母が残した暮らしのレシピカードが、傷ついた父と娘、そして他人を結びつけ、それぞれが再生していく……。ドラマにもなった伊吹有喜さんの小説を基に、タナダユキ監督が泣いて笑える一作に仕上げた「四十九日のレシピ」が9日、公開された。永作博美さんと石橋蓮司さんの父娘が、ホンワカしていい空気を醸し出している。母親と娘の関係の中に、女性の生き方をリアルに繊細に描き出した。
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熱田家の母親・乙美が突然亡くなってから2週間。父親の良平(石橋さん)は何もやる気が起きず、妻と交わした最後の言葉がぐちだったことを後悔していた。そんな良平のもとに、一人の女の子がやって来る。派手なかっこうでズカズカと家に入って来た“イモ”こと井本(二階堂ふみさん)は、乙美に頼まれたらしく、乙美のレシピカードを差し出し、「四十九日の大宴会」をやろうと言い出す。そこへ、夫の不倫に悩んで離婚を決意した娘の百合子(永作さん)が帰ってくる。乙美の知り合いという日系ブラジル人・ハル(岡田将生さん)らも加わって、四十九日の大宴会への準備が始まった……という展開。
大切な人を失った悲しみを共有する者たちが顔をそろえた。そこで見えてきたのは、亡くなった人のありし日の姿だった。夫婦の若いころ、そして娘・百合子との過去のエピソードをはさみつつ、四十九日までの時間がゆったりと流れていく。その中で語られる亡き乙美の人となりが、深く胸を打つ。他人のことも照らし、一家を照らし続けていたことに気づく良平と百合子。乙美が残した生活を楽しむ「気」を受け継いで、若いイモとハルが明るく一家を照らしていくうちに、父と娘の様子が次第に色を変えていくのがよく分かる。永作さんは、夫との関係に悩んでいる姿を繊細に、抑え気味でありながら迫力を感じる演技で見せる。そして、淡路恵子さんが演じるおばさんがリアル過ぎて笑える。ズバズバいうせりふ(ほぼ原作通り)が刺さる女性も多そうだ。9日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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