの、当初は今川家臣としての家康を頼りにしていた氏真。しかし、その関係性は第3回「三河平定戦」(1月22日放送)の終盤、家康が織田側に“寝返った”ことで激変する。
家康が今川側の吉良義昭(矢島健一さん)が守る東条城を攻め落とすと、氏真は激怒し、駿府に残った三河衆を次々と処罰。爽やかなイケメンとしてのイメージの強い溝端さんの“闇堕ち”演技も話題となったが、以降も溝端さんは「偉大な父を持つ男」の孤独と悲哀を、まざまざと感じさせる演技を随所に披露してきた。
溝端さんによると氏真は「人に弱みを見せられない」「心が不安定で繊細な人間」で、「自分がストイックにやればやるほど、周りに人がいなくなる。人を信じられなくなる」と、その悲哀さを語る。また「理想は家康のように人に甘えつつ、でもどこかで支える人がいて、自然と人が集まってくる」ことで、そこに「憧れていたと思います」とも話している。
「人徳も才能もなかった」氏真だが、溝端さんは「それって僕も共通するところがある」と明かす。2006年に女性誌「JUNON(ジュノン)」(主婦と生活社)が主催する「第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを獲得し、芸能界デビューを果たし、ほどなくして、俳優として映画やドラマの主演を張るようになった溝端さんだが、「最初はアイドル的な人気をいただけましたが、自分の実力が追いついてない」と感じていたと回顧。
20代で「自分よりも実力のある方がたくさんいらっしゃることを実感してどんどんおいていかれるような感覚」を味わい、「(当時は)自分には才能がない、自分の身の丈にあったことができていないという葛藤がすごくあったので、そこが僕は氏真に共感できる部分ではありました」と語った。
そんな溝端さんだが、今回の「どうする家康」では、初の大河ドラマとは思えないほどの好演で、視聴者を魅了してきた。
改めて、撮影現場の雰囲気を聞くと、「リハーサルの時から、セットから小物まで細やかに用意していただいた状態で、『さあどうぞ、氏真をどう演じてくれるんだ』というような空気感を感じていました」と告白。故・蜷川幸雄さん演出の舞台とも「似ている」といい、「台本があって、セットも100%用意されていて、そこで何をしてもいい、何を使ってもいい、芝居なんてやってはいけないことなんてないんだってことを僕は蜷川さんから教わったので、そこが似ている」と説明する。
蜷川さんの舞台で鍛えられた俳優の一人として「すごく血が騒いだというか、お芝居ってこうだよなって楽しい気分になりました」という溝端さん。「毎回とことん役者が、持っているものや感情を振り絞って、絞って絞って出せるところまで出すってところまでやらせてくれる。そういった環境の中でやらせていただけるのは、ありがたかったです」と感謝した。
一方で、溝端さんは、その時代背景から「大河ドラマってある種、リアルにやるのが難しい。何がリアルなのか、現代の感覚では分かりづらい部分がある」との印象を抱いたという。
それでも「自分の日常生活に置き換えることができないくらい、理解できない」世界観の中で必要とされる「熱量や集中力」は、「蜷川演劇のシェイクスピアをやらせていただいたときと近いものがある」とも話し、「そういう壮大なスケールの大きい演劇作品で鍛えていただいた経験が大きいんだなと思いました。自分が20代の頃、苦しみつつも蜷川さんや吉田鋼太郎さんに食らいついてよかったな、という感覚はあります」と振り返った。
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