梶裕貴:「MAO」インタビュー 夢だった高橋留美子作品の主人公 900年生きる摩緒 「今の自分だから演じられる」

アニメ「MAO」で主人公・摩緒を演じる梶裕貴さん
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アニメ「MAO」で主人公・摩緒を演じる梶裕貴さん

 マンガ「うる星やつら」「らんま1/2」「犬夜叉」などで知られる高橋留美子さんの最新作が原作のテレビアニメ「MAO」が、4月4日から毎週土曜午後11時45分に放送される。同作で、900年前から生きている陰陽師であり、主人公の摩緒を演じるのが人気声優の梶裕貴さんだ。幼い頃から高橋さん作品のファンだったという梶さんは、今回の出演で「声優としてのひとつの夢がかなったと同時に責任感、重みを感じました」と語る。摩緒役、作品に懸ける思いを聞いた。

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 ◇高橋留美子作品の衝撃

 高橋さん作品の中でも「犬夜叉」世代という梶さんは「小学生の時に連載が始まって、中学生の時にアニメ放送がスタートして。小中学生の頃に触れた作品は、人格に関わるくらい大きな影響を与えるものだと思うので、『犬夜叉』の記憶はすごく強いですね」と語る。

 「また、初めて触れた留美子先生作品という意味では、『らんま1/2』のイメージがすごく強いです。だからこそ、物心が付いて改めて作品を見返した時に、絵はまごうことなき留美子先生なんですけど、作風が違いすぎるので、『同じ先生が描いた作品なんだ!?』と衝撃を受けたことを覚えています(笑)。留美子先生のギャグ表現も大好きですし、それとは真逆の人間の業や心の闇を描いたような作品……『人魚シリーズ』なんかもすごく好きですね。その遺伝子は『MAO』にも確実に組み込まれているような気がします」

 「MAO」は、「週刊少年サンデー」(小学館)で2019年5月に連載をスタートした。大正時代を舞台に、呪いにより900年生き続ける謎の陰陽師、摩緒と、令和の時代から迷い込んだ少女、黄葉菜花が出会い、連鎖する呪いに立ち向かっていくダークファンタジー×タイムスリップミステリーだ。

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 テレビアニメ化が決定する以前から、梶さんと繋がりのある作品でもあった。

 「留美子先生作品が以前から大好きだったので、新連載としてスタートした時から胸が高鳴っていましたね。原作コミックス第2巻が発売されるタイミングでインタビュー取材のお話をいただき、『るーみっくわーるど』への想いをたくさん語らせていただきました。その際、留美子先生の直筆で『MAO』のイラスト入りサイン色紙を頂戴したのですが、そこには“『進撃の巨人』観てます”というメッセージまで添えてくださっていて。本当に夢のようでした」

 その後、2021年に連載100話を突破したタイミングで制作された原作のダイジェストムービーで、梶さんは摩緒を演じることになった。それは高橋さんからの指名だったという。

 「先生が僕を摩緒役にとすごく望んでくださっていたことを知って、とてもうれしかったです。とはいえダイジェストムービー出演当時は、まだ『MAO』がアニメ化されることは決まっていませんでしたし、アニメ化の際にキャストが一新されることも少なくありませんからね。なので、過度な期待を持ちすぎないようにしつつ(笑)、とにもかくにも、PVでの芝居に精魂を込めることに徹しました。それからしばらく経ったあと、正式に『MAO』のアニメ化の報せを受けたのですが、そこで引き続き摩緒役をお任せいただけるとお伺いし、改めて夢がかなったような心持ちでした。本当にうれしかったですね。『らんま1/2』『犬夜叉』『境界のRINNE』のように、『MAO』というタイトルに主人公の名前がある作品の主演という大役を任せていただけるというのは、まさに学生時代からの夢がかなったなと。それと同時に、留美子先生作品のアニメに携わらせていただける責任感、重みも感じました」

