ヒミズ:ベネチア国際映画祭コンペ部門出品へ 園監督作品で初 「震災、原発事故でシナリオ変えた」

園子温監督
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園子温監督

 古谷実さんのマンガを園子温監督(49)が実写化する映画「ヒミズ」(12年春公開予定)が、イタリアで8月31日~9月10日(現地時間)に開催される第68回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品されることが28日、明らかになった。「世界三大映画祭」のメーンでもあるコンペ部門への出品は園監督にとって初めてで、園監督は「光栄に思います」と喜びのコメントを寄せている。園監督は映画祭の公式上映に参加してレッドカーペット・イベントにも出席する予定。

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 「ヒミズ」は、ギャグマンガ「行け!稲中卓球部」で知られる古谷さんが、ギャグを排して描いたシリアスな青春マンガ。01~03年に「週刊ヤングマガジン」(講談社)で連載、コミックスは全4巻が発売されている。平凡な人生にあこがれる中学3年の少年・住田祐一が、ある事件をきっかけに心に闇を抱え、学校へ行かずに「悪いやつ」を探すようになる……というストーリー。映画では、原作で主人公の同級生として描かれている人物たちが大人の“自由人”に置き換えられるほか、原作にはない人物も登場する。園監督は今回初めて原作の実写化を手がけた。

 脚本も手がける園監督は、映画について「撮影の前に、大震災、原発事故が起きて、それまで書いてきたシナリオを書き換えなくてはならなくなりました。どうしても、今、この現実を映画の中に取り入れて、撮っておかなくてはいけないと思いました」とコメント。「たった今、目の前で起きている本当の世界にそくして映画を撮るというのは、非常に生々しく、大変なことでありました。これは恐ろしい現実と向かい合う少年と少女の物語」と話している。

 住田を演じる染谷将太さん(18)は出品を「大変名誉であり、大変うれしい気持ち。現場中は見えない魔物と戦っていて常に興奮していました。その興奮がこの喜びの興奮につながったことに感動しています」と喜び、「国を超えて一人でも多くの方々に見てもらえたら」と期待している。また住田を気にかける同級生の茶沢景子を演じる二階堂ふみさん(16)は「とても大変な撮影でしたが、茶沢としてこの作品に参加することができてとても幸せでした」と話している。

 ほかに渡辺哲さん(61)、吹越満さん(46)、神楽坂恵さん(29)、光石研さん(49)、渡辺真起子さん(42)、黒沢あすかさん(39)、でんでんさん(61)が出演する。

 ベネチア国際映画祭は、仏カンヌ国際映画祭、独ベルリン国際映画祭とともに世界三大映画祭として知られている。日本人監督の作品はこれまでに、黒澤明監督「羅生門」、稲垣浩監督「無法松の一生」、北野武監督「HANA-BI」が最高賞(作品賞)の金獅子賞、溝口健二監督「雨月物語」、北野監督「座頭市」などが監督賞に当たる銀獅子賞を受賞している。(毎日新聞デジタル) 

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