09年に公開され、世界で興行収入が3億8500万ドル(約317億2800万円)を記録した、J.J.エイブラムス監督のSFアクション映画「スター・トレック」。その続編の公開を13年9月に控え、再びメガホンをとったエイブラムス監督が、できたてほやほやの9分間の最新映像を携え、ジェームズ・T・カーク役のクリス・パインさんと、今作で悪役を演じるベネディクト・カンバーバッチさん、プロデューサーのブライアン・バークさんとこのほど来日した。4日に東京都内の映画館でIMAX3Dによるお披露目を兼ねたプレゼンテーションが行われた様子をリポートする。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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自分の作品については秘密主義を貫くエイブラムス監督。「イントゥ・ダークネス」というサブタイトルが付く今作についても箝口令(かんこうれい)をしき、内容についてはほとんど明かしてこなかった。それだけに、たとえわずかな映像でもひと目見ようと、プレゼンテーションには、興行関係者や報道陣が多数出席した。
会場にさっそうと現れたエイブラムス監督は、開口一番、「スペクタクルの面でもストーリーの面でも、前作からスケールアップしている。そこに僕の大好きなアクションを詰め込んだ。息をのむシーンも用意してある」と最新作をアピール。キャラクターについても、前作で初登場したUSSエンタープライズ号のメンバーたちの心がつながり、「“家族”となった彼らが、恐ろしい、信じられない体験をしていく。愛する人を救うための究極の決断も迫られる」とハートに訴える内容であることを強調した。身ぶり手ぶりを交えててきぱきと話す様子からは、自信のほどがうかがえた。また、バークさんも「J.J.(エイブラムス監督)の素晴らしいところは、キャラクターを本物らしく見せられるところ。未来の話ではあるが、現在にも通用する人間ドラマが描かれている」と、その仕上がりに太鼓判を押した。
撮影は今年5月に終了し、目下、編集作業の真っ最中だという。今作は、復讐(ふくしゅう)を誓い、大量殺りく兵器と化して帰ってきた1人の男によって、地球に最大の危機が訪れる。若きキャプテン・カークは、世界を滅亡の危機から救うために男との戦いに身を投じていくというストーリーで、どうやらカークもほかのメンバーもそれぞれに、人類のために「犠牲」を払わなければならないようだ。
さて、約9分間の最新映像だが、場面は大きく分けて三つ。まず、ロンドンのとある小児病院。生命維持装置だろうか、それにつながれた少女の両親に、1人の医師が「私なら救える」と話しかける。その医師こそがカンバーバッチさんだった。二つめは、赤い木が生い茂る惑星。白い皮膚の原住民に追われるパインさん演じるカークと軍医マッコイ(カール・アーバンさん)が、追っ手を振り切り、崖から海にダイブする……IMAX3D効果が抜群に生きている場面だ。そしてもう一つは、火山の噴火を鎮めるために、自らを危険にさらすスポック(ザッカリー・クイントさん)。ドロドロのマグマが足元で沸き、一人置き去りにされてしまうという映像だ。
前作のPR以来4年ぶりの来日となるパインさんは、今作で描かれる“旅”を「自己中心的な若者が、さまざまな葛藤や怒りに打ち勝ち、ときには自ら犠牲を払い、最終的には人を引っ張るリーダーになっていくためのもの」ととらえ、自身も「年齢を重ねて成熟した部分を役に反映させていった」と振り返った。
かたや、エイブラムス監督が英テレビドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」を見て、「名前は発音できなかった」が、その演技には「一目ぼれし、起用を決めた」というカンバーバッチさんは、オファーされたときは大喜びしたものの、すぐに「前作以上の大作と期待されている作品に自分が出る」ことの重大さにおじけづいたという。それでも「僕の役は悪者ですが心はあります。そうなる理由があったから悪者になったのです。その人が黒か白か単純に分けられるものではありません。それがJ.J.作品の素晴らしいところであり、俳優にとって演じる上での醍醐味(だいごみ)。完全な悪役とは違うキャラクターに、何かを感じてもらえれば」と、今回の役に託した思いを語った。ちなみに、カンバーバッチさんが演じる悪役の名前は、最新映像の惑星の名前同様、エイブラムス監督の口から明かされることはなかった。
