アデル、ブルーは熱い色:主演アデルさんに聞く「2人の出会いのシーンに100テークを重ねた」

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 世界の映画祭で話題の仏映画「アデル、ブルーは熱い色」が5日に公開された。本国の人気マンガを「クスクス粒の秘密」(2007年)で注目を集めたアブデラティフ・ケシシュ監督が映画化。2013年カンヌ国際映画祭で、最高賞パルムドールがマンガ原作に初めて与えられただけでなく、監督と主演女優2人にも贈られる史上初の快挙を成し遂げた。映画は同性の美大生と運命的な恋に落ちたアデルが成長していくさまを描いた。主人公アデルを演じたアデル・エグザルコプロスさんは、初めての恋に身を焦がす女性を見事に演じ切った。今作をきっかけに、共演したレア・セドゥさんとともにファッションブランドMIUMIUのイメージモデルに選ばれるなど、注目を浴びているアデルさん。このほど来日したアデルさんは「これは男女の間にも起きうるストーリーで、ユニバーサルな話です」と語った。

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 ◇男女の間でも起きうるラブストーリー

 高校生のアデルは、街で偶然出会った青い髪の美大生・エマ(セドゥさん)に目を奪われる。やがてエマと激しい恋に落ち、一緒に暮らし始めるが、教師を目指すアデルと画家を夢見るエマとの間に亀裂が入り始める……。高校生だった主人公が、自分の道を見つけて成長していく数年間の物語。運命の恋にのめり込んでいくさまを、5カ月半をかけて撮ったという。

 「時間経過の中に女の子の進化が描かれているストーリーに引かれて役を引き受けました。順番に撮影していったので入りやすかったです。それぞれのステップごとにパーソナリティーを築き上げていきました」

 ケシシュ監督の演出は独特だったという。「こう演じてほしいという指示が全然なく、ヘアメークもなし。ここに立ってくださいと床にテープを貼ったり、俳優を技術で拘束したりせず、スタッフが俳優の動きに合わせていく。あなたの感情を出してくださいといわれました。このストーリーのために自分を投げ出す覚悟がありますか、と問われているようでした」と振り返る。

 1シーンに数多くのテークを重ねるのはザラだった。一目ぼれする2人の出会いのシーンに1日約100テークを重ね、初めてのキスのシーンには1週間を要したほどだ。女性同士のラブシーンには酷評もあったが、動く名画を見ているような美しさに、昨年のカンヌ国際映画祭では審査員長のスティーブン・スピルバーグさんから「これは素晴らしいラブストーリー」と絶賛された。

 「演じているとき、同性愛であるということは全く意識しませんでした。2人の恋の障害はコミュニケーション不足によるもの。男女の間にも起きうる話です。セックスシーンが長いという人もいましたが、私自身は長いとは感じません。アデルは愛のために純粋に自分を投げ出すのですから!」

 ◇アデルはボロボロになりながら初恋に身を投じる

 今作が代表作になったというアデルさん。「陰からいきなり光の中に立たされた感じです。女優として1000以上の扉が開いたと感じるし、第一歩を踏み出したと思う」とうれしそうに胸の内を明かす。

 一方、エマ役のセドゥさんは「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(11年)などに出演、「マリー・アントワネットに別れをつげて」(12年)のヒロイン役でセザール賞の最優秀女優賞にノミネートされるなど、すでにフランスを代表する女優だ。そんなセドゥさんに対し、撮影前は気遅れする部分もあったというが、ケシシュ監督に「君には君のやり方がある」と励まされたという。ケシシュ監督のアイデアで、同じ名前の役名になったのも役との一体感につながったようだ。

 「私たちの世代は自由であるということが一番重要で、役のアデルも同じでした。彼女はラブストーリーを徹底的にやるという意味で自由です。ボロボロになりながらこの初恋に身を投じます。自分に正直に、最後までエマを愛するのです。人を愛することは相手を受け入れること。アデルは自分を犠牲にしてたくさん泣くけど、自由です」

 女性同士の恋愛物語というと、センセーショナルなイメージが先行してしまうが、今作はアデルが自分の道を見つけて歩む話でもある。「ケシシュ監督の作品は常に真実を描き出します。この作品に出演して、私も演技の幅が広がりました」と自身の成長と重ねるアデルさん。自身の周囲の友だちや元彼から高い評価を得られたことがとりわけうれしかったという。

 「『こういう初恋の感情、分かる』と共感してもらったのは、俳優にとってうれしい賛辞でしたね。自分の恋愛を思い出して感情移入ができて、自己投影できる映画だと思います」と今作をアピールする。

 映画は5日から、新宿バルト9(東京都新宿区)、Bunkamura ル・シネマ(東京都渋谷区)、ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で公開中。

 <プロフィル>

 1993年パリ生まれ。幼いころから演劇に興味を持ち、名門リセ・ラシーヌ校に通っていたころ、映画のキャスティングディレクターの目にとまり、プロモーションビデオが注目される。テレビ番組やジェーン・バーキンさんの初長編監督作「Boxes」に出演。11年にはフランス映画アカデミーが選ぶ30人の有望俳優に選出される。今作に出演したことで、その後、アデルさんの元に多くの出演オファーが舞い込んでいるという。

 (インタビュー・文・撮影:上村恭子/フリーライター)

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