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神様のカルテ:DVD・BD発売 深川栄洋監督に聞く「死を感動のための装置にしたくなかった」

映画
DVDとBDが発売された「神様のカルテ」の深川栄洋監督

 人気グループ「嵐」の櫻井翔さんと女優の宮崎あおいさんの共演で話題を呼んだ11年夏の公開作「神様のカルテ」のDVDとブルーレイディスク(BD)が24日に発売された。10年度の本屋大賞を受賞した現役医師の夏川草介さんのデビュー小説を、「60歳のラブレター」(09年)や「白夜行」(11年)で知られる深川栄洋監督が叙情豊かに映像化した。悩みながらも医の道を探る若い医師の姿が、妻や患者、職場の仲間との絆の中に描かれる。深川監督に話を聞いた。(上村恭子/毎日新聞デジタル)

 −−原作小説のどんなところに引かれながら撮影しましたか。

 原作は、医療の大変さを声高に叫ぶのではなく、ユーモラスなキャラクターを通して描いていると思いました。原作の夏川先生にお会いして、先生が小説に書かなかった悩みや苦しみをお聞きし、どうしてこの小説を書かなければならなかったのかを確認していったとき、24時間、3年間無休という過酷な医療現場の現実を知りました。医師と看護師と患者が、こうであったらいいのではという理想の世界を映画の中に描いていきました。

 −−病院、医師の姿がリアルに描けているところが見どころです。

 実際の医療現場に1カ月半の間張りついて、夜中の救急救命現場を取材させていただいたり、救急車と患者さん、医師のやりとりなども見せていただきました。現場の実態、裏側を見て、その中でどんな部分を使っていくのか、表現していくのかが課題でした。取材には主演の櫻井さんにも参加していただきました。

 −−その櫻井さん演じる若い医師が、末期がん患者と出会い、成長していくさまが描かれます。どのように役を作り上げていきましたか。

 まず、櫻井さんが何を大切にして生きているのかを話してもらいました。櫻井さん自身が足を止めて人生を振り返ったとき、どんなことが心に浮かぶのかを聞きながら、主人公(栗原一止)に反映させていきました。櫻井さんはどうしてもカッコいいし、とてもさわやかですが、役の一止は地方にいる普通のお兄ちゃんで、(医療現場の)よどみの中にいます。中でも髪形はこだわりの一つ。櫻井さんと話し合って決めました。僕もパーマをかけて、カツラを二つを持っていき、「この三つのスタイルの中でどれがいい?」と聞くと、櫻井さんは「かつらではなく(実際に)パーマを巻く」と。40~50分かけてあの髪形を作り上げる最中に、櫻井さんは役になりきるスイッチが入ったと思います。

 −−撮影は10年秋、公開は11年夏で震災をまたぎましたが、作品を見返してみて新たに感じたことはありますか。

 企画の段階から死をどう扱ったらいいのかを悩んでいました。死を感動のための装置にしたくない、静謐(せいひつ)なものにしたいという思いがありました。死の尊厳、人間の尊厳を大切にしたかったからです。映画館で見て、今回、DVDで見返しましたが、あれでよかったんだなと思いました。東日本大震災でたくさんの「死」がありましたが、死を感動の材料していたら、後ろめたさが残ったでしょう。

 −−世界的ピアニストの辻井伸行さんの挿入曲がすてきでした。

 主題曲は辻井さんにロケ先の松本を訪れてもらって、現場の空気からイメージしたものを作曲していただきました。さらに挿入曲では、辻井さんの持ち味である清涼感にもう一つ、人間の光だけではない部分を入れてほしいと思い、僕からお願いしました。末期がん患者が書いた手紙が読まれる重要なシーンです。辻井さんにどんなシーンなのかを説明するときに熱弁をふるい過ぎて、彼が困ってしまっているように見えて僕の中で不安もありましたが、憂いを含む素晴らしい曲が出来上がってきました。レコーディングではどんな映像が流れているのかを僕が説明しながら、10回目で「これだ」というものがとれました。

 −−特典映像の櫻井さんとのビジュアルコメンタリーの見どころを教えてください。

 映画の裏側を知ってから映画を見返すと、違った見え方ができます。そこを楽しみながら、作品をもっと好きになってもらえたらうれしいですね。櫻井さんが初エピソードを語ったり、お客さんの感想を語っている場面もあります。素顔の櫻井さんを見ることができますよ。

 −−監督自身、公開後にもらった感想でうれしかった言葉はありましたか。

 看護師さん100人に見てもらうイベントを行ったときに「患者さんのための医療とは何かという悩みや、日々の業務でこれでいいのかと悩んでいる気持ちを表現してもらえた」と言ってもらえたことがうれしかったですね。看護師を長年されていた方からは「若いころを思い出した」という言葉ももらえました。

 −−最後に作品をDVDで観賞する方々へメッセージをお願いします。

 この作品の登場人物は、みんな自分に迷っています。そして、不器用ながらも一生懸命生きています。心のふたが開いてしまい涙が出ることもあるけれども、次の日のドアを開ける一歩が必ずあります。たくさんの若い人に作品を見てもらいたいし、心にふたをすることで日常に慣れてしまった大人の方々にも見てもらいたいと思います。

 <プロフィル>

 1976年生まれ。04年、オムニバス映画「自転車少年」で商業監督デビュー。「60歳のラブレター」(09年)、「半分の月がのぼる空」(10年)、「白夜行」(11年)、「洋菓子コアンドル」(11年)など話題作を次々に手掛ける。最新作は5月26日公開予定の「ガール」。

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