あんぱん:蘭子と八木の涙のシーンではなかった? 視聴者を最もクギヅケにしたのは「14分」のあの場面 第127回の注目度推移

連続テレビ小説「あんぱん」のロゴ (C)NHK
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連続テレビ小説「あんぱん」のロゴ (C)NHK

 今田美桜さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第127回(9月23日放送)で、テレビの前の視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのか? テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた程度を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移を調べたところ、最高値は午前8時14分の78.0%だった。八木(妻夫木聡さん)が自身の戦争体験を涙ながらに蘭子(河合優実さん)に語るなど、注目のシーンが多かったが、最高値は別の場面だった。

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 「あんぱん」は、「アンパンマン」を生み出したマンガ家で絵本作家のやなせたかしさん(1919年~2013年)と、暢さん(1918年~1993年)夫婦がモデル。何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどりつくまでを描く、生きる喜びが全身から湧いてくるような「愛と勇気の物語」だ。

 ◇八木と蘭子 2人の場面は70%台を連発!

 第127回は、悪役のキャラクターとして「ばいきんまん」が誕生し、アンパンマンの人気がさらに加速。創作意欲に火が付いた嵩(北村匠海さん)の筆で、「カレーぱんまん」「おむすびマン」「しょくぱんまん」と次々と新しいキャラクターが生まれていく。同時に蘭子と八木の関係も変化し始める。第127回は「アンパンマン」のアニメ化への序章となる、そんな回だ。

 テレビ画面の前にいる人のうち、画面を実際に注視している人の割合を調べた「注目度」は、微妙に上下しながら、ほぼ右肩上がりで上昇していくグラフを描いた。最高値は午前8時14分の78.0%と他の回と比べても非常に高い。半分以上の時間帯が70%台を記録したほど、視聴者はドラマにクギヅケ状態だった。

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 最初に70%台に乗ったのは、午前8時4分(71.2%)、午前8時5分(71.8%)、午前8時6分(73.8%)の3分間。八木の会社で、嵩とのぶ(今田さん)、蘭子、八木が話すシーンだ。蘭子は、嵩にばいきんまんが生まれた理由を尋ね、「アンパンマンは相手が死なないように戦ってますよね」と指摘する。それを聞いた嵩は人間の体内でも、いい菌とばい菌があってバランスが取れていることを挙げ、「絶えず拮抗して戦っているのが健康な世の中だと思うんだ」と答える。他のヒーローものとは全く違う、アンパンマンの特徴がよくわかる場面だった。

 午前8時5分の中盤で、嵩とのぶが先に帰り、普通ならここで注目度に変化が出そうだが、この日はここからさらに伸びた。八木と蘭子の2人が社内の部屋に残されたのだ。関係が進展するのか注目されている2人だけに、視聴者の視線も集まった。

 それまで、嵩やのぶ、蘭子の会話を黙って聞いていた八木が、蘭子に語り始める。「俺は卑怯者だろうか?」。3人が30年前の戦争を自分ごととして考えているのに比べ、八木自身は目をそらしてきた部分はなかったか。そう自分を責める八木は、戦争体験についての蘭子の取材を受けると言い出す。夜の社内だろうか。薄暗い応接室のような部屋で、八木と蘭子が向き合い、取材が始まるあたりまでが午前8時6分台だった。

 八木は、1回目の従軍時の思い出を蘭子に語る。午前8時7分ごろから、延々と続くこの場面は注目度がやや下がり、68~69%台と70%を割り込む。いつもならそれほど低い数字ではないが、この日は70%台が連発で、相対的に低く見えてしまう。

 八木の小隊は敵に包囲され、次々と仲間が死んでいく。夜襲で襲ってきた敵を、八木は銃剣で刺した。その敵の死体のポケットから財布が落ち、妻や子の写真が入っていたと打ち明ける。その後は涙でしゃべれなくなる。この辺から、午前8時10分台に突入。涙を流し続ける八木を、蘭子は隣に座って手を握った後、そっと抱きしめる。蘭子も一緒に泣く姿が印象的だった。この午前8時10分以降が再び70%台に突入し、ほぼエンディングまで注目度は上昇傾向が続く。

 ◇最高値は午前8時14分の78.0% ドキンちゃんのモデルは誰?

 この後、午前8時14分に、この日の最高値78.0%を記録するが、柳井家で嵩とのぶ、メイコ(原菜乃華さん)と健太郎(高橋文哉さん)が世間話をしているシーンだ。メイコが「ドキンちゃんって、誰かに似てない?」と聞くと、のぶは嵩の母、登美子(松嶋菜々子さん)だろうという。のぶが席を外した後、メイコが「モデルはお母さんなんですか?」と改めて聞くと、嵩は「確かに母さんにも少し似ているかもしれないけど、気が強いところや、めげないところはのぶちゃんだよ」と答える。メイコが「やっぱり」と喜ぶが、視聴者も全く同じタイミングで「やっぱり」と突っ込んでいただろう。注目度がピークを迎えたのも納得の場面だった。

 ドラマは、「やっぱり」の直後、柳井家をテレビ局のプロデューサー、武山恵三(前原滉さん)が訪ねてくる場面で終わる。扉が開くと、いきなり「はじめまして、アンパンマンと申します」とあいさつする、ちょっと変な人。このおかしな登場も、注目度の押し上げに貢献しただろう。

 活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)

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