ブック質問状:「ログ・ホライズン」 “書籍化のための練習”が30万部

橙乃ままれさん作、ハラカズヒロさんイラストの「ログ・ホライズン」(エンターブレイン)
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橙乃ままれさん作、ハラカズヒロさんイラストの「ログ・ホライズン」(エンターブレイン)

 話題の小説の魅力を担当編集者が語る「ブック質問状」。今回は、突然オンラインゲームの世界に閉じ込められてしまった主人公らのサバイバルを描く「ログ・ホライズン」(橙乃ままれ著、ハラカズヒロ画)です。エンターブレインのホビー書籍部に作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 オンラインゲームの中に3万人の日本人ユーザーが閉じ込められたところから、物語がスタートします。3万人という規模の大きさは新しいかもしれませんが、この設定自体は、「ログ・ホライズン」の出身であるウェブ小説の中では、王道ともいえるジャンルになります。そんな本作の見どころは何といっても“腹ぐろ眼鏡”の異名を持つ主人公・シロエです。書籍発売の際にも、まず「シロエ」というキャラクターの面白さをアピールすべきだとスタッフ内で決まりました。

 シロエは「他人とかかわることが面倒」と公言しているくせに、彼がゲーム内で就いた職業は「他人を生かす」ことで本領を発揮する付与術師(エンチャンター)だという屈折した性格の持ち主です。また戦闘では、先陣をきって戦うのではなく、知略をめぐらせ、事件を解決する参謀タイプでもあります。そういったシロエというキャラクターの魅力がそのまま物語の魅力になっていると思います。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 もともと小説投稿サイト「小説家になろう」に連載されていたものを書籍化しました。橙乃さんは、別作品「まおゆう魔王勇者」をネット掲示板で完結された後、長いお話でも飽きずに書けると確信され、次は書籍化したら、ちょうど1冊になるような起承転結のお話を作ろうと考え、「ログ・ホライズン」のネット連載をはじめられたそうです。しかし「ログ・ホライズン」自体は「いつか書籍化するための練習」だったそうです。それがまさか書籍化され、1年で5冊、累計30万部ですから、橙乃さんの才能おそるべしです。

 −−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか?

 橙乃さんは、書くのもレスポンスも本当に速いです。T(テーブルトーク)RPGをされていたせいか、設定の作りこみが半端ないのはもちろんのこと、後付けの設定に対しての対応力もバツグンで、いつも驚かされています。小さなキャラにも、しっかりバックボーンがあって、その背景こそがキャラクターの多様さにつながっていると思います。「ログ・ホライズン」は群像劇ですが、どの子も愛すべきキャラに仕上がっていて、人気投票をこの前開催しましたが、マイナーなキャラクターでもたくさん得票がありました。ダメなキャラ、欠陥があるキャラに対して、特にすごく優しい目で作品を書かれている印象です。

 イラストレーターのハラさんは、全くの偶然ですが、書籍化が決まる前から、そもそも「ログ・ホライズン」読者でした。なので、ハラさん自身、イラストの依頼がきたときは相当驚かれたようです。毎回、作品を読み込んでくださり、イラストのアイデアを自ら出してくださいます。「ログ・ホライズン」はウェブでの既読者も多いので、キャラデザへの期待も大きく、プレッシャーも相当だと思うのですが、毎回いつもそれをぽーんとクリアされていきます。また、「ログ・ホライズン」では、ツイッターで読者の方からキャラクターの装備を募集しているのですが、その投稿されたアイテム(その数15!)のデザインも毎回してくださっています。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

 やはり、主人公のシロエが「食えないやつ」なので、彼の活躍が楽しみです。想像の斜め上のことをしでかしてくれる主人公ですから。大変なことは、ウェブですぐ読めてしまう作品ではあるので、そのウェブ版読者の方も満足できるような作りにしようと、毎回付録をつけることでしょうか。でも、実際私は「やりたい!」といっているだけなので、橙乃さんやハラさん、デザイナーさんの方が大変だと思います。でも一つアイデアがあると皆さんから、もっとこうしよう!って、さらなるアイデアが出てくるので楽しいです。一番とっぴなアイデアをくれるのは監修の桝田省治さんですね。ただ、桝田さんには、最後の最後に「これどうしましょう!?」って判断をお願いしていたりするので、やはり大変だと思います(笑い)。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 5巻でようやく第1部完結。これから第2部となります。引き続き「小説家になろう」で連載ののち、書籍化します。実はこれでやっと舞台が整ったという段階なので、これからさらなるキャラクターの成長や、びっくりするようなお話が展開されていくと思います。ご期待ください! 第2部の書籍刊行までは、まだ時間がありますので、未読の方もこの間に第1部を読んでみていただけたらなと思います!

 また橙乃さんの別作品「まおゆう魔王勇者」の5巻が1月21日に発売、そのあと2月19日に豪華な声優さんたちによる朗読劇も開催されます。こちらもぜひチェックしてみてください!

 エンターブレイン ホビー書籍部

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