注目映画紹介:「悪党に粛清を」 ミケルセンのカッコよさにしびれる西部劇

「悪党に粛清を」のワンシーン (C)2014 Zentropa Entertainments33 ApS, Denmark, Black Creek Films Limited, United Kingdom & Spier Productions (PTY), Limited, South Africa
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「悪党に粛清を」のワンシーン (C)2014 Zentropa Entertainments33 ApS, Denmark, Black Creek Films Limited, United Kingdom & Spier Productions (PTY), Limited, South Africa

 デンマーク出身の俳優マッツ・ミケルセンさん主演の映画「悪党に粛清を」が27日から公開される。クリスチャン・レブリング監督もデンマーク出身。北欧人が西部劇とは意外だが、これがまったく違和感がない。ミケルセンさんの内奥にあるひとくせありそうな雰囲気が妙にマッチし、思いがけない新鮮さと面白さを生み出している。

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 時は1871年。7年前、兄ピーター(ミカエル・パーシュブラントさん)とともに祖国デンマークから米国の西部にやって来た元兵士のジョン(ミケルセンさん)は、荒野を開拓し、やっと生活の基盤ができたことからデンマークに残してきた妻(ナナ・オーランド・ファブリシャスさん)と息子を呼び寄せる。ところが再会の喜びもつかの間、妻子はならず者に殺されてしまう。怒りに駆られたジョンは、そのならず者を射殺するが、それがさらなる災厄を招いてしまう……という展開。

 ミケルセンさんのカッコよさにシビれた。ジョンは感情をあらわにしないが、家族を殺された慟哭(どうこく)と憎悪はひしひしと伝わってくる。半面、感情が読めないだけに内面の神秘性が増幅され、反撃を開始する終盤の“してやったり”感が際立つ。今作の妙は、古典的な西部劇とは異なり、映画の早い段階でジョンが復讐(ふくしゅう)を遂げることだ。その後、物語はジェフリー・ディーン・モーガンさん演じるデラルー大佐という凶暴な悪役を得て新たな展開を見せることになるが、太陽が照りつけ、砂ぼこりが舞う米西部が舞台にもかかわらず、どこか冷え冷えとした印象を受けるのは、“北欧”イコール「寒そう」という勝手な思い込みのせいだろうか。ちなみに撮影は南アフリカで行われたという。ほかに、「007/カジノ・ロワイヤル」(2006年)でボンドガールを演じたエバ・グリーンさん、元プロサッカー選手のエリック・カントナさんらが出演。27日から新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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