園子温:「一生後悔する」と大震災被災地で撮影 「ヒミズ」ベネチア国際映画祭で会見

第68回ベネチア国際映画祭で「ヒミズ」会見に出席した(左から)園子温監督、二階堂ふみさん、染谷将太さん
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第68回ベネチア国際映画祭で「ヒミズ」会見に出席した(左から)園子温監督、二階堂ふみさん、染谷将太さん

 イタリアで開催中の第68回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品された園子温監督の映画「ヒミズ」の会見が6日午後0時半(現地時間)にあり、園監督と主演の染谷将太さん、ヒロインの二階堂ふみさんが登場した。東日本大震災の被災地である宮城県石巻市周辺で撮影を行った園監督は「多くの人に撮影を止められ、自分の中で葛藤はありながらもここで現地に入らなかったら一生後悔すると思い、被災地での撮影に挑んだ」と当時の心境を語った。

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 「ヒミズ」は、ギャグマンガ「行け! 稲中卓球部」で知られる古谷実さんが、ギャグを排して描いたシリアスな同名の青春マンガが原作。マンガは、01~03年に「週刊ヤングマガジン」(講談社)で連載され、コミックスは全4巻が発売されている。平凡な人生にあこがれる中学3年の少年・住田祐一が、ある事件をきっかけに心に闇を抱え、学校へ行かずに「悪いやつ」を探すようになる……というストーリー。映画版は、染谷さんと二階堂さんが主演し、原作で主人公の同級生として描かれている登場人物が大人の“自由人”に置き換えられるほか、原作にはない人物も登場する。

 園監督は「今回初めてオリジナルではない、マンガの原作の映画をやることにしました。10年前に書かれた漫画は、終わらない日常の退屈さ、むなしさみたいなものが若者の意識の中にあった原作『ヒミズ』を、3月11日の震災を受けて“終わらない日常”から“終わらない非日常”が当たり前になってしまった。そういう若者を描きたかった」と作品に対する思いを語った。染谷さんは「震災があって、今まで日本人の若者が考えなかったことを考え始めたり、すごく悲しい思いをして立ち直ろうとしていたり、今までとは全く違う思考を若者たちが持ち始めていることを実感しています」と話した。

 その後、現地時間午後10時からレッドカーペット・イベントと公式上映が行われた。レッドカーペットに二階堂さんは中世のマリー・アントワネットをイメージし、現代風にアレンジした青色のドレスで登場し、カメラのフラッシュを無数に浴びた。染谷さんも二階堂さんもレッドカーペットは初めての体験で、しかも園監督から「これ、どっきりだよ」とからかわれていたが、「楽しかった」(二階堂さん)、「緊張していたけど、思ったよりリラックスして楽しめました」(染谷さん)と映画祭の雰囲気を楽しんでいた。公式上映後は会場全体でスタンディングオべーションが起こり、8分間拍手が鳴りやまないという大反響に園監督ら関係者は北野武監督の「HANA−BI」以来、日本映画として14年ぶりの金獅子賞受賞に手応えを感じたようだ。

 授賞式は現地時間10日午後7時(日本時間11日深夜2時)に開催予定。映画「ヒミズ」は12年春にシネクイント(東京都渋谷区)ほか全国で順次ロードショー予定。(毎日新聞デジタル) 

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