尋ね人:主演の夏川結衣 母の恋愛をたどり「女性としての感覚を突き付けられていく…」

ドラマWスペシャル「尋ね人」の(左から)原作者の谷村志穂さん、出演する夏川結衣さん、志田未来さん
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ドラマWスペシャル「尋ね人」の(左から)原作者の谷村志穂さん、出演する夏川結衣さん、志田未来さん

 「海猫」などで知られる作家・谷村志穂さんの恋愛小説が原作のドラマWスペシャル「尋ね人」が、3日のWOWOW無料放送の日「TOUCH!WOWOW2012 いいね♪3チャンネルの日」内で、午後7時半からWOWOWプライムで放送される。主人公・李恵を演じる夏川結衣さんはドラマW初主演、その母・美月の50年前の姿を演じるのは志田未来さんはドラマW初出演。また、現代の母を十朱幸代さんが演じる。死期を悟った母からかつての恋人を捜してほしいと頼まれた娘。北海道・函館を舞台に昭和と現代の時空を超えた切なく壮大な悲恋物語が展開する。夏川さんと志田さん、原作の谷村さんに聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 −−夏川さんと志田さんは今回の作品で初めて共演されたとか。お互いの印象は?

 夏川さん:照れるんですけど、(志田さんの)ちょっとファンです(笑い)。ほかに代えの利かない女優さんだと思うんです。お芝居が見ていて気持ちがちゃんと伝わってくる、好きな女優さんです。

 志田さん:夏川さんが出られている作品がとても好きでよく拝見させていただいていたので、今回お会いできるのがすごく楽しみでした。ただ、今回同じシーンというのがなく残念ですけど、演技を見て学びたいなと思いました。

 −−函館が物語の舞台でロケも函館でされたそうですね。みなさんにとって函館とは?

 谷村さん:「海猫」から恋愛小説の舞台を函館にすることが多くて、私はとても魅力的な街だと思っています。というのは、明治の初期にはかなり近代化が進んでいた街なんですが、そこから何度となく大火や台風で街がなくなるということを繰り返し、その都度立ち上がってきている。古い建物は古いままで大切に残っていて、その扉が開くと、ふっと物語が現れる。私自身、函館に家を造ったので、1年に1カ月間くらいは向こうで過ごしています。

 夏川さん:私は一度だけ行ったことがあるんですが、新しいものと古いものが同居しているような感じで、今お話を聞いて、その都度その都度(生まれ変わりを)繰り返してきているんですね。やっぱり再生力のある街なんだろうなって。人の気持ちがとても強いというか、再生する力が強い、心が折れない強さがあるのかなって思いました。

 志田さん:私はつい最近行ったのが高校の修学旅行で1年前くらいなんです。街の方々が力強い活気のある方が多いと思いました。強い街のイメージがあります。函館の周りは穏やかにゆっくりとした時間が流れているのに、そこにいる方々はすごく強いなあと思いましたね。

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 −−篠原哲雄監督とは何か話されましたか。

 谷村さん:篠原さんは私がいるときに函館にいらっしゃっていただいたんです。ちょっと家に寄っていただいてね、みんなで明け方まで(お酒のボトルを)4本くらい開けて……。そのとき篠原さんがおっしゃったことで一つだけ妙なことだけ覚えていて、「十朱さんと志田さんの目が似ている」って。

 −−そう言われて志田さんはどう思いますか?

 志田さん:すごく光栄です。やはり一人の女性を演じるというので、どこか似ている部分があれば自信につながるというか、ちょっと安心する部分もあるので、それを聞いてほっとしました。

 夏川さん:私は十朱さんとは以前一度だけご一緒しているんです。そのときも母親役をやっていただいてとても一緒にお芝居がやりやすい方だと思いました。大女優の方なのに身近に接していただいて、すごく気を使って親子の役をやっていただいたので、とても感謝しています。とても美しくて、本当にすてきな女優さんなので本当にもう一度ご一緒したいと思っていたので、今回は共演できて本当にうれしいし、逆に親子を演じるのが2回目だからこそ君はどこまでできるのかといわれているような気がして、緊張しますね。

 −−ドラマの舞台になる昭和20年代にはどういうイメージを持っていますか。

 志田さん:演じる年齢は自分と同じ年くらいなんですが、(舞台になる昭和20年代は)自分には想像がつかないので、その時代に生きた人たちに話を聞いて勉強したいなと思いました。祖父や祖母にはよく話は聞いていました。遊ぶものがなかったとか、(現代と異なる)家族の関係性などをよく聞きました。

 −−夏川さんは母親からその時代を感じるわけですが。

 夏川さん:世の中がすごく変わっていった時代だと思うんですね。女性でも独立心が出てきた人もいるだろうし。私が演じた李恵としては、あれほど強く人に役に立ちたいとか、自分はどうありたいかという自立心のある考え方をする女の人が自分の母親だったというのに戸惑ったでしょうね。自分の母親について、一人の人間として女性としての感覚を突き付けられていく。でも、どの時代でも人を恋しく思う、人を大事に思う気持ちや、人を亡くすことの切なさなど、人としての生き方が娘にもちゃんと伝わると思う。

 本当に人は突然、残酷なほどいろんな事情で人は亡くなっていく。とくにこの時代は少し前に戦争もあったし、なんの前触れもなく誰かを亡くすことの心残りというか、今作の母と籐一郎さんのことだけじゃなくても、どこかみんなが共有できる思いというのを母が持っていて、それにどれだけ自分が心を揺さぶられるのかという、今回の役でそれが私の一番大きなテーマでした。

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 −−娘にとって母親の恋愛ってもの、すごくアンタッチャブルなものすごく衝撃的なことだなと思うんですが。

 谷村さん:読者の方によくいわれたのは、お母さんを亡くされた方も多くて、「一度も母親と恋愛の話をしなかった。一度くらい聞いておけばよかった」ということでした。志田さんが「どうして目の前からいなくなってしまった人をずっと好きで、心の中で大切に思い続けることができるんだろう」と質問してくださいましたが、世代が違う恋愛って、そういうものがあるでしょうね。果たして(母が好きになった)籐一郎という人の優しさが今の時代にもふさわしいものか分からないけど、あの時代の中では籐一郎という人の美月への優しさが母にはとてもしみたんだろうというふうには思います。それぞれがいろんな事情を抱えていて、そんな中で出会った人を好きになり、もがいていて。

 志田さん:原作を読んだときにまず最初に思った疑問を谷村さんに答えをうかがうことができて、自分の中で解決しました。聞いたからにはしっかりと表現しなくちゃいけないんだなと、ちょっとプレッシャーにもなりましたね(笑い)。

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