乙葉しおりの朗読倶楽部:第45回 小泉八雲「耳無芳一の話」悪いことをしていないのに…

「耳なし芳一・雪女 八雲怪談傑作集(新装版)」(講談社)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「耳なし芳一・雪女 八雲怪談傑作集(新装版)」(講談社)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第45回は小泉八雲の「耳無芳一の話」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 暦の上では立冬を過ぎて、冬の足音がだんだん近づいてくる……はずなんですけど、私の住んでいる地域では夜はともかくとして、昼間が暖かいので、冬の訪れを感じない今日このごろ、皆さんのところはいかがですか?

 さて、今週は19世紀ロシア文学を代表するお二人がお誕生日を迎えています。

 まず11月9日、イワン・セルゲーエヴィチ・ツルゲーネフさん。

 1818年オリョール州生まれ、「父と子」「初恋」などの作品で知られ、その叙情的な文章表現は日本の文学にも大きな影響を与えました。

 代表作「猟人日記」では、農民に職業自由の選択を認めず貢納の義務を課す「農奴制」を批判、政府の怒りを買って逮捕されてしまいますが、この作品が大反響を呼んだことにより後の農奴開放につながりました。

 そしてもう一人、11月11日はフョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーさん。

 1821年モスクワに生まれ、「罪と罰」「悪霊」「カラマーゾフの兄弟」といった傑作を送り出し、こちらも日本文学に大きな影響を与えました。

 貧しい生活を送っていた彼は、自らの力で社会を変革する方法を模索し続けますが、そのために政治犯として逮捕されシベリアへ流刑になり、10年以上の休筆を余儀なくされました。

 一方、賭博好きで借金を作り、返済のために受けた作品執筆では、時間がないため口述筆記で作品を完成させたエピソードもあったそうです。

 ではここで、朗読倶楽部のお話……今回からは、朗読倶楽部2度目の大会出場の時の思い出をお話しさせてください。

 初めての大会出場の後、奮起した3日間の夏合宿が終わった直後のこと。

 申し込んだ五つの大会のうち、二つ目の大会が迫っていました。

 開催日は夏休みの後半、もう時間はありません。

 だからこそ部長さんは合宿を提案した……と思っていたのですが、聞いてみると大会があること自体忘れていたようでした。

 いまだ「自信を持った」というところまではいきませんでしたが(こうして思い出として語っている今も自信満々!ということは全くないんですけど(>_<))、前回の失敗から学ぶことがたくさんあったこともあり、今度は「不安」よりも「結果を出そう」という意識の方が強くなっていたんです。

 ちなみに、今回の大会ではその後の大会出場にもつながっていく、ある出会いがあったのですが……この続きはまた次の回で。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 小泉八雲「耳無芳一の話」

 こんにちは、今回は小泉八雲さんの「耳無芳一の話」をご紹介します。

 このお話は以前ご紹介した「雪女」と同様に小泉八雲さんが蒐集した民話がもとになっていて、「耳切団一」をはじめとするいくつかの類話の一つとされています。

 合計17編をまとめた「Kwaidan(怪談)」の中の一作として、1904年に出版されました。

 むかしむかし、赤間ケ関(現在の山口県下関)の阿彌陀寺(あみだじ)というところに、芳一さんという盲目の琵琶法師が住んでいました。

 彼の奏でる琵琶は少年時代で既に師匠を超えてしまうほどの腕前で、特に「壇ノ浦の戦」を謡ったときは鬼神すらも涙したといいます。

 詩や歌を趣味としていた阿彌陀寺の住職さんは貧しい芳一さんを住まわせ、芳一さんはそのお礼に琵琶を奏でるという日々を送っていました。

 ある夏の夜のこと、住職さんが法事に呼ばれ、お寺の人たちは芳一さんを残して檀家さんのもとに出かけてしまいました。

 寂しさ紛れに琵琶の練習をしていた芳一さんの前に、一人のお侍さんが現れます。

 彼は芳一さんの琵琶の腕前を聞きつけ、自分が仕える高貴なお方のためにすぐ屋敷に来て演奏せよと言いました。

 お侍さんの命令とあっては背くこともできず、目の見えない芳一さんは彼に手を引いてもらってお屋敷へ向かいます。

 お屋敷の人たちは芳一さんの「壇ノ浦の戦」を熱心に聴き入り、最後には声を上げてむせび泣くほどでした。

 芳一さんはあと6日の間、毎晩の演奏を頼まれ、このことは誰にも話さないようにと念を押されたのですが……。

 このお話は昔話に多い「悪い考えや行いをしてひどい目に遭う」ような訓話とは違い、芳一さんは悪いことをしていないのに大変な目に遭ってしまいます。

 でも、芳一さんが普段から正しい行いをしていたからこそ住職さんが親身に助けてくれたり、九死に一生を得るラストにつながっていたりするのかもしれませんね。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして配信している。1話約20分で250円。

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