終幕のロンド ―もう二度と、会えないあなたに―
最終幕 隠蔽を許さない…遺品整理人、最後の戦い
12月22日(月)放送分
吉高由里子さんが主演を務めるNHK大河ドラマ「光る君へ」(総合、日曜午後8時ほか)。ドラマは、最終回「物語の先に」の放送を残すのみとなったが、個性豊かなキャストによる名演、名場面が、この1年間で数多く生まれたことは間違いないだろう。ここでは、
「生々しい権謀術数の男の政の世界」の“敗者”として物語を盛り上げた藤原伊周と、役を演じた三浦翔平さんの足跡(活躍)をたどりたいと思う。
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脚本の大石静さんは、2022年5月の制作発表会見で本作について「平安時代の驚くようなセックス&バイオレンスを描きたい」と語っていた。また昨年12月の初回試写会でも「いろいろ生々しい権謀術数の男の政(まつりごと)の世界もたくさん出てきます」ともアピールしていたが、この「生々しい権謀術数の男の政の世界」において、途中から負け続けたのが、三浦さん扮(ふん)する伊周だったようにも思える。
「才色兼備の自信家」として登場し、父・道隆の引き立てによりスピード出世を果たすなど、わが世の春を謳歌するも、道隆亡きあとは、自身の傲慢さからくる「人望のなさ」も災いし、坂道を転げ落ちるのかのように、その地位を失ってしまった伊周。
弟の隆家が、花山院に矢を放つという愚行により都を離れなければならず、結果として母・貴子と生きて再会できなかったのは、不運と言えば不運だが、このことをきっかけに、ねちっこい性格には拍車がかかり、ライバル・道長への恨みを募らせると、妹の定子の死後は“呪詛三昧”。しかし、効果はなく、逆に自身の命を縮めることに……。
「自業自得」といえばそれまでの伊周の転落人生だが、三浦さんは視聴者が同情しようにもできないほど、ヒールに徹することで、ドラマの大いなるスパイスとなっていった。
特に後半は「呪詛することが唯一の拠り所になってしまった常軌を逸した伊周」を熱演。38回「まぶしき闇」では、木製の人型を歯でかみ砕こうとしたり、道長の前で狂ったように笑いながら「道長をなぎ払うなり」と呪いの言葉を繰り返したりと、“振り切った演技”で視聴者の視線をくぎ付けにしたことは、改めて言うまでもないだろう。
第39回「とだえぬ絆」では、「俺が、何をした……」とツッコミどころ満載の言葉を吐きつつ、この世を去った伊周。まさに“堕ちた貴公子”の混乱と悲哀を全身で体現し、ある時から鼻持ちならないヒールとして、時に振り切った演技で存在感を放った三浦さんの姿は、大河ドラマファンの胸に深く刻まれたはずだ。
「光る君へ」は63作目の大河ドラマ。平安時代中期の貴族社会が舞台で、のちに世界最古の女性による小説といわれる「源氏物語」を書き上げた紫式部(まひろ)が主人公。脚本を、2006年の「功名が辻」以来、2度目の大河ドラマ執筆となる大石静さんが手掛け、きらびやかな平安貴族の世界と、懸命に生きて書いて愛した女性の一生を映し出す。
最終回「物語の先に」が、12月15日に15分拡大で放送。
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