ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
音声合成技術を用いた音楽制作ソフト「ボーカロイド」で楽曲制作を手掛けるクリエーターの「悪ノP(mothy)」さんが手掛けているライトノベル「悪ノ娘」シリーズ( PHP研究所)が人気だ。悲運の双子の物語を描いた小説「黄のクロアテュール」に始まり、初音ミクをイメージしたキャラクターが登場する第2弾「緑のヴィーゲンリート」、14歳の箱入り娘が主役となる第3弾「赤のプラエルディウム」をへて、最終巻として第4弾の「青のプレファッチオ」が発売された。楽曲制作と作家の二足のわらじをはく悪ノPさんに話を聞いた。(毎日新聞デジタル)
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−−この作品の特徴、魅力は?
元々は動画サイトで発表した楽曲「悪ノ娘」から発展した小説です。架空の中世的世界を舞台に、ある国の王女の暴虐をきっかけに起こった革命、そしてそこから続く大陸全土を巻き込む混乱を主軸に、それらを多くの登場人物の視点から描くことで見えてくる愛憎の様子を見てもらいたいですね。元の楽曲を知っている人は、小説を読むことでより深く世界観を理解してもらえるかと思いますし、知らない人でも楽しめるようなストーリーになるよう心掛けながら書きました。
−−(ボーカロイドのプロデューサー)「ボカロP」として活躍していた中で、小説も書こうとしたのは?
楽曲制作を続けていく中で、やはり文字数に制限のある歌詞だけでは表現できない、伝えられないことは出てきます。その不足さが音楽の良さでもあるのですが、同時にもどかしくもあったんです。「悪ノ娘」にも制作段階でカットしたプロットはたくさんありましたから。そんな中でノベル化の話をいただき、ちょうどプライベートにも余裕のあった時だったので、いい機会だからやってみようかなと。最初は結構気楽な気持ちで始めました。
−−「悪ノ娘」が誕生したきっかけは?
最初に作ったのは冒頭の「オーホッホッホ さあ、跪(ひざまづ)きなさい!」というセリフでした。ボーカロイドにしゃべらせてみたいと思って考えたセリフがこれだったんですよね、どういうわけか。僕の中の鏡音リンというキャラクターのイメージと、その当時見ていたアニメの影響でこうなりました。で、このセリフから発展させてどういう曲にしていこうか考えていったわけです。結果として出来上がったのが高慢な王女様の物語。そこをきっかけとして世界観を広げていきました。
−−作る上で影響を受けた作品はありますか?
この作品に限らずですが、僕の場合、古典童話や物語、史実などを基にして楽曲のストーリーを構築していくことが多いです。「悪ノ娘」の王女リリアンヌのモデルはマリー・アントワネットなのですが、他の登場人物もそれぞれモチーフとなったキャラがあったりします。西洋のものだけではなく、時には日本の古典から持って来たり……。それらを混ぜ合わせ、自分流に再構築したのが「悪ノ娘」の世界観だと言えます。
−−作品を作る上でこだわったことは?
基本的に僕は暗い話、悲劇を好む傾向があって、楽曲のストーリーもそちら方面に走りがちになったりします。ただ、やはり長編小説の場合、ずっと暗い展開ばかりだと読む人も、そして何より書いている自分自身の気がめいってしまうので、適度に明るい、笑えるエピソードなんかも織り交ぜています。「赤のプラエルディウム」以降の登場人物は明るい性格のキャラが多いです。もちろん悪ノPならではのドロドロ要素も満載です。「青のプレファッチオ」の後半なんかは「これぞまさに悪ノP!」といった感じで展開していきます。
−−作品の中で思い入れのあるキャラクターはいますか?
キャラクターに関して、特に誰が好きとかそういう気持ちは持たないようにしています。キャラクターを気に入りすぎて、ストーリーに影響を及ぼしてしまうと本末転倒なので。ただ、思い入れという意味では、やはり「悪ノ娘」が生まれるきっかけとなったリリアンヌに一番あると思います。あとはネイ。理由は「青のプレファッチオ」を最後まで見ればわかるかもしれません。
−−逆に苦労したことは?
実際のところ、音楽の中だけの物語でしたらそこまで細かい矛盾や設定を気にしなくてもよかったりするんですが、小説だとそういうわけにもいきません。特に「悪ノ娘」シリーズは今回で4冊目ということもあって世界観や伏線など、だいぶ膨らんでしまったので、そこを奇麗にまとめるのに苦労しました。過去や未来のエピソードも含めて矛盾がないようにしないといけませんから、特に終盤は自分で作った資料とにらめっこしながら書いてました。
−−今後について読者へ一言お願いします。
「青のプレファッチオ」の終章、最後に書かれた一文が今後の展開に関する僕からのメッセージです。知りたい人はぜひ買ってください(笑い)。今後とも楽曲、小説の両方を、応援してくれたらうれしいです。よろしくお願いします。
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