名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
ディズニー発のアニメーションには約100年にもおよぶ歴史がある。その影響を大きく受けた“日本のアニメ”は独自の進化を遂げ、今や世界中で人気を博し、大きな注目を集めている。各動画配信サービスが日本のアニメに注力する中、ディズニーの動画配信サービス「ディズニープラス」も2021年に日本のアニメの配信に本格参入した。なぜ、ディズニーは日本のアニメに注力しているのか? ディズニープラスの日本のアニメーション責任者の八幡拓人さんに聞いた。
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2021年10月、ディズニープラスは「スター」というブランドを立ち上げた。それまではディズニー、ピクサー、マーベルなどのコンテンツを中心に配信してきたが、新たなブランドでは、最新映画、オリジナル作品、アニメを含む日本のコンテンツを大きく拡充した。
「2021年、スターというブランドがオープンし、アニメだけではなくて実写を含めた日本コンテンツに対して改めて注力していこうとしました。今や日本のアニメは、一部の限られたファン層に向けたジャンルでは全くなくなっていて、日本のエンターテインメントを牽引(けんいん)しています。私たちのサービスは、子供から大人まで男女問わず楽しめる作品を配信しています。日本のアニメは、Z世代へのエンゲージメントの高さを期待していることもありますが、幅広い層の方に楽しんでいただけるジャンルだと思っています。」
この10年ほどで、国内のみならず世界での日本のアニメの需要は大きく高まっているとも言われている。マニアックなものではなく、より一般的になっている。
「10年前から非常に大きな変化を遂げているのは間違いありません。今、日本のアニメは、黄金時代に突入しています。マーケットの規模としても3兆円を超え、最高を更新し続け、限られたファンに向けたものから、より一般的になっています。10年前と比べて、何が変わったかと言いますと、ビデオグラム、テレビ放送をセットでビジネスを考え、ビデオグラムを買っていただける層に向けて作品を作っていました。ビデオグラムは今ももちろんあるのですが、配信が一般的になり、ターゲットも国内には限らなくなってきました。配信の台頭が、グローバルに広まってきた理由です。世界のユーザーに向けたコミュニケーションツールとして非常に大きな役割を果たしていて、日本のアニメはまだまだ進化を遂げている途中にあると考えています」
米国、日本以外のアジアなどさまざまな国や地域に向けて一斉に配信できるようになったことも大きい。
「先日、配信をスタートした『SAND LAND: THE SERIES』が顕著な例ですが、世界中で人気を博しています。もちろん日本で特に大きな反響をいただいていますが、それと肩を並べる、もしかしたら超えるくらい世界各国から好評のコメントをいただいています。あらゆる言語で『面白かった』というコメントが届くようになり、どの地域が特別好調であると言えないくらいです。数年前は北米のマーケットが伸びていたので、北米で受けるようなストーリーテリングに注力していました。アジアはまた違うジャンルが受けていて、国内、北米、アジア……と作り手の我々も意識していたところもありましたが、今は、どこの地域であろうが同じタイミングで同じ面白さ、感動を味わえるようになっています。それくらい日本のアニメは世界で一般的になっています。日本向けだと思っていたものが、どの地域でも受け入れられるようになっています。それくらい市場が成熟しているのが、今の状況だとは思っています」
日本のアニメはほかにはない独自の進化を遂げてきた歴史がある。ある種、先鋭化した表現だってある。世界に向けて配信するとなると、スタイルを変える必要はあるのだろうか?
「何か大きく転換が図られてきたことはないと思います。根本的なストーリーテリング、アクションの精密さなども変わっていませんが、より受け入れられる表現を採択するようになっているところはあるかもしれません。多くの方に見ていただくために、人を傷つけない表現、誤解を招かないような表現は、当たり前にやるべきです。それはネガティブなことではなく、進化なのかもしれません。ビデオグラムが中心だった頃は、買いたい人だけが買えばいいという風潮もありましたが、より大きな市場に向けて、大人から子供までいつでも見られるサービスで配信しているので、我々の意識が変わってきています」
日本のアニメは独自の進化を遂げてきた歴史があるが、ディズニーの“アニメーション”との共通点、また違いをどのように考えているのだろうか?