 ◇摩緒のピュアな部分を大切に “900年を埋める”アプローチ

 梶さんは「MAO」について、「ヒロインが現代と過去を行き来しつつ、主人公の宿命を一緒に背負っていく、という意味においては、『犬夜叉』と近い部分があるかもしれません」と「犬夜叉」との共通点を語りつつ、「ただ『MAO』では、令和から大正、さらには平安までさかのぼる。冒険活劇としてだけではなく、そこにまつわる謎、ミステリー要素も多分にあります」と魅力を語る。

 「令和を生きる菜花と大正を生きる摩緒に価値観の違いはありますが、そのズレが面白いんですよ。それから、二人の絆が強まるに連れて、その溝が埋まっていく様子もたまりません。そうした幅広い意味での“愛”の描写も『犬夜叉』と共通する部分なのかなと感じています。『MAO』を読んで、改めて留美子先生の表現の幅広さを感じましたし、これまでの作品全てがあったからこそ誕生した作品が『MAO』なんだろうなとも感じました。今だからこそ描けるものがちりばめられているなと」

 自身が演じる主人公・摩緒については「すごくピュアで優しい人」と感じているという。

 「もともと平安時代に生きていた、ピュアで優しい陰陽師。猫鬼(びょうき)の呪いにかけられて、900年間生き続け、今は大正の世で暮らしています。猫鬼との因縁に決着をつける、という最大の目的がありますが、細かい部分の記憶がなく、これまで一人で生きてきました。不老不死の存在なので、さまざまな人との出会いや別れを繰り返し、時代の変遷を見届けてきた人、とも言えるでしょう。900年。常人であれば、狂ってしまうほどの孤独に苛(さいな)まれてきたと思います。そういった感情を抱えつつ、乗り越えてきた人間なので、当然、とても思慮深い。乙弥をはじめ、近しい関係の存在を大切にする反面、そう簡単に他人に心を許さないでしょうし、信じないでしょう。そして、全ての物事に対して一喜一憂しない。身近な話題に置き換えると、子供から大人に成長する過程での感動量の変化、みたいな感覚と近い気がするんですよ。子供って、全ての出来事が新鮮に感じられるから、感情豊かで、そのぶんテンションが高いと思うんです。けれど歳を重ね、さまざまな事象を経験していくと、そのぶん新鮮味が薄れ、ひとつの話題に対して、そこまで心が動かなくなっていくのだろうなと。つまりは摩緒が、僕らの数百倍以上の経験値を抱えているのだとすれば、本来の性格や性質とは違ったところで、自ずと淡々としたアウトプットになってくるものなのでは、と考えたのです。そういった理由もあって、物語序盤は特に、ロートーン・ローテンション、口数少なく淡々と、という印象が強かったですね。ただ、ベースにいるのは平安時代のピュアで優しい摩緒。菜花や乙弥、百火や華紋など、会話する相手によって声色や温度感を、ちゃんと変化させるのが大事だと思って演じていました」

 摩緒は口数が多いキャラクターではない。しかも淡々としている。梶さんは繊細なチューニングにより摩緒の変化を表現しようとした。摩緒役は、キャリアを重ねてきた「今の自分だからやれる」という思いもある。

