注目映画紹介:「完全なる報復」 一筋縄ではいかない犯罪被害者と検事の男の対決劇

「完全なる報復」の一場面
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「完全なる報復」の一場面

 「Ray」(04年)のジェイミー・フォックスさんと「オペラ座の怪人」(04年)のジェラルド・バトラーさんが共演したサスペンス映画「完全なる報復」(F・ゲイリー・グレイ監督)が22日、公開された。タイトル通りの復讐(ふくしゅう)劇。バトラーさんはプロデューサーも兼任し、深みのある芝居も含めて、この作品への意気込みが伝わってくる。合衆国建国ゆかりの地、フィラデルフィアが舞台で、市庁舎の建物や美しい街を俯瞰(ふかん)で見た風景が効果的に使われている。

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 2人組の強盗に、目の前で妻子を殺されたクライド(バトラーさん)。事件を担当したのは、フィラデルフィア随一の有罪率を誇る検事ニック(フォックスさん)だった。裁判で確実に有罪を勝ち取るために被告側と裏取引をし、見返りに減刑する手を使うニックは、本件についても例外なく刑を執行。司法の取引に憤りを感じるクライドだったが、なすすべがない。10年後、犯人たちが次々に謎の死を遂げ、クライドに容疑がかかった。あっさり捕まるクライド。しかし投獄後も、事件関係者の不可解な殺人事件が起きて……というストーリー。

 犯罪被害者と検事の男の対決劇だ。だが2人の人物像は、善対悪といった紋切り型ではない。被害者側のクライドが復讐の鬼と化して「処刑」を行うのを見るうちに、普通なら同情されるべき対象の人物が、その手口の残虐性によってダークな主人公と化す。一方のニックは、正義の側にいながら、昇進目当てで刑を決めてしまうような人物。観客側の善悪の判断、感情を揺さぶってくる。2人の共通点として、家族を大事にする良き父親の顔が描かれ、どんな人間の心にも巣くう、どす黒い心理をあぶり出していく。

 中盤から、独居房にいるクライドがどうやって殺人に手を染めているのか、という謎解きのサスペンスとなっていく。やがて闘いは都市を相手に展開する。個人的には結末は少々「ありゃ?」だったが、細かいことは言うまい。バトラーさんとフォックスさんの熱い芝居に期待してほしい。22日からTOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)、TOHOシネマズみゆき座(東京都千代田区)ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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