フェイクマミー
第9話 ニセ母計画崩壊!?追い込まれた家族の決断
12月5日(金)放送分
「夏枯れ」という言葉があるように数字(視聴率)の上では全体的に苦戦が続く7月期の連続ドラマだが、その中には出会ったことに感謝したくなるような作品は当然あって、磯村勇斗さん主演の「僕達はまだその星の校則を知らない」もそのうちの一つ。昨年、話題となった「アンメット ある脳外科医の日記」同様、カンテレが制作し、フジテレビ系の月曜午後10時台に放送されている学園ドラマだ。ここでは“ぼくほし”と呼ばれる本作の魅力をひもといてみたい。
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“ぼくほし”は、独特の感性を持つがゆえに何事にも臆病で不器用な主人公・白鳥健治(磯村さん)が、少子化による共学化で揺れる私立高校にスクールロイヤー(学校弁護士)として派遣されることになり、法律や校則では簡単に解決できない若者たちの青春に、必死に向き合っていく学園ヒューマンドラマ。
脚本は、2015年度後期の連続テレビ小説(朝ドラ)「あさが来た」、2021年の大河ドラマ「青天を衝(つ)け」などで知られる大森美香さん。原作はなく、大森さんが書き下ろしたオリジナルとなる。
8月2日に最終回を迎えた綾瀬はるかさん主演の「終活」コメディー「ひとりでしにたい」(NHK)も話題となった“大森美香脚本”だが、マンガ原作で、ブラックなユーモアさえも感じさせた「ひとりでしにたい」と比べて、“ぼくほし”の世界観はとても優しい。
堀田真由さん演じるヒロインの高校教師・幸田珠々が担当するのは現代文で、自身も宮沢賢治に心酔。珠々と主人公・健治とのやりとりの中には度々、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」からの一節が登場するが、ドラマ自体もどこか小説的というか、「見る小説」のような趣がある。「ヨルシカ」が、宮沢賢治の詩集「春と修羅」をモチーフに書き下ろした主題歌「修羅」もまた然りだ。
この不思議な“読後感”を感じている視聴者は少なくなく、SNSでは「毎回小説を読み終わったような温かく優しい気持ちになれる大好きなドラマです」「すごく優しい気持ちになれるドラマなんだよな〜。社会問題も考えさせられるのに小説を読んでいるような不思議な感覚」「これが小説だったら本屋さん大賞で上位になりそうな感じ」といった感想も寄せられている。
そんな“ぼくほし”の中心にいる主人公の健治は、星や植物、豊かな自然が好きで、幼少期から文字や音に「色」や「匂い」を感じる独特な感性を持つ。感覚が周囲と違うことやマイペースな性格で集団行動になじめず、不登校になった過去がある……という人物。今回が民放連ドラ初主演となった磯村さんだが、肩肘張らずに驚くほど繊細に役を構築している。
結果、あふれてくるのは“マイナスイオン”。このドラマを見て、心が温かくなったり、優しい気持ちになれたりするのは、大森さんの筆力プラス、磯村さんの“マイナスイオン”演技に負うところがやはり大きい気がする。堀田さんは、出演発表時のコメントで、磯村さんの印象について「お芝居にストイックに向き合っていらっしゃり、お芝居を愛し愛される方なんだろうなとテレビ越しに拝見していました」と語っていたが、まさに「言い得て妙」だ。
そんな“芝居を愛し愛される”磯村さん扮する主人公の健治が派遣された私立高校「濱ソラリス高校」は、男子校の「濱浦工業高等学校」と女子高の「濱百合女学院」が合併したばかりで、校内では次々と問題が起こる。巻き込まれたり、積極的に関わったりする生徒役キャストには、学園ドラマらしく次世代を担う若手がゴロゴロ。彼らのフレッシュさ、まだ手付かずの青さがドラマのさらなる魅力にもなっているのは間違いない。また磯村さん、堀田さんと並ぶ“もう一人のメインキャスト”で、学園の理事長・尾碕美佐雄役の稲垣吾郎さんの存在がいいスパイスにもなっていて、その辺りの話は次の機会でしたいと思う。
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