 「留美子先生の作品は長期シリーズも多いですし、当然、新作がぽんぽん生まれ、全てがアニメ化されるわけではないと思っていたので、声優として携われるチャンスだって、そうそう訪れるものではないだろうとも感じていて。『犬夜叉』のあとには『境界のRINNE』がありましたが、その時にはオーディションも受けられませんでしたしね。ほかのお仕事もふくめて、そう簡単にお話をいただけるものではないんですよ。加えて、自分のキャリアや年齢がその役に合うかどうかというハードルもある。声優業をしていて感じるのは、5年単位、もしかしたら1年単位でも、(客観的な意味で)自分に合うキャラクターって変化していくものなんです。新人の台頭もあるし、それに応じて全体バランスも変化するわけで。そう考えるとタイミングふくめて、やはりご縁でしかないなと。もし僕が『MAO』を語るインタビューのご依頼をいただけていなかったら、その後、ダイジェストムービーで摩緒を演じる機会もなかったかもしれないですし、もしもそれより前にアニメ化が決まっていたなら、その頃の自分の年齢とキャリアでは候補にも入らない可能性もあったと思うので。先ほどもお話したように、摩緒は、平安時代に生きていた頃のピュアでイノセントな部分を持ちつつも、900年間、さまざまな経験をしてきた存在です。であれば演じる側も、ある程度、人間としての経験値がなければ説得力も生まれないのでは、と思うんですよ。きっと10年前であれば、自分には演じきれなかった役だろうなと思いますし、逆に10年後だと、(ビジュアルとしての)若者の雰囲気が薄れてしまっているのだろうなと思うんですよね。今このタイミングでアニメ化され、そして、今の自分だからこそ表現できる役なのではないかと。そういう意味で、やるべくしてやらせていただけた、と――少なくとも自分では、そう思って摩緒役を担当させていただきました」

 ◇「よくぞこの2人を見いだした」 注目の新人声優が活躍!

 アニメ「MAO」は、「犬夜叉」の世界観を受け継ぐアニメ「半妖の夜叉姫」を手がけた佐藤照雄さんが監督を務め、サンライズが制作する。収録は、だいぶ前に行われたといい、「最近になってようやく完成したフィルムを拝見したのですが、本当に感動的でした。アフレコ時から作品に対するリスペクト、愛情を感じる現場でしたが、色がついて音が入って動いている摩緒たちを見ると、改めて感慨深い気持ちになりましたね。シンプルに、ものすごく質が高いアニメーションだなと感じております。高橋留美子先生の描かれる世界観、マンガのニュアンスを細部までくみ取って、見事に形にしていただいているので、原作ファンの方にも絶対にご満足、ご納得いただける仕上がりになっているかと思います。またアニメ化を機に、初めて『MAO』に触れるという方にとっても、毎週続きが気になること間違いなしの展開ですので、まずは第1話の放送を、期待してお待ちいただければと思います」と手応えを語る。

 中でも「アクションシーンのディテール、躍動感が素晴らしい」という。

 「ものすごく丁寧に作ってくださっていて、大きな原作リスペクトを感じました。個人的には、摩緒の破軍星の太刀を使った剣げきが特に素晴らしく感じられて。抜刀から剣さばき、納刀に至るまで、マンガでは全て表現しきれないであろう部分を、動画として見事に再現してくださっているなと感じました。感動しましたね。彼の強さ、格好よさ、スマートさが忠実に描き出されていて、アニメーションとしてお届けすることの意義と意味を強く感じる映像になっているのではと。それから忘れちゃいけないのが兼松衆さんの劇伴です。令和、大正、平安という3つの時代感、それぞれの個性が輝き、うまく混ざり合う絶妙なバランスをキープしてくださっていて。とても素敵でした」

 摩緒と共に呪いに立ち向かう菜花を演じる川井田夏海さん、摩緒の式神、乙弥を演じる寺澤百花さんについても「お二人とも“よくぞ見いだしたな”と感動するくらいにぴったりで。お芝居も、本当に素敵でした。キャストの皆さん、どなたも作品愛が強くて、『このシーン、アニメだとどういう表現になるのかな?』と常にウキウキ話していた現場でした。あ、忘れちゃいけないのが猫鬼の松山(鷹志)さん。とても優しく穏やかで、僕も大好きなお方なのですが……そんな松山さんのことがちょっと嫌いになるぐらい、猫鬼でした(笑)」

 2019年の連載開始から約7年、満を持して世に送り出されるアニメ「MAO」。並々ならぬ思いで収録に挑んだ梶さんら声優陣の熱演に期待が高まる。(しろいぬ/MANTANWEB)

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