放課後カルテ
第10話(最終話) これからも健康でいてほしい
12月21日(土)放送分
現在WOWOWで放送中の「連続ドラマW 坂の上の赤い屋根」で、主演を務める俳優の桐谷健太さん。自身が演じる主人公の敏腕編集者・橋本涼役を「一見、普通の編集者に見えるところから、どんどん変化していく感覚が面白い」と話した桐谷さんに、役作りや作品の魅力、作品にも関わる人の二面性について聞いた。
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ドラマの原作は“イヤミスの名手”と呼ばれる真梨幸子さんの同名小説(徳間文庫)。物語は、新人作家が18年前の女子高生両親殺害事件をモチーフにした小説企画を、出版社の編集者に持ち込んだことから始まり、やがて登場人物たちが抱える嫉妬、劣等感、孤独、過去など“黒い感情”の正体と事件の真実が明らかになっていく……。
役作りについて質問すると、桐谷さんは役へのアプローチは「毎回違う」と前置きし、「パッとわかるときもあれば、つかみきれなくて衣装を着た瞬間にスコーンと入るときもある。場合によっては動物のイメージが湧くこともあるけど、自分にしかわからない感覚を信じて、委ねてやっていきたい。その感覚を、俳優という仕事を楽しんでいる感じはあるかもしれない」と向き合い方を語る。
桐谷さんが演じる橋本は18年前の惨劇を引き起こした死刑囚の手記にかつて編集者として関わり、今また小説化にも携わるという闇をはらんだ人物だ。「キャラクターとして捉えず、血の通った、生きている一人の人間である“橋本”として生きられたらという思いが強かった」と考え、「自分の中で純度を高め染み込ませていき、橋本像を築き上げた」とクランクイン前に“完成”させていたと明かす。
「橋本の本性や本音の部分が浮き彫りになる過程で急に変わるのではなくて、何気ない中にもちょっとした違和感や不気味さがある人物にしたかった。実際のニュース番組でも見る『あいさつすると明るく答えてくれる人でした』という人もいれば、『前々からちょっと……』の人もいる絶妙なラインを狙う意図があった。そこを考えながらやると役の鮮度がなくなると思ったので、入る前に築き上げて、撮影中は極力考えずにいこうと決めていました」
実際の撮影でも「監督と橋本に関する共通認識が最初にできていたのもあって、あまり考えずに橋本として生きられた」と手応えを感じ、「勝手な意見ですけど、今回の役はキャストみんな、役者冥利に尽きる役だったのでは」と分析する。
「自分にもある心の“闇”の階段を降りていくことはしんどいし、つらくもある。でもそこからしか表現できない何かがあって、みんなそこから顔を出しながら演じている感覚があったのが面白い。闇を悪いものと捉えがちだけど、人によっては、実は安心感や自分の中にもあるという親近感を覚える部分でもあると思う。その感じ方も今作の面白さだし、ある種の“闇”を芝居で共有できた感覚があります」
本作では人間の二面性にもスポットが当てられているが、桐谷さん自身は「昔の話をされて『えっ、それ俺?』みたいなことは結構あって(笑い)。二面性どころか細胞自体がどんどん変わっていって。自分がやったこととは思えないみたいなことさえあるぐらい」と照れ笑いを浮かべる。
「人は今日の二面性と明日の二面性、毎秒の二面性もあるぐらい複雑というか。まあ単純といえば単純なのかもしれないけど。だから自分で意外にこうだなというよりも、どんどん変わっている感じの方が強い。良い意味で、日々成長というか進化をしているというふうには捉えていますけどね(笑い)」
座長としての心構えを聞くと、「座長じゃなくてもそうですけど、関わる人みんなに楽しんでほしい。遠慮なくみんなに充実してほしいし、楽しんでほしい。その中でも同じ方向を向いて、いいものを作りたい思いが重なったときはうれしい」と笑顔で答える。
本作の魅力について、「見る人の視点によって真実はその数以上にあるというか。捉え方や選択の仕方で変わってくる。そういう意味ではドラマもどんな見方もできるし、『これはこうです』と言い切っていないのがポイント。心の“闇”を抱えている人たちの渦がぶつかって大きくなっていって、見ている側にも及んできそうな面白みもあります」とアピール。
「登場人物たちは過去にとらわれて仕方ない部分もあるけど、過去やトラウマに縛られず、ほかの人生も選べたはず。だから見る人も選択できる作品になっていると思います。彼らの渦や選択を心地よく感じる人もいれば、『ちょっと』と思う人もいるだろうし、懐かしく感じる人もいると思う。何を選ぶか自由な作品を楽しんでいただけたらうれしい」
毎週日曜午後10時に、WOWOWプライム、WOWOW4Kで放送中。WOWOWオンデマンドで全5話一挙配信中。(取材・文・撮影:遠藤政樹)
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