「共通点は、本当にシンプルなのですが、作品の根幹はストーリーテリングだと思っています。主人公が目標に向かい、困難に打ち勝ち、立ち向かっていく……というような感動的なストーリーテリングは、普遍的で、突き詰めるべき一番大事なものです。違っている点と言いますか、日本のアニメの特異性は大きく二つあると考えています。一つは、原作となり得る市場の成熟です。昔からマンガや小説、ゲームといったアニメ以外のジャンルが非常に発達していて、創造の源泉となるものが枯渇しない。それがアニメ業界にとっていい刺激になっているのが、年間300本以上を作り続けられるゆえんだと思います。もちろん海外にも素晴らしいものがたくさんありますが、より特異なのが原作市場の成熟です。もう一つは制作現場のユニークさです。日本のアニメ制作会社は、ほぼ同じ制作方法で作っています。協力プレーで一つの作品を作り上げることもあります。だから絶え間なく作り続けられる。海外もそういうところもあるのですが、日本はより特異性があると思います」
「四畳半タイムマシンブルース」「東京リベンジャーズ」(聖夜決戦編、天竺編)」「天国大魔境」など数々の話題作を配信してきた。配信作品のセレクトの基準も気になるところだ。
「繰り返しになりますが、最高のストーリーテリングであることが第一のポイントです。決まったジャンル、作品性は考えていなくて、多様な方に見ていただいているサービスなので、特定のジャンルに絞っているわけではありません」
“独占配信”と聞くと、ユーザーにネガティブに捉えられてしまうこともあるかもしれない。ただ、ディズニープラスとしては、作品をより盛り上げるためにさまざまな施策を考えているという。
「ディズニープラスが日本のアニメを独占配信することに、ある種の驚きをもって迎えられていることは理解しています。我々は、配信プラットフォームではあるんですが、作品を送り出す一員でもあるので、『SAND LAND: THE SERIES』のように映画版との連動や、テレビ放送との連動など、自分たちの配信だけに固執せず、作品の盛り上がりに寄与したいと考えています。その最たる例が、講談社様との戦略的協業の拡大で、配信プラットフォームという立場にとどまらない盛り上げ方に力を入れています。独占配信のメリットをパートナーやファンの皆様により感じていただけるような努力をしているところです。ディズニープラスとしては、日本の優れたクリエイティブ、最高のストーリーテリングを世界にお届けするお手伝いをしようとしています」
今春には「ザ・ファブル」「戦隊大失格」といった話題作を独占配信している。
「講談社様との戦略的協業の拡大で『東京リベンジャーズ』という素晴らしい作品を配信させていただき、そのご縁もあり配信させていただくことになりました。2作共に、世界に向けて楽しんでいただける作品であることが、第一にありました。『戦隊大失格』は戦隊ヒーローが主人公ではなく、そこに立ち向かう戦闘員が主人公です。『ザ・ファブル』は、殺さない殺し屋が主人公で、どちらもとても斬新です。原作も世界中で人気ですし、講談社様と一緒に盛り上げていこうとしています」
「ザ・ファブル」「戦隊大失格」は設定が斬新ではあるが、多くの人に受け入れられている。ニッチなようでニッチではなく、王道から外れても受け入れられているのが面白いところでもある。
「設定は特殊ではありますが、ニッチというよりは、斬新、独自、ユニークと捉えられているところが面白くて、それが日本のアニメの特殊性なのかもしれません。ストーリーテリングが進化し、王道から外れたものでも受け入れられる市場ができています。どんな設定であれ、人が感動するポイントは普遍的でも変わらないとも考えています。最高のストーリーテリングとは何か? 普遍的で、いつの時代の、どこの国、地域、どの世代にとっても等しく感動をお届けできるものだと考えています。組み合わせは無限大ですし、新しいものが生まれ続けてはいますが、変わらないものもあるはずです」
「マクロス」シリーズの全18タイトルが、ディズニープラスで2024年に配信されることも発表された。これまで国内での配信が中心となっていた同シリーズが、一部を除いて初めて世界配信されることになり、驚かされたアニメファンも多かっただろう。「コードギアス」の新作「コードギアス 奪還のロゼ」も世界独占配信されることが決定するなど、話題作がまだまだ控えている。
八幡さんは「どんどん素晴らしい作品をお届けしていきます」とも話しており、今後の展開にも驚かされることになりそうだ。
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