海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
大きな盛り上がりを見せたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「らんまん」に代わって、10月2日にスタートした趣里さん主演の朝ドラ「ブギウギ」。ヒロインの鈴子(スズ子、趣里さん)の子供時代が2週にわたって描かれたが、次々と魅力的な子役が登場し、視聴者から熱い視線が注がれた。鈴子役の澤井梨丘さんや、鈴子の弟・六郎に扮(ふん)した又野暁仁さんらの劇中での活躍に、改めて、NHKの“発掘力”を感じたドラマファンも多かったのではないだろうか。
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約700人の中からオーディションで鈴子役に抜てきされた澤井さんは、趣里さんによく似た顔立ちが話題になったが、ドラマでチーフ演出を務める福井充広さんも、第一印象は「(趣里さんに)似てるぞ」だった。
福井さんによると、オーディションで「即決」だったという澤井さん。ドラマ出演は「ブギウギ」が初めてとなったが、第1週から確かな演技力、抜群の歌唱力を発揮。福井さんは「初めての経験ですので、せりふを間違えるとか、臆するところもあるんだろうなと思っていたんですけど、まったくそういうこともなくて。(両親役の)柳葉敏郎さん、水川あさみさんという大先輩を前に、堂々と花田鈴子を演じてくれた」と振り返っている。
一方、六郎少年を演じた又野さんは、「ブギウギ」がなんと5作目の朝ドラ。「スカーレット」(2019年度後期)以降、NHK大阪制作の朝ドラに5作連続で出演という、いわば“常連”だ。ある意味「NHK大阪が見いだし、大切に育ててきた」“秘蔵っ子”とも言えるのではないだろうか。
そんな又野さんに対して、SNSでは「毎回ええ仕事してはるなあ」「大阪制作5作連続出演の大ベテランは風格が違う」との声が上がっていたが、早くも“達者”な演技を見せる又野さんが今後、どんな俳優キャリアを築いていくのか、楽しみでならない。
澤井さんのように朝ドラヒロインの子供時代を演じ、注目を集めた子役として、近年では「舞いあがれ!」(2022年度後期)の浅田芭路さん、「ちむどんどん」(2022年度前期)の稲垣来泉さん、「おちょやん」(2020年度後期)の毎田暖乃さんの名前が挙げられる。
中でも、約500人が参加したオーディションから選ばれ、「おちょやん」のヒロイン・千代(杉咲花さん)の子供時代と、千代のめいの春子を見事に演じ分けた毎田さんの印象は強い。同作の制作統括・櫻井壮一さんは「オーディションで見た瞬間、『この子はレベルが違う』と思った。相手のお芝居を見て演技できる子はほとんどいなくて、最初から相手を受けて芝居するのが突出していた。怒鳴ったり、笑ったり、泣いたり、幅の広い芝居ができる」と当時、絶賛していた。
2019年度前期の朝ドラ「なつぞら」のヒロイン・広瀬すずさんの楽しそうな姿を見て、俳優を志すようになったという毎田さん。キャリアの第一歩を踏み出したのは、同年度後期の朝ドラ「スカーレット」で、このときは大島優子さん扮(ふん)する熊谷照子の長女・雪子を演じた。
NHKによって“発掘”された毎田さんは、2022年1月期のドラマ「妻、小学生になる。」(TBS系)、同年の8~9月に放送されたNHK“夜ドラ”「あなたのブツが、ここに」にもメインキャストで出演。順調にキャリアを重ねている。
「ブギウギ」の澤井さんは、本役(大人キャスト)の趣里さんと「顔立ちが似ている」ことも話題となったが、それ以前にも同じ理由で注目を集めた子役はいた。「ちむどんどん」の土屋希乃さん、「エール」(2020年度前期)の清水香帆さんらが、それに該当する。
NHK・Eテレの子供番組「ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン」のアズキ役などで知られた土屋さんは、「ちむどんどん」でヒロイン一家の長女・良子(川口春奈さん)の少女時代を演じ、視聴者から「ものすごく川口春奈っぽい子役」「ちゃんと川口春奈似の子役でびっくり」「子役がまんま川口春奈でびっくり」との声が上がったことも記憶に新しい。
清水さんは「エール」で、後に主人公の妻となる女性・音(二階堂ふみさん)の少女時代に扮(ふん)した。同作に出演した他の子役同様、3次まであったオーディションによる選出。“二階堂ふみさん似”の容姿は、ドラマのスタート前に行われた報道陣向けの試写会の頃から話題に上っていて、少ない出番ながら、清水さんの存在は朝ドラファンにもインプットされたはずだ。その後、清水さんはNHKの「ドラマ10『大奥』」(2023年)にも起用されている。
また、朝ドラからは外れるが、主演の井上真央さん自ら「超高速朝ドラ」と表現していたNHKのドラマ「少年寅次郎」(2019、2020年)の“寅次郎”こと藤原颯音さんの存在も忘れてはならない。
ドラマは国民的映画シリーズ「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎(寅さん)と、寅次郎の育ての母・車光子の物語。藤原さんは寅次郎の幼少期役を務めた。オーディションによる抜てきで、それ以前に演技経験がほとんどなかったものの、故・渥美清さんを想起させるルックスと、何とも言えない「昭和の悪ガキ」感で視聴者を喜ばせた。
まさにNHKの優れた“発掘力”のなせる技。今後も朝ドラを中心に、さまざまな映像作品で、生き生きとした子役たちの演技が見られるに違いない。
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