1999年に米国で出版され、10代から熱狂的な支持を受けた青春小説を、原作者が自ら映画化した「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー監督)が全国で公開中だ。内気な少年チャーリーが、はじけた友だちとともに過ごした高校時代を、輝きと痛みをもって描き出している。出演はローガン・ラーマンさん、エマ・ワトソンさん、エズラ・ミラーさんら。主人公の過去の出来事が次第に明らかになるにつれ、後半はさらに心にチクチクと突き刺さる。
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チャーリー(ラーマンさん)の高校生活が始まった。だが友だちはゼロ。ランチは独りきり。ある日、学校のアメフトの試合を一人で見に行ったチャーリーは同じ授業を選択している変わり者の上級生パトリック(ミラーさん)に、勇気を出して声をかけてみた。気さくに応じてくれるパトリック。義理の妹サム(ワトソンさん)もやって来て、試合後、店に誘われて音楽の話で盛り上がった。パーティーでは踊る2人の輪に加わり、“壁の花”から卒業したチャーリー。自由を愛し、学園カーストとは無関係のパトリックたちとバカ騒ぎをし、サムに心引かれていく。しかし、ある誤解が生じて……という展開。
この秋に公開された台湾映画「あの頃、君を追いかけた」も、青春時代の思い出を書いた原作者が自ら監督していたが、今作も同様で、個人の感情におぼれることのない好作だ。チャーリーはザ・スミスのモリッシーが好きで、疾走するトラックでデビッド・ボウイに酔いしれる。80年代にUKロックを聴いた世代には懐かしい思いもこみ上げてくる。今の若い世代がどう感じるのかは分からないが、「学園カースト」のシビアさは昔も今も同じ。主人公のチャーリーは、地味な高校生だ。彼の目線で語られていく憧れの学園生活。それを手に入れた一方で、陰りも描かれる。そして、チャーリーには秘密の過去もあった……。主人公を演じるラーマンさんは、超大作よりもこういった繊細で内気な役柄の方が似合っているように感じる。それにしても、ミラーさんとワトソンさんは美しい。こんな田舎の高校にいたら、確かに一目お置かれる存在になりそうだ。11月22日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)、ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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