ブギウギ:15分間、ほぼステージ! 朝ドラでは異例の描写の理由 「大空の弟」歌唱シーンの裏側も

NHK連続テレビ小説「ブギウギ」第49回の一場面(C)NHK
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NHK連続テレビ小説「ブギウギ」第49回の一場面(C)NHK

 俳優の趣里さんがヒロインを務める2023年度後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ブギウギ」(月~土曜午前8時ほか)。第49回(12月7日放送)で、ヒロイン・スズ子(趣里さん)が、戦死した弟・六郎(黒崎煌代さん)を思い、羽鳥(草なぎ剛さん)が手がけた楽曲「大空の弟」を熱唱する場面があり、胸を打つ熱いパフォーマンスが視聴者の感動を呼んだ。この場面の裏話を、制作統括の福岡利武さんに聞いた。

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 ◇「大空の弟」歌唱シーンは「非常にエモーショナル」

 ヒロイン・スズ子のモデルとなった笠置シヅ子さん(1914~1985年)が、戦地で亡くなった弟、亀井八郎さんへの思いを込めて歌った「大空の弟」は、2019年に楽譜が発見されたことで話題になった。曲名は残されていたものの、具体的な内容を記した資料が確認されたのはこの時が初めてだったという。

 福岡さんは「大空の弟」について、「戦争の歌を作るのを苦手としていた(羽鳥のモデルとなった)服部良一さんが、笠置さんの弟への思いをくんで、『これは歌にしなければいけない』という思いで作られた曲。音源はなく、楽譜と歌詞だけ残っていましたが、ものすごく難解な曲でした」と説明。「笠置さんの弟さんは八郎さん、ドラマは六郎くんなので、歌詞は『ブギウギ』バージョンとして少し変えています」と明かした。

 編曲を担当したのは、服部良一さんの孫で、「ブギウギ」の音楽を手がけている作曲家の服部隆之さん。福岡さんは「隆之さんは祖父の良一さんの楽譜を見ながら、祖父の思いをグッと歌に込めつつ、ちょっとだけ自分の思いも、という形でアレンジしてくださいました。音源として残っていない曲なので、テンポを含めいろいろと考えました」と振り返った。

 「ドラマの中で、どういうリズムでどう歌うかというのは隆之さんとすごく議論しました。今まで劇中に登場した楽曲は、思いっきりお客さんに向かって激しく踊ってパフォーマンスする歌が多かったのですが、今回は六郎との思いを胸に歌っていかなければいけない。この曲を歌う趣里さんも、すごく難しさを感じたのではないでしょうか」と思いをはせる。

 実際に、趣里さんはこの曲を何度も練習したといい、演じながらステージで歌った音をそのまま録音した。

 福岡さんは「うまく歌うというよりも、ステージ上でのスズ子の六郎への気持ちをしっかり感じたいということもあり、そのまま歌っていただきました。そういう意味でも非常にエモーショナルなシーンになったと思います」と自信をのぞかせた。

 ◇長尺のステージシーンは「『ブギウギ』っぽい」

 第49回では、茨田りつ子(菊地凛子さん)が「雨のブルース」を歌った後に、スズ子が「大空の弟」「ラッパと娘」を歌うという長尺のステージシーンが放送された。1話分、15分の放送時間のうち、ほとんどを歌唱シーンに費やすという、朝ドラでは異例の展開について、福岡さんは「普通はやらないと思うんですけど、せっかく『ブギウギ』ですので」と楽しそうに語る。

 「歌への気持ちやバックステージもしっかり描いているので、また違ったふうにこの歌を楽しんでもらえるんじゃないかという思いがあったので、ステージシーンを長く描きました。それも含めて『ブギウギ』っぽいなと感じましたし、やっぱり歌を大事にしたいという思いがあるので、こういう回もとても良いなと思っております」と力を込めた。

 また、今回の「ラッパと娘」について、福岡さんは「『大空の弟』から吹っ切っての『ラッパと娘』だったので、趣里さんの気持ちの振れ幅も大きく、グッと力が入った良いパフォーマンスになったなと思いました」と、趣里さんのパフォーマンスをたたえた。

 戦況が厳しくなる中、六郎の死を乗り越え、スズ子は自らの楽団とともに力強く生き抜いていく。スズ子の歩みをこれからも見守っていきたい。

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