注目映画紹介:「僕と妻の1778の物語」 病に侵された妻のために短編を書き続けた作家の夫婦愛

「僕と妻の1778の物語」の一場面 (C)2011 関西テレビ放送 フジテレビジョン ジェイ・ドリーム 東宝 S・D・P FNS26社
1 / 1
「僕と妻の1778の物語」の一場面 (C)2011 関西テレビ放送 フジテレビジョン ジェイ・ドリーム 東宝 S・D・P FNS26社

 「ねらわれた学園」や「なぞの転校生」などのSF小説で知られる作家の眉村卓さんと、がんで亡くなった悦子夫人の実話を基にした「僕と妻の1778の物語」(星護監督)が15日から全国で公開される。主人公の夫婦を演じるのは、「SMAP」の草なぎ剛さんと竹内結子さん。共演は「黄泉がえり」(03年)以来8年ぶりとなる。

あなたにオススメ

 SF作家の牧村朔太郎(草なぎさん)と妻・節子(竹内さん)は、結婚16年たった今も仲むつまじい夫婦。SF作家という仕事柄のせいか夢見がちな夫を、銀行で働く節子は温かく見守っていた。ところが、節子ががんに侵され、すでに手遅れの状態にあると朔太郎は宣告される。余命1年。「笑うことで免疫力が上がることがあるそうです」……医者の言葉に一縷(いちる)の望みを託し、朔太郎は、節子を笑わせるために、1日1編、原稿用紙3枚以上の短編小説を書くことにするのだが……という物語。

 空想好きの朔太郎には、ときどき、建物が巨大ロボットに見えたり、クラゲの大群が空を泳いでいるのが見えたりする。そんなファンタジックな映像を入れ込みながら、ユーモアを織り込んだことで物語が深刻になり過ぎないような配慮がなされている点は好感が持てる。ただ、1934年生まれの眉村さんが、実際に悦子夫人を亡くしたのは02年。年齢を積み重ねることで熟成される60代という年齢にふさわしい特別な夫婦愛が、残念ながら今作の朔太郎と節子は若すぎて伝わりにくい。

 今作は、草なぎさん主演のテレビドラマ「僕の生きる道」(03年)、「僕と彼女と彼女の生きる道」(04年)、「僕の歩く道」(06年)の、「僕シリーズ」最新作という位置付けだが、この題材については、テレビドラマと結びつけず、純粋に眉村さんと奥様の物語として描いてほしかった。朔太郎と同期の売れっ子作家役を谷原章介さん、その妻を吉瀬美智子さんが演じている。15日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

ブック 最新記事