「5日以内に参勤せよ」という幕府の無理難題に挑む貧乏藩の不屈の精神を描いた時代劇映画「超高速!参勤交代」が全国で公開中だ。優秀な映画オリジナル脚本に与えられる城戸賞に輝いた土橋章宏さんの脚本を、「おかえり、はやぶさ」(2012年)などの本木克英監督が映画化。藩と民を守るために、知恵を絞ってピンチに立ち向かって進んでいく珍道中を、軽妙なタッチで描き出している。藩主役には佐々木蔵之介さん。ヒロイン役を深田恭子さんが演じ、そのほか伊原剛志さん、西村雅彦さん、寺脇康文さん、「Hey!Say!JUMP」の知念侑季さんらが出演している。
ウナギノボリ
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享保20(1735)年、磐城国。湯長谷藩(現在の福島県いわき市)の藩士たちは、参勤から故郷に帰ったばかりでホッとしていた。しかし、藩主・内藤政醇(佐々木さん)の元に、上様から「5日以内で参勤せよ」とのお達しが届く。老中・松平信祝(陣内孝則さん)から金山の届け出に対して虚偽の疑いをかけられ、再び参勤することになったのだ。大名行列には50人が必要なのに、まったく人が集まらない。苦肉の策で人数チェックの宿役人の目を逃れ、閉所恐怖症の殿のかごに細工もしたりしながら、山道を走り続ける一行。その様子を忍びの者たちが探っていた。一行は無事、江戸にたどり着けるのか……という展開。
これは、中央対地方の構図そのものではないか。弱い立場にいる者たちが団結して正々堂々と闘う姿を、温かい笑いに包みながら描いていて共感が持てる。小さな藩の「負けてなるものか」という意地と、団結力が全編を貫いている。お人よしの殿さまをはじめ、藩士たちはどこかのん気なのだが、西村さん、寺脇さんらの実力派の顔ぶれで、いざというときの頼もしさがにじみ出ている。道中、殿さまのロマンスまで飛び出し、一体、期限内に江戸に着くのだろうかとやきもきさせられながら、次々にやってくるピンチを、遊戯施設のアトラクションのようなアップダウン感で楽しませる。しかし、福島第1原発事故後の現代の日本と重なる部分もある内容で、ただのドタバタ喜劇とは一線を画している。当事者は頑張っている。そこでかける言葉は「頑張れ」ではない。湯長谷藩の奮闘を見て、改めてそう思った。21日から全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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