注目映画紹介:「命をつなぐバイオリン」 3人の音楽がつなぐ友情を通じて戦争の悲惨さを伝える

「命をつなぐバイオリン」の一場面 (C)CCC Filmkunst/Julia Terjung
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「命をつなぐバイオリン」の一場面 (C)CCC Filmkunst/Julia Terjung

 ソ連の支配下にあったウクライナを舞台に、3人の子供たちの友情を描いたドイツ映画「命をつなぐバイオリン」(マルクス・O・ローゼンミュラー監督)が9日から全国で順次公開中だ。重厚なテーマを持った音楽映画で、本物の天才少年バイオリニストが神童役で出演、演奏もしている。岩波少年文庫のような良質の児童文学的な映画で、親子で見に行くことができる。

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 1941年春、ソ連支配下のウクライナのポルタバ。アブラーシャ(エリン・コレフさん)はバイオリン、ラリッサ(イーモゲン・ブレルさん)はピアノの神童として、スターリンの前でも演奏して人々を魅了していた。2人の完璧な演奏は、党の体制の宣伝材料だった。彼らの演奏を聞いたドイツ人少女のハンナ(マチルダ・アダミックさん)は、彼らの先生であるユダヤ人女性イリーナにレッスンを求める。ハンナはアブラーシャとラリッサと友だちになりたかったのだ。レッスンを介して3人は仲よくなっていく。やがてドイツがソ連に戦争を仕掛け、街は戦場になる。3人はさらに友情を深めていくが、ユダヤ人への迫害が始まった……という展開。

 重いテーマに違いないが、今作には親しみやすさ、小学生でも見ることができそうないい意味での親しみやすさがある。3人の子どもたちの友情にスポットを当てた物語が絶妙で、ラリッサがナチスに追い詰められながら演奏するシーンは、ユダヤ人が逃亡するシーンとはまた違ったハラハラ感が漂う。また、本当に弾いている迫力ある演奏も魅力的。アブラーシャ役の少年コレフさんは、「熊蜂の飛行」で超絶的な技を披露。両親ともにバイオリニストで、12歳で米国カーネギーホールでデビューしたほどの才能の持ち主だそう。スターリンからナチスに代わっても、神童を宣伝材料にする大人たち。「大人がバカなせいさ」というせりふが効いている。明からさまな残虐シーンがなくとも、十分に戦争の悲惨さが伝わってくる。今作のように、子どもたちに戦争の愚かさを伝える映画が日本でも作られたらいいのにと感じた。9日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)、23日からテアトル梅田(大阪市北区)ほかにて全国順次公開(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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