中村義洋監督と俳優・濱田岳さんの5作目「みなさん、さようなら」が26日、公開された。巨大団地を舞台に笑いと涙の青春物語が繰り広げられる。団地から一歩も出ることなく大人になった主人公の男の12歳から30歳までを濱田さんが演じている。濱田さんでなくては成り立たなかった役柄ともいえる。男が団地から出なくなったのはなぜなのか。その理由とは?
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原作は第1回パピルス新人賞を受賞した久保寺健彦さんの小説が原作。81年、団地に住む107人が小学校を卒業した。13歳の渡会悟(濱田さん)は「団地の中だけで生きていく」と宣言する。中学校に通わず、ラジオ講座で英語を勉強。ランニングと筋トレで体を鍛える。伝説の武道家・大山倍達に心酔し、家の中でもトレーニング。午後は読書。夜には団地に住む同級生の家をパトロールして回った。隣に住む優等生の松島(波瑠さん)は悟に冷ややかな目を向けるが、母親(大塚寧々さん)は優しく見守る。ある日、中学でいじめをうけている同じ団地に住む園田(永山絢斗さん)と仲よくなった悟は、2人でパトロールをするようになる。中学校を卒業すると、悟は団地内のケーキ屋に押し掛け就職。同級生がどんどん団地から離れていくが、悟の「ここから離れない」という決意は固かった……という展開。
風変わりな少年と団地。隣家の幼なじみとのエピソード。80年代の空気を再現し、当時の若者の様子を面白く見ていると、その先に悟の行動の理由があった……。そこで映画が深いテーマと向き合っていたことが、ようやく分かる。その瞬間が鮮烈だ。小さな穴からのぞく風景が穴より広いのと同じように、個人の物語でありながら、時代や社会があざやかに描き出している。同じ団地に住んでいても窓から見える風景が全然違うこと。そして、違う棟のことは何も知り得ないことが映画の中で語られるが、そんなふうに世界は自分の枠でしか見られないという気づきもある。ドキュメンタリー映像も交えながら団地の歴史にも触れ、この時代を生きた世代にはとても懐かしい。26日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほか全国で順次公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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