私がビーバーになる時:スタジオジブリの「平成狸合戦ぽんぽこ」がふと頭に浮かんだ ダニエル・チョン監督らに聞く製作秘話

ディズニー&ピクサー最新作「私がビーバーになる時」の場面カット(C)2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
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ディズニー&ピクサー最新作「私がビーバーになる時」の場面カット(C)2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 ディズニー&ピクサーの最新アニメーション映画「私がビーバーになる時」(原題:Hoppers、ダニエル・チョン監督)が公開中だ。主人公の動物好きの大学生メイベルが思い出の森が高速道路計画で消えてしまうことを知り、大切な場所を守るべく、極秘テクノロジーでビーバーの見た目となり、動物たちと森を守る作戦を仕掛ける物語。ダニエル監督とプロデューサーのニコル・グリンドルさんに今作の発想の原点や、スタジオジブリの「平成狸合戦ぽんぽこ」(1994年、高畑勲監督)からインスピレーションを受けた部分などについて聞いた。

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 ◇「最初はペンギンの映画を作ろうと思っていた」 なぜビーバーに?

 極秘テクノロジーを使ってビーバーの姿になるという今作の着想について、「最初はペンギンの映画を作ろうと思っていました」とダニエル監督は明かす。

 「その企画をスタジオやピート・ドクター(ピクサー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサー)に提案したんですが、彼は『世界はもうペンギンを必要としていないと思う』と言ったんです。たぶん彼は正しい。確かに世の中にはペンギンの映画がたくさんあります」

 「そこでビーバーに方向転換しました」という。その理由は「いろいろと考えていくうちに、ビーバーは他の動物たちが暮らせる生態系を作り出す、とても興味深い生き物だと気づいたんです」と話す。

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 「ビーバーがいるところに生態系が生まれる。彼らは、自然が自らを回復させ、再生させる力を持つ素晴らしいメタファーになりました。テクノロジーの部分は、ロボット動物を自然界に送り込んで、動物たちを観察・撮影するドキュメンタリーから着想を得ました。もしその技術がさらに進化して、動物の世界に完全に溶け込み、気づかれないほどになったらどうなるだろう?と想像したんです。その二つの要素が、このアイデアの出発点でした」

 ◇監督が「人生の中でも強い思い入れのある」ジブリ作品は?

 ダニエル監督は、今作を構想しているときに、ふと「平成狸合戦ぽんぽこ」のことが頭に浮かび、「これは高畑監督が『ぽんぽこ』でやろうとしていたことと、近いかもしれない」と気づいたという。

 「人間と動物がどのように交流し、人間が動物にどのような影響を与えてきたかを描いたこの映画には私たちにインスピレーションを与えたものがたくさんありました。大きな要素は、人間側からの二つの視点が見られるということです。マンガっぽいバージョンの動物が見れるだけでなく、より動物的なバージョンの動物も見ることができる。『私がビーバーになる時』を見れば、そこから反映されたものをたくさん見られるでしょう」

 ちなみにダニエル監督が好きなスタジオジブリ作品は、「大好きな映画の一つは『となりのトトロ』です。日本でも大人気なことはもちろん知っていますよ(笑)。あの作品には、自然への美しさと敬意があります。さらに、子ども時代を見つめる繊細な観察眼とチャーミングさがあり、それがとても好きなんです。そして、あの映画には他では代えがたい、再現できない“魔法”があります。人生の中でも特に強い思い入れのある作品です」と語る。

 ニコルさんは「私もジブリは大好きですが、特に私の娘が『魔女の宅急便』を大好きなので、よく一緒に見ていました。そして、メイベルのことを考えながら、キキとジジのことを思い出しました。無意識のうちにどこか共鳴していたかもしれません。自分の信じるもののために一生懸命働いてもがく少女と、そばにいてくれる動物だからです」と明かした。

 ◇イエローストーン国立公園で起きたある出来事が契機に

 今作に登場するキャラウターのビーバーや森の仲間達は可愛いだけではなく、弱肉強食なども達観して受け入れている。生態系をリアルに描いた理由についてダニエル監督は「動物をいろいろと調べているうちに、米国のイエローストーン国立公園で起きたある出来事を知りました」と切り出した。

 「そこでは生態系が崩壊していたんです。そのためオオカミを連れ戻した。オオカミがシカの数を抑制するようになると、草が生い茂るようになり、生態系が回復し始めたんです。ビーバーもそこに大きく貢献していました。ビーバーが戻ってくると、大きな池や生態系を作り出し、さまざまな動物たちが戻ってこられるようになり、豊かな生物の多様性が戻ってきた。『ビーバーってすごい!』と思うようになりました。彼ら(ビーバー)は『生態系のエンジニア』と呼ばれているんです。ビーバーのことを知るにつれて、そしてもちろん、ビーバーは丸々していてとても可愛くて、そういうところもあって『この映画の主役はビーバーだ!』となったんです」

 ニコルさんも「製作が始まった頃、イエローストーン国立公園に行きました。同行してくれたガイドが自然の中にいることをどう感じられるか理解する上で、とても助けてくれました。彼は静寂を強調し、私たちは一緒に座ったり、一緒に歩いたりしましたが、話したりしませんでした。私たちは自然と調和しようと努めました。彼はときどき、『人間の音が聞こえますか?』と尋ねました。遠くで車の音が聞こえるだけでした。今、動物たちが人間の音を全く聞こえない場所にいるのは、とても稀(まれ)なことなんです。私たちにとって、人間が環境や動物たちに何をしているのかを認識することは本当に大きな発見でした。私たちにとって本当に重要な旅となりました」と語る。

 最後に日本の観客に向けて、見どころを尋ねると、ダニエル監督は「メッセージを強調しすぎるつもりはありません。何よりも、人々がつながり、劇場で見て、本当に楽しく笑ってくれるような映画を作りたかったんです。今作はつながりや共存についての映画です。もしこの映画が誰かを外出させるきっかけになれば、それは素晴らしいことだと思います。そして、動物をもっと大切にしたり、自然についてもっと配慮するきっかけになれば、それは素晴らしいことです。他者とのつながりをもっと大切にし、もっと優しく、そしてもっと忍耐強くなることの大切さを理解させてくれる、この映画がそうしたきっかけになれば、とても意義深いと思います」といい、ニコルさんは「みんながビーバーのことを大好きになってほしいです」とメッセージを送った。

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