矢野奨吾×内田雄馬:「映画 ギヴン 海へ」インタビュー(2) この二人だからこそ“真冬と立夏”を演じられた

「映画 ギヴン 海へ」に出演する矢野奨吾さん(左)と内田雄馬さん
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「映画 ギヴン 海へ」に出演する矢野奨吾さん(左)と内田雄馬さん

 インタビュー(1)の続き キヅナツキさんの人気BLマンガが原作のアニメ「ギヴン」の劇場版2部作の後編「映画 ギヴン 海へ」が9月20日に公開された。アニメ「ギヴン」シリーズは、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で2019年7~9月に放送されたテレビアニメから始まった。ロックバンド「ギヴン」のメンバーを中心とする青春模様を描いており、「映画 ギヴン 海へ」で完結を迎えた。主人公・佐藤真冬役の矢野奨吾さん、真冬の恋人である上ノ山立夏役の内田雄馬さんに収録の様子や、完結への思いを聞いた。

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 ◇真冬を包み込んでくれる立夏 「海へ」への思い

 --アニメ「ギヴン」の集大成となる「映画 ギヴン 海へ」。思い入れの強いシーンは?

 矢野さん 全部大事なシーンで、もちろん無駄なところは一つもないんですけど、前編の「映画 ギヴン 柊mix」で立夏が、真冬の幼なじみ・鹿島柊と八木玄純のバンドの「syh<シー>」のサポートギターとして参加することになって、真冬としては立夏を取られてしまったような思いがあったので、「海へ」の冒頭で立夏を呼び出して二人きりになるシーンは印象的でした。終電までの短い間なんだけど、立夏に甘える真冬という、あの二人だけの空間が、すごく愛おしく感じました。真冬が立夏にだけは素直に甘えられるというのがとても尊くて。これは僕が年を取ったからかもしれないんですけど(笑)。

 内田さん 演じている自分とは別に、視聴者としての自分も同時に存在しているから、見ていると「よかったな」みたいなのもあったりするよね。

 矢野さん しかも、このシーンの雄馬くんの芝居が僕はすごく好きで。雄馬くんは、本当にセリフを読んでいるのではなくて、「立夏がしゃべっている」と感じさせてくれるお芝居をするんですよね。すごく包み込んでくれるから、僕もああいう真冬が演じられたなと思うので、改めて雄馬くんとの掛け合いができたことが一役者としてすごくうれしかったです。

 内田さん 照れますね(笑)。

 矢野さん 照れさせております。

 内田さん うれしいよ。それを引っ張り出してくれてるのも矢野くんなんですけどね。

 矢野さん いやいや。

 内田さん 僕が印象に残っているのは、「syh」のライブシーンです。

 --立夏は真冬と向き合うために、真冬の元恋人・吉田由紀が遺した「海へ」という曲を完成させ、真冬は「syh」のライブでその曲を聴くことになります。

 内田さん 今回、立夏と真冬はお互いに感じていることがあって、それをぶつけたりするのではなく、お互いがどこか遠慮していたりして、いろいろ考えている中で物語が進んで、その心が溶けるきっかけが音楽なんですよね。二人の道、二人の未来は、二人がコミュニケーションを取らないと決められない、見つけられないことなので、その大きなきっかけが「海へ」だったんだなと思うと、あの二人にはやっぱり音楽が必要だなとすごく思いました。真冬にとって、音楽は怖いものだったかもしれないけど、自分の大切なものを残してくれるものも音楽だし、素敵な温かい未来先を見せてくれるのも音楽で、立夏としては、その可能性を伝えられたような気がして。そういう意味では、あのライブを見る真冬とステージに立つ立夏がつながり合ってるような感じがしたんです。

 --重要な楽曲となる「海へ」の印象は?

 矢野さん 劇中で聴いたら絶対泣くでしょ?という。由紀がどういう人間だったのかというのが、すごく分かる楽曲だなと思います。真っすぐで、すごく優しい曲。由紀はこういう未来を思い描いていたんだろうなとか、真冬のことをこう思っていたんだろうな、と感じました。作中では、由紀が遺した曲を立夏が完成させるんですけど、立夏は自分を消して、由紀だけを存在させるように作っていて。真冬はその楽曲の中に「由紀を見つけた」と言うんです。でも、それと同時に立夏を感じていたのかもなって、あの楽曲を聴いて思いました。

 --内田さんは、「海へ」のレコーディングにコーラスとして参加されています。

 内田さん そもそもコーラスだけを録りにいくことがあまりないので、「どう歌えばいいんだろう」と結構ドキドキして、緊張したのをすごく覚えています。立夏にとって、音楽は自分の気持ちを伝える“言葉”であるわけですから、どうアプローチするかは、彼のアイデンティティーに関わってくる。難しさを感じながら収録に臨みました。改めて、本当にいい曲ですよね。

 ◇「雄馬くんは太陽」「矢野くんに甘えまくっていた」

 --矢野さん、内田さんは、アニメ「ギヴン」シリーズで互いに思い合う真冬と立夏を演じてこられました。改めて、お互いの声優としての印象は?

 内田さん 矢野くんは、初めて現場でご一緒した時からずっと真っすぐさを感じていました。明るいんですけど、とても真剣で、真面目な人なんですよ。それ故に緊張もちゃんと伝わるし、収録にも一つの芯を持って臨もうというのがすごく伝わってきます。だから、一緒に何かをやろうという時に安心感とか、「頼りになる」という感覚があるし、僕はそういうところが好きです。「ギヴン」を録っているのはすごく楽しかったし、「もっと録りたいな」って、最初の頃からずっと思っていました。テレビアニメ、劇場版、OAD、そして映画2部作を経て、より頼りになるというか。僕はもう、おんぶに抱っこというか、甘えまくっていたところがあります(笑)。

 --矢野さんの演技に刺激されたところも?

 内田さん 真冬に思いを伝えるというシーンは、しっかり立夏としてアプローチしないといけないなとすごく実感しました。真冬はすごく硬い芯の部分を持っていて、それを動かすのがとても難しい人で、芯がすごく強い人だと思うので、それを包めるような、手を差し伸べて握ってもらえるような立夏でなくちゃいけないなと思いました。

 --矢野さんから見た内田さんの魅力は?

 矢野さん まず雄馬くんは、優しいんですよ。本当に優しくて、熱いし、気遣いもできるし、人を笑顔にできるマンパワーをすごく持っていて、僕が思うに太陽なんですよ。雄馬くんの太陽のようにみんなを明るくしてくれるところや、締めるところは締める男気あるところ、優しいところも含めて、全部立夏のお芝居に反映されているなと思うんです。立夏の型にはまらない破天荒な面も、繊細で悩みを抱える高校生の面も、雄馬くんのお芝居だからこそ生きる。セリフを言うんじゃなくて、雄馬くんが演じる立夏が“しゃべっている”んですよね。だから、僕は真冬として受け取りやすいし、それに反応するだけでいいという。だから、真冬が立夏に引っ張られたように、僕も雄馬くんに引っ張ってもらいました。演技以外のインタビューや舞台あいさつでも、雄馬くんの言葉には思いが乗っているのが分かるじゃないですか。

 内田さん いやいや(笑)。

 矢野さん 言葉選びの繊細さも含めて、すごく人として素敵だなって思います。まだまだ、魅力めちゃめちゃ言えますから!

 内田さん ありがとうございます(笑)。

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