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11月21日(木)放送分
今年もテニスシーズンが到来した。23日からの全仏オープンに始まり、6月21日にはウィンブルドンが開幕する。スポーツジャーナリストのフローラン・ダバディさんが、グランドスラム4大会すべてを放送するWOWOWで、元プロテニスプレーヤーの杉山愛さんとともに現地から熱戦を伝えるナビゲーターを務める。自らもテニスをプレーし、ファンや視聴者と近い目線で大会を伝えたいと語るダバディさんに、全仏の見どころを聞いた。(松村果奈/毎日新聞デジタル)
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幼少期からテニスに親しんできたというダバディさんは「テニスは人生を通してできるスポーツ。私の亡くなった祖母も80歳ごろまで、ずっとテニスを楽しんでいました。毎日試合をして、私と一緒にダブルスしようとか言ってね。今の輝かしいテニス界を見ていただければ、テニスをしない人でもプレーしたくなるはずです。最近は映像の技術がぐんと上がったので、テレビでいろんなコツや技術を見ることができます。全仏は雰囲気もよく、初めてテニスを見るには最適だと思います」と薦める。
全仏の特徴については「レッドクレー(赤土)の全仏のサーフェスは、球足が遅いので勝者がなかなか決まらないことが特徴です。選手は必然的に頭と体を使って、戦術を考えなければなりません。昔のウィンブルドンのようにビッグサーブでポイントを取るだけでなく、戦術が重視されます」と分析。「私のようにテニスを見るだけでなく、プレーするのも好きな人は、ラリーの中で選手の技術を見たい、参考にしたいと思ったら、ゆっくりと観察できる機会が何度もあるんです。彼の足はこういうふうに動くんだ、手はこうだとか、ウィンブルドンだとつかむのが難しいコツも全仏ではヒントがもらえます。テニスファンとして学べる、それも魅力の一つです」とプレーヤーとしての楽しみを語った。
昨年の全仏は、男子が3年連続準優勝だったロジャー・フェデラー選手が初優勝、史上6人目となる生涯グランドスラムを達成した。ダバディさんは今年の注目選手として、過去全仏で4連覇を成し遂げたラファエル・ナダル選手を挙げる。「先日のローマ大会で、圧倒的な内容で優勝したナダルは、相手のフェルナンド・ベルダスコに1ゲームしか与えませんでした。現代テニスはほとんど選手同士の差がないと言われている中、6−0、6−1で勝つというのは、ありえないほどのパワーだと思うんです。そう考えると、今のナダルのパワーを誰も止められないと思いますし、フェデラーの持つグランドスラムに彼も少しずつ届く気がします。現在フェデラーは史上最高の選手といわれていますが、ナダルもそう呼ばれる日は遠くないと思いますし、フェデラー自身もそれを感じ取っていると思います。ぜひ、ナダルとフェデラーを全仏の決勝で見たい」と期待する。女子では「エレーナ・デメンティエワが去年のウィンブルドンの準決勝で、実力ナンバーワンのセリーナ・ウィリアムズとものすごい試合をしました。他の選手の試合でここまでヒートアップした試合は見たことがありません。デメンティエワは、見せている以上の力を持っていると思います」と話す。
日本選手の注目株といえば、全仏本戦から出場することが発表された錦織圭選手だ。昨年の右ひじの故障から復活した錦織選手について、「2年前の全米で、(元プロテニス選手の)ジョン・マッケンローらが、今の若手でトップテンに入るような選手を挙げた時、デルポトロらのほかに錦織の名も入っていました。錦織はマッケンローが認めるような天才的なプレーができるんです。日本人のスポーツファンはいつも身体能力がどうのこうのと、どんなスポーツでもよく体の話をしたがるものです。でも、例えばサッカーのリオネル・メッシは小さいですし、どんな体でもメリットとデメリットは必ずついてくる。私はそれは錦織のデメリットだとは思いません。彼は天才ですから、ジャンピングフォアハンドのストロークなど、ここで打てば自分が一番楽だという彼の独特の感覚、そういう発想も含めてトップの選手だと思うんです。テニスファンでない人も引きつけるような魅力を持っています」と絶賛した。
パリ生まれのダバディさんは「大会が行われる5、6月のパリは一番いい季節なんです」といい、「人々のファッションも、楽なシャツ1枚だったり、女性はミニスカートだったり、花も咲いて、空もきれいで……。フランス人は気分屋ですから、当然そういう時期には機嫌がいいんです。バカンスも近づいて、相乗効果でみんなの気分がよくて、それが不思議にローランギャロス(全仏の会場)にも伝わるんです。アーティスティックな、エキサイティングなプレーで気分を高ぶらせてくれるような選手が出てきたら、それはそれは盛り上がります」と、会場の華やいだ雰囲気を楽しそうに語る。「アジアのアスリートが持っている俊敏性だったり、メンタルの特徴だったりフランスのファンも新しい大陸から来るチャンピオンを望んでいると思います。私は、森田あゆみの練習での振りの速さを見て、そのスピードやショットに圧倒されました。これからパワーやスピード、バリエーション、頭脳を使ってのテニス、それをすべて自分のものにできれば、今ぶつかっている壁を乗り越えられるのではないかと思います。彼女のシャイで自然な笑顔は、フランスでも人気が出ると思います」と期待を寄せた。
ダバディさんは、98年にサッカー日本代表のフィリップ・トルシエ監督(当時)の片腕となり、世界の舞台を経験。流暢(りゅうちょう)な日本語で選手をもり立て、通訳を超えた熱意あふれる姿で一躍注目を集めた。その後もスポーツ界を中心に、日本で活躍の場を広げている。「卒業して、最初の仕事が日本での編集者の仕事でした。その後のスポーツジャーナリストとしての仕事でもそうですが、私の知る限りの人はみんな正直だし、信頼でき、関係を裏切られることはないですね。私は日本で仕事をするのが好きです。また、日本には男女を問わず、たくさんのスポーツファンがいます。どちらかというと、フランスではスポーツは男性寄りの世界なんです。けれど日本は男女、階級を問わずスポーツの話ができますし、アート界の人たちもスポーツを軽蔑(けいべつ)したりはしない。みんなが素直に、それぞれの世界の魅力を語り合えるというのが、すごく好きです。子供のときから好きだったスポーツの世界で仕事ができることは本当に幸せだと思っています」と笑顔で語った。WOWOW「全仏オープンテニス」は23日~6月6日まで全15日連日生中継する。
<プロフィル>
74年生まれ。フランス・パリ出身。大学卒業後、98年に映画雑誌「プレミア日本版」の編集者として来日。同年から、サッカー日本代表のフィリップ・トルシエ監督の通訳、パーソナル・アシスタントを務める。02年からは、スポーツ分野を中心に、テレビやラジオ番組のナビゲーターなど、ジャーナリストとして活躍。
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