阿部寛:無料の音楽スタジオで若者支援 沖縄の感動ストーリー映画化 「天国からのエール」に主演

映画「天国からのエール」を沖縄で撮影中の(左から)桜庭ななみさん、阿部寛さん、ミムラさん
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映画「天国からのエール」を沖縄で撮影中の(左から)桜庭ななみさん、阿部寛さん、ミムラさん

 音楽を志す高校生たちを応援したい一心で、弁当屋の隣に無料の音楽スタジオを建てた沖縄の男性の実話を映画化した「天国からのエール」の製作が20日、発表され、主演の阿部寛さん(46)のほか、ミムラさん(26)や桜庭ななみさん(18)が出演することが明らかになった。

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 沖縄県本部町には、小さな弁当屋の隣に建てられた手作りのスタジオ「あじさい音楽村」がある。弁当屋「あじさい弁当」を営む仲宗根陽(なかそね・ひかる)さんが、夢を持つ高校生たちを応援しようと借金をして作ったもので、ここから多くの高校生バンドがプロとして巣立ってきた。しかし、仲宗根さんは志半ばで病に倒れ、腎臓がんと闘い、余命を知りながらも懸命に活動を続け、09年11月に42歳の生涯を閉じた。生前の仲宗根さんから、生きることや夢を追いかけることの大切さを教えられた沖縄の若者たちの姿は、かかわった多くの人々の心を打ち、NHKでドキュメンタリー番組が放送され、「僕らの歌は弁当屋で生まれた・YELL」という本にまとめられ、映画化が決まった。

 仲宗根さんをモデルにした主人公・大城陽を演じる阿部さんは、不治の病と闘いながら若者たちを叱咤(しった)激励する、情熱と不器用な優しさをにじませる難役に挑んだ。陽の妻・美智子を演じるのは、11年のNHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」に出演するミムラさん。太陽のような明るさで夫を支える献身的な妻を演じる。また、陽に背中を押され、「あじさい音楽村」でプロを目指す高校生バンドの紅一点で、ボーカルとギターを担当するアヤを桜庭さんが演じる。

 高校生たちに「このスタジオと機材、自由に使っていい。お金はいらない。ただ条件がある。あいさつをすること。赤点は絶対取らないこと。人の痛みが分かる人間になること」という条件を出し、彼らから“にぃにぃ”と呼ばれ慕われるようになる陽を演じた阿部さんは「仲宗根さんは特別な存在だったのか、いや、ひょっとしたら自分も彼のような気持ちになれたかもしれない……。常に自問自答しながらこの役を演じています」と役作りに苦労しているよう。

 阿部さんは、仲宗根さんに近しかった人から、その人柄やその生きざまを聞いたり、ドキュメンタリーを何度も繰り返し見て、自分の中でイメージをふくらませるなどしたそうだが、「実際、(撮影のために)彼が生活していたこの町に来てみて、初めてつかめた部分が多いです。何よりもすごいと思ったのは、彼が亡くなって1年たった今も『あじさい』の若者たちの中に常に他人を思いやる心や礼儀を大切にする心が根付いて生きていること。この精神が映画を見た一人一人の中にも伝わっていけばいいと思います」と意気込みを語っている。

 阿部さんは仲宗根さんが10数年、弁当を作ってきた手さばきを表現するため、撮影の2週間前から料理のプロから指導を受けたり、大きなフライパンを自宅に持ち帰り、ゴーヤチャンプルを左手1本でひっくり返す練習を繰り返したという。ミムラさんは「実際の場所をお借りして撮影できることに深く感謝しています。この土地の持つ空気感に大いに助けてもらいつつ、1人でも多くの人の心に『あじさい』の明るく力強いパワーが届くよう、私も微力ながら尽力したいと思います」とコメント。これまでギターを弾いたことが全くなかったという桜庭さんは、撮影前や空き時間に練習を重ね、少しずつ音が出せるようになったといい、「指先の皮がむけることをうれしく感じました」とアヤ役とともに成長しているようだ。17日には18歳の誕生日を迎え、「現場で祝っていただいたときに、お誕生日の歌を阿部さんを含め皆さんで歌ってくださって、本当にうれしかったです」と話している。

 監督は、「ゼロの焦点」「眉山」など犬童一心監督作品を中心に助監督として経験を積んだ熊澤誓人監督。本作で期待の長編監督デビューを飾ります。脚本は、「ラブジェネレーション」などのヒットドラマを生み、阿部さんの主演ドラマも数多く手がける尾崎将也さんと新人のうえのきみこさん。映画は本部町でオールロケし、11月上旬にクランクアップする予定。11年に完成し、全国で公開する。製作・配給・宣伝はアスミック・エース。(毎日新聞デジタル)

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