行定勲:原作もの映像化 決め手は「隙間」 「平成猿蟹合戦図」で初連ドラ監督

1 / 3

 女優の鈴木京香さんと俳優の高良健吾さんが初共演したWOWOWの連続ドラマW「平成猿蟹合戦図」が15日午後10時にスタートする。高良さん演じる新宿・歌舞伎町のバーテンダーが国政選挙を目指す痛快なストーリーだ。連続ドラマの監督に初めて挑戦した行定勲監督に話を聞いた。

ウナギノボリ

 ドラマは「悪人」「横道世之介」などで知られる吉田修一さんの同名小説(朝日新聞出版)が原作。東京・新宿の歌舞伎町で起きたひき逃げ事件を目撃したバーテンダーの浜本純平(高良さん)は逮捕された男と現場にいた男が別人だと気付く。世界的チェロ奏者の湊圭司(萩原聖人さん)が真犯人と気付き、一獲千金を狙って湊をゆすることにした純平の前に、湊の敏腕マネジャーの園夕子(鈴木さん)が立ちはだかる……という展開。福田彩乃さん、高岡早紀さん、中原丈雄さん、石橋蓮司さん、マキタスポーツさんらも出演する。

 連続ドラマの監督に初挑戦した行定監督は「1本の映画を撮るくらいのスケジュールで全6話分(300分)を撮った。撮影前はとんでもないと思ったけれど、意外とやれました」と笑顔で語る。「映画はものすごくいろいろな選択肢の中でいろいろなパターンを試したりしているんですが、その時間もないので、これで行くって決めたら次のカットの撮影にいかないといけない。ある種の潔さにつながったのでよかったですね」と振り返った。

 「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)や「春の雪」(05年)など原作がある作品を多く手がけている行定監督。同じ吉田さんの小説を原作に、10年に公開された「パレード」も手がけている行定監督は、原作ものを映像化する際の決め手について「(作品に)自分が関われるかどうかの隙間(すきま)があるかどうか」と語る。「(同ドラマも隙間が)いっぱいあった。登場人物は皆、ポジティブで、例えヤクザといざこざを起こしてもどこか楽しそう。そんな彼らのキャラクターを借りて何か訴えられるんじゃないかと思ったし、人と人がつながっていく瞬間を描けると思った」と話す。

 同ドラマでは、今までまったく別の世界で生きてきた夕子と純平の意図せぬ出会いをきっかけに、純平が周りの人々を巻き込みながら国政選挙に挑む姿が生き生きと描かれる。

 行定監督は「政治っていうと暗澹(あんたん)たる何か希望のないものに見えるけれど、それでいいのかなって思った。政治ものは堅苦しいと思われるかもしれないけれど、この作品は違う」と強調する。「今の世の中自体が無関心で、ドラマの主人公たちもそういう人間なのかもしれないけれど、人との関わり合いを通して、誰もが本当は自分の国のことや未来、周りのことを考えないと、という地点にたどり着く」と作品の魅力を語り、「(視聴者には)自分ももしかしたらドラマの登場人物のような関わり方や考え方をしていけば何か打破できるかもしれないというように思ってもらえれば、いいですね」と力を込めた。ドラマはWOWOWプライムで11月15日から毎週土曜午後10時放送。全6話で第1話は無料放送。

写真を見る全 3 枚

テレビ 最新記事