注目映画紹介:「一命」 初の3D時代劇 海老蔵・役所の演技対決に家族愛も打ち出す

「一命」の一場面(C)2011 映画「一命」製作委員会
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「一命」の一場面(C)2011 映画「一命」製作委員会

 三池崇史監督が「十三人の刺客」(10年)以来、再び挑んだ本格時代劇「一命」が全国で公開中だ。今年のカンヌ国際映画祭で上映され、また時代劇として初めての3D映画ということで話題を集めている。17世紀の江戸時代初頭。浪人が裕福な大名屋敷に出向き、庭先での切腹を申し出ることで、屋敷側からカネや仕事を得るという「狂言切腹」がはやっていた。ある日、井伊家にも1人の浪人が訪れる。これもまた狂言切腹と踏んだ井伊家家老の斎藤勘解由(さいとう・かげゆ)だったが、その浪人、津雲半四郎は、意外なことを語り始める……。

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 半四郎役の市川海老蔵さんが、さすが歌舞伎俳優だと感心するたたずまいで孤高の浪人を演じれば、一方の勘解由役の役所広司さんも、冷酷でありながら懐の深さを見せる複雑な役を、役所さんならではの演技力で見せる。ほかに瑛太さん、満島ひかりさんといった若手ながら抜群の演技力を持つ役者たちが出演し、作品を彩っている。

 それにしても、家族を食べさせるために狂言切腹というひきょうな手段に及ばざるを得なかった浪人たち。その本音が伝わるだけに見ていてつらい。その半面、狂言切腹をあさましいと断じる勘解由の言葉も、またしかり。これまで時代劇というと、侍魂がいかに立派なものであるかを語り、彼らの生きざまは日本人の誇りと美化されてきた。ところが今作を見ると、果たして本当にそうなのだろうかと複雑な気持ちになる。原作は、1958年に発表された滝口康彦さんの短編小説「異聞浪人記」。62年には、小林正樹監督、仲代達矢さん主演で「切腹」として映画化された。原作と「切腹」、ともに比重が軽かった半四郎の娘、美穂(満島さん)の出番が今作では増え、家族愛をより強く打ち出した仕上がりとなっている。15日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開。3D同時上映。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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