注目映画紹介:「白夜行」 容疑者の娘と被害者の息子、事件追う刑事の19年間の生きざま追う

「白夜行」の一場面 (C)2011 映画「白夜行」製作委員会
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「白夜行」の一場面 (C)2011 映画「白夜行」製作委員会

 ここのところ公開された邦画の中で一番見応えがあった。ドラマ、舞台、韓国で映画にもなった東野圭吾さんの累計200万部の人気小説が原作の「白夜行」が29日に公開される。「60歳のラブレター」の深川栄洋監督がメガホンをとり、堀北真希が何を考えているか分からないミステリアスな女性を妖しく演じた。

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 80(昭和55)年、廃虚の密室で質屋の主人が遺体で発見された。担当の笹垣刑事(船越英一郎さん)らは容疑者の足取りを追うが、懸命な捜査もむなしく、容疑者死亡で捜査は終了。しかし笹垣刑事は、容疑者の娘と被害者の息子の、10歳とは思えない大人びた態度が心に引っかかっていた。数年後、容疑者の娘・雪穂(堀北さん)はお嬢様学校に通う美しい女子高校生に成長していた。一方、被害者の息子・亮司(高良健吾さん)は目立たず地味に暮らしていた。やがて、雪穂の周辺で不可解な事件が起き始める……というサスペンスストーリー。

 昭和っぽい雰囲気も映画の見どころの一つだが、映画は19年という長い期間にわたるある人間の光と闇を映像に丁寧に焼き付けた。華やかな光の中にいる雪穂と、陰でじっとしながら生きる亮司。劇中、一度も顔を合わせない2人の接点は、子どものころに起きた一つの殺人事件だった。その事件をしつこく追う笹垣刑事の19年間も感じさせながら、事件に関係した人間の生きざまを見せていく。

 愛憎劇が渦巻く重い映画に違いないが、船越さんが刑事役のお陰で、2時間29分の長尺でも2時間ドラマの延長線のような気持ちで見ることができる。それでいて、船越さんがドラマで見せる刑事像とはひと味もふた味も違う。船越さんは原作とキャラクターを変えて独自の役作りをした。深川監督はさりげなく自身の視点を織り交ぜつつ、原作を生かすことにたけているが、この作品でもその才能がいかんなく発揮されている。また、切羽詰った役をやらせたら天下一品の子役、今井悠貴くんの熱演にも期待してほしい。ラスト30分は息もつけない。29日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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