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メリダとおそろしの森:アンドリュース監督に聞く「極限状態に置きジレンマを与えたかった」

映画
「メリダとおそろしの森」について語ったマーク・アンドリュース監督に聞く

 ピクサー・アニメーション・スタジオが誕生して四半世紀。第1作目の「トイ・ストーリー」(95年)から数えて13作目となる長編アニメーション「メリダとおそろしの森」が、21日に封切られた。今作の新機軸は、中世スコットランドを舞台にしたフェアリーテールであり、女性が主人公であるということ。監督を務めたのは、今作が初監督作となるマーク・アンドリュースさん。製作中のことを「素晴らしい体験で、毎日ワクワクしていた」と振り返るアンドリュース監督に話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

 「メリダとおそろしの森」は、王国一の弓の腕前を持つおてんばな王女メリダが主人公。両親は、年ごろの娘のために伝統にのっとった結婚話を進めようとするが、メリダはそれが我慢ならない。母エリノア王妃と衝突した彼女は、たまたま森で出会った魔女に、自分の運命を変えてほしいと頼む。ところがそれが、メリダ自身はおろか王国すべてを揺るがす事態を招いてしまう。

 実は、今作にはもう1人、監督がいる。そのもう1人、スコットランドの血を引く女性監督のブレンダ・チャップマンさんが物語を考えていた。ところが途中で壁にぶち当たった。当時のチャップマンさんの状況を、アンドリュース監督は「ストーリーを作る上でもっとも危険なのは、客観性を失うこと。自分の構想に執着し過ぎると抜け出せなくなるんだ。ブレンダは、(わが子をヒロインのモデルにしたことで)愛着を持ち過ぎてしまった」と語る。

 そこで白羽の矢が立ったのが、自称“スコットランドの歴史マニア”のアンドリュース監督だった。アンドリュース監督は「Mr.インクレディブル」(04年)や「レミーのおいしいレストラン」(07年)などでストーリー監修を務めた実績がある。常にオリジナルストーリーを映像化してきたピクサーには不足のない人選だった。

 バトンを受け取ったアンドリュース監督がまず考えたのは、主人公を設定し直すこと。引き継いだ直後、主人公はメリダとエリノア王妃の2人だった。「2人の力関係が同等だった。それでは観客を彼女たちのどちらにつくかを選択させることになり混乱させる。だからその部分を変え、メリダ1人の物語にしたんだ」と語る。

 また、メリダを成長させるためのきっかけとして、王妃が魔法によって、ある動物に姿を変えられるというアイデアも出した。その動物はクマ。これには、メリダの三つ子の弟たちも巻き込まれてしまうのだが、そのアイデアについて「クマは王国にとって宿敵。事情を知らないメリダの父親、つまり王は妻である王妃を殺してしまうかもしれない。その状況を作ったのはメリダ自身にしました。彼女を極限状態に置くことでジレンマを与えたかったんだ」と解説した。

 さらに今作には、一般的なフェアリーテールがそうであるようなイケメンの王子は出てこない。そのことを指摘すると、いかにもよくあるアイデアだといわんばかりに首を横に振りながら、「そういう設定はもともと考えていなかったよ」とニヤリ。そして、今作の主人公を王女にした理由を「彼女が例えば羊飼いの娘だったとしよう。それで、彼女が結婚しなければならないとなったら? それがどうしたということになるよね。ところが王女であれば、しかも彼女は王国の平和のために政略結婚させられる立場。誰かがそこから助け出してくれるわけじゃない。彼女自身が、自分とは何者かを見いだすための旅に出なければならないんだ」と明かした。

 そうしてメリダは、なりたい自分と、周囲から求められる役割との間で葛藤しながら、運命に立ち向かっていく。まるで本物の髪の毛のような動きを見せる、赤毛のカーリーヘアをなびかせながら。「あの時代、彼女のような立場の人間が自分で自分の運命を切り開こうとするのは大変なことだ。でも彼女はあえてそれに挑んだんだ」。その思いは、今作の原題「Brave(勇敢な)」に託されている。

 自身も「挑戦が大好き」というアンドリュース監督。だが製作中は「自分たちの作品に一番厳しい評価を下す製作総指揮のジョン・ラセターやアンドリュー・スタントンらを納得させなければならなかった」のだから、プレッシャーは生半可なものではなかったはず。案の定、大役を終えた今の心境は、「ヒュー」と額をぬぐう仕草をしながら、「無事に終わってよかったと安堵(あんど)している」と本音をポロり。そのうえで、「自分たちスタッフが満足し、誇りに思うものができた。あとは公開して、みなさんに楽しんでもらえればいうことありません」と破顔一笑した。「メリダとおそろしの森」は21日から全国で公開中。

 <プロフィル>

 カリフォルニア芸術大学で学び、00年ピクサー入社。「Mr.インクレディブル」(04年)、「カーズ」(06年)、「レミーのおいしいレストラン」(07年)、「トイ・ストーリー3」(10年)の製作にストーリー担当として参加。05年には、米アカデミー賞短編アニメ賞ノミネート作「ワン・マン・バンド」の共同監督・脚本を務めた。「メリダとおそろしの森」が長編初監督作。ちなみに、好きな日本のアニメ監督に、宮崎駿さんと大友克洋さんの名前を挙げた。

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