乙葉しおりの朗読倶楽部:第43回 宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」 一人でできなくとも…

iPhoneアプリ「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん
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iPhoneアプリ「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第43回は宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」だ。

ウナギノボリ

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 10月27日から11月9日までは、読書週間です。

 曜日は関係なく、毎年この日程に決まっているんですけど、これは11月3日の文化の日を中心にしているためなんだそうです。

 その歴史は1924年から始まっていて、この時期は読書に関する行事もたくさん行われているんですよ。

 この読書週間にちなんで、2005年からは10月27日を文字・活字文化の日と定めるようになりました。

 私たち朗読倶楽部でも、読書週間中の行事にいくつか参加することになっていて、緊張半分、楽しみ半分な感じです。

 読書週間にまつわる行事は全国で行われているので、皆さんも近所でイベントがないか、探してみてはいかがですか?

 ではここで朗読倶楽部のお話、「文化祭」の思い出、最終回です。

 文化祭2日目、コーラス部のお手伝いをするはずだったみかえさんが行方不明に!

 コーラス部は、朗読倶楽部ほどではありませんが決して部員は多くないので、1人欠けるだけでもステージで目立ってしまいます。

 そこでコーラス部の部長さんは、私をみかえさんの代役に指名したのですが……。

 と言っても、練習もしていない、曲を詳しく知らない私が無理に歌っても、コーラス部の皆さんの足を引っ張ってしまうだけです。

 そこで私は歌わずに口パクしていることになったのですが、心の中ではそのことよりもみかえさんのことでいっぱいでした。

 ところがいざ舞台に上がってみると、客席の最前列で部長さんと一緒に申し訳なさそうな顔をしたみかえさんが座っていたんです。

 何事もないようでひと安心すると、今度は舞台に立っている気恥ずかしさと、歌うことのできない申し訳なさがこみ上げてきました。

 それでも代役である以上、間違っても失敗はできませんから周りに合わせて歌っているフリをしていたんですが、最後の曲を聴いたとき……思わず歌い始めてしまってました。

 最後の曲……それは、宮沢賢治さんの「星めぐりの歌」だったんです。

 出し物が終わって退場すると、舞台裏にみかえさんが待っていて、私たちに平謝りしてきました。

 事情を聞くと、迷子の子どものお世話をしていて集合に遅れてしまったようで、そういうことならとコーラス部の皆さんも快く許してくれたのです。

 そんなわけで、朗読倶楽部の初めての文化祭は、綱渡りな感じながらも無事終了したのでした。

 ところで、最後に歌ってしまった私の歌声を気に入ったコーラス部の部長さんが、それ以来私にコーラス部の入部を勧めるようになるのですが、それはまた別のお話で。

 次回からまた、新しいお話になりますのでよろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」

 こんにちは、今回は宮沢賢治さんの「セロ弾きのゴーシュ」をご紹介します。

 セロというのはバイオリンの一種、チェロのフランス語読みです。

 バイオリンやビオラのように手に持つ楽器ではなく、コントラバスのように床に固定して使う弦楽器ですね。

 あるセロ弾きと動物たちを描いたこのお話は、宮沢賢治さんが亡くなった翌年の1934年に発表されました。

 ゴーシュさんは金星音楽団で「セロ」のパートを担当していました。

 ですが、彼の演奏は楽団で一番下手だったために、いつも楽長さんにしかられていたのです。

 彼は涙をこぼしながらも、セロを家に持ち帰って練習を続けました。

 夜中を過ぎるころには、顔は真っ赤になり、目も血走って倒れてしまいそうでしたが、彼はそれでも練習をやめませんでした。

 そのとき、大きな三毛猫が彼のもとにやってきて、1曲演奏してほしいと頼まれるのですが……。

 このお話の主人公、ゴーシュさんは努力家です。

 楽長さんに散々怒られたあとでも、くじけずに練習を続けています。

 でも、一人でがむしゃらに弾き続けるだけでうまくなることはなく、「もうじぶんが弾いているのかもわからない」という作中の表現からも、自分を見失ってしまっていることがわかります。

 そんな時、代わる代わる訪れた動物たちからお願いされる曲の演奏を通じて、ゴーシュさんは技術と自信と謙虚な心を養っていきました。

 一人では頑張っても行き届かないことがあって、周囲の人たちと協力しあうことでそれが補われていく……そういうことを、このお話は教えてくれているように思います。

 ちなみに宮沢賢治さんも「セロ」を買って習っていた時期があるそうですが、このセロは岩手県花巻市の「宮沢賢治記念館」に今も大切に保管されているんですよ。

 できることなら、その音色を聞いてみたいなって、いつも思っています。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして配信している。1話約20分で250円。

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