注目映画紹介:「Ricky リッキー」 フランソワ・オゾン監督作 赤ちゃんの体に表れた異変とは?

「Ricky リッキー」の一場面
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「Ricky リッキー」の一場面

 「8人の女たち」(02年)や「まぼろし」(01年)などで知られ、11年1月にはカトリーヌ・ドヌーブさん主演の映画「しあわせの雨傘」の日本公開を控えるフランソワ・オゾン監督の「Ricky リッキー」が11月27日から全国で順次公開された。工場で働きながら7歳の娘を育てるシングルマザーのカティ(アレクサンドラ・ラミーさん)は、スペインからやって来た新入りの工員パコ(セルジ・ロペスさん)と恋に落ちる。彼らは一緒に暮らし始め、やがて2人の間に子供が生まれるが、そのリッキーと名づけられた赤ちゃんにある異変が表れる。それをきっかけに、バラバラだった家族が本物の家族になるまでを描くヒューマン作品だ。

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 リッキーに起きる変異がどういうものであるかについては、これから映画を見る人のために「とてもとっぴなこと」というだけにとどめておくが、ともあれ、そのとっぴなことが起こる背後にはさまざまなテーマが盛り込まれている。たとえば、未婚の母の苦労だったり、家庭崩壊、失業問題、はたまた人間のやじ馬根性のみにくさや報道のあり方の是非などなど……。

 さらに、オゾン監督は、自身の初期の作品「海をみる」(97年)を引き合いに出し、「『海をみる』では、よき母と鬼のような母という正反対の女性を通して、二つの母性本能の姿を描いた」が、それとは違う形で「母性をテーマにした作品を作りたかった」と語っている。同じ母性を扱いながらの異なる作風。オゾン監督の器用さに改めて感心するとともに、「海をみる」を知る人には興味深く見られることだろう。

 ファンタジックでありながら、どことなく陰気で、その一方で楽しく面白い。何より、赤ちゃんのリッキーを演じるアルチュール・ペイレちゃんの愛らしさといったらない。その無邪気な笑顔を見ているだけで幸せな気分になれる。通常、子役は双子などを使い、ふたりで一役を演じさせることが多いが、彼の場合はすべてを1人で演じ切ったらしい。11月27日からBunkamuraル・シネマ(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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