その後、会場を移し、一部のウェブ媒体を対象にミニ会見が開かれた。そこには、エイブラムス監督とパインさん、カンバーバッチさんが出席。前作から4年ぶりに来日したパインさんは、日本に到着して2時間で、おいしいラーメン屋を探し出してさっそく食べ、大満足したこと、ホテルの部屋から見る東京の風景は「ブレードランナー」の世界のようで感動したこと、また、初来日のカンバーバッチさんは「前夜は素晴らしい和食を食べ」、「ホテルの窓からの景色も素晴らしい」と話し、ともに日本滞在を楽しんでいるようだった。
ところで、今回紹介されたポスターには、あるシンボルが隠されている(それが何かは文末をお読みください)。いかにもエイブラムス監督が考えそうなことだが、ともかくそこにあるサブタイトル「イントゥ・ダークネス」について、エイブラムス監督は「数字やコロン(:)はつけたくなかった。クリス演じるカークが極限状態に置かれたとき、どのような選択をするか。ベネディクト演じる悪役を相手にどう生き残ろうとするか。そうしたダークな世界に連れていかれる感覚を表現したかった」と説明した。
最後に、パインさんが「これはSFだけれど夢物語とは違う。地に足のついた、人間性を感じさせるキャラクターが描かれている。そこが見どころ」とアピールすると、カンバーバッチさんも「前作より見事な作品になっている。『SHERLOCK(シャーロック)』よりもいいものになっているかもしれない」と、独特の言い回しで褒め言葉を披露した。そして、エイブラムス監督が「前作を見ていない人でも存分に楽しんでもらえると自負している。未来の話だが、皆さんも共感できる作品だと思う。恐ろしいのは、(悪者は)外見ではなく内面に潜むもの。秘密だったり、体験だったり、それらによって生まれる恐ろしさを感じてもらえるはずだ。そして、俳優たちの演技にぜひ注目してほしい」と締めくくった。「スター・トレック イントゥ・ダークネス」は13年9月公開。(ポスタービジュアルに隠されているシンボルは、USSエンタープライズの制服にもついているスターフリートのブーメラン型のロゴ。それを模した中にカークらしき人間がたたずんでいる)
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<J.J.エイブラムス監督プロフィル>
1966年、米ニューヨーク市生まれ。90年、「ファイロファックス トラブル手帳で大逆転」(日本未公開)で脚本家デビュー。91年、「心の旅」、98年、「アルマゲドン」などの脚本を担当し、98年の「フェリシティの青春」の企画、製作総指揮を務めテレビ界に進出。続く01年からの「エイリアス」が大ヒットシリーズとなり、映画「M:i:3」(06年)の監督に抜てきされ、監督デビューを果たす。ほかに「LOST」(04~10年)、「FRINGE/フリンジ」(08~13年)、「パーソン・オブ・インタレスト」(11年~)といったテレビシリーズを手掛ける一方、「スター・トレック」(09年)、「SUPER8/スーパーエイト」(11年)といった映画を製作。
<クリス・パインさんプロフィル>
1980年生まれ。米カリフォルニア州ロサンゼルス出身。米テレビドラマにゲスト出演し、「プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング」(04年)、「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(07年)などへの出演をへて、「スター・トレック」(09年)で主役に抜てきされた。他の作品に「フェーズ6」(09年)、「アンストッパブル」(10年)、「Black&White/ブラック&ホワイト」(12年)など。現在、13年公開予定のトム・クランシー原作の映画「Jack Ryan」の撮影に入っている。
<ベネディクト・カンバーバッチさんプロフィル>
1976年生まれ。ロンドン出身。マンチェスター大学で演劇を学び、ロンドン音楽演劇アカデミーでも学んだ。多くの英国のテレビドラマに出演。日本では「SHERLOCK(シャーロック)」(10年~)での主演で知られるようになる。他の映画出演作に「アメイジング・グレイス」(06年)、「つぐない」(07年)、「ブーリン家の姉妹」(08年)、11年にはスティーブン・スピルバーグ監督の「戦火の馬」、ゲイリー・オールドマンさんとの共演で「裏切りのサーカス」に出演した。また舞台でも活躍しており、ダニー・ボイルさんが演出した「FRANKENSTEIN」で主演し、ローレンス・オリビエ賞などを獲得した。
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