米国の名優ビル・マーレイさん主演の映画「ヴィンセントが教えてくれたこと」(セオドア・メルフィ監督・脚本)が4日から公開されている。マーレイさん演じる変わり者の老人とお利口な少年が交流し、互いに影響を与え合っていく姿を描くハートウオーミングコメディーだ。昨年封切られた米国では、わずか4館からスタート。その後2500館に拡大し、最終的には製作費1300万ドル(約15億6200万円)に対して興行収入4400万ドル(約52億8700万円)を記録したという話題作だ。
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酒とギャンブルに金をつぎ込み、偏屈で人を寄せ付けないヴィンセント(マーレイさん)の家の隣に、シングルマザーのマギー(メリッサ・マッカーシーさん)と12歳の息子オリバー(ジェイデン・リーベラーくん)が引っ越してくる。病院で働くマギーに頼まれ、オリバーの放課後の面倒を渋々ながら見ることにしたヴィンセント。そんな彼を最初は警戒していたオリバーだったが、一緒に過ごす中でヴィンセントの優しさに気付いていくという展開。
ヴィンセントがオリバーに教えることといったら、バーでの飲み物の注文の仕方だったり、競馬場での馬券の買い方だったり、保護者が聞いたら眉をひそめるようなことばかり。しかし、もともと礼儀正しく素直でお利口なオリバーは、日々の交流からヴィンセントの真の人柄を見抜いていく。はたから見れば非常識極まりない“教え”を、つぶらな瞳と小柄な体全身で真剣に受け止めるオリバーが愛らしい。そのオリバーが、ある方法でヴィンセントの本当の優しさを周囲に知らしめようと行動を起こす。そのクライマックスに当たる場面では、それまでの笑いがうそのように、じわりと熱いものがこみ上げた。マーレイさんの偏屈ジジイぶりもさることながら、オリバー役のジェイデン・リーベラーくんの可愛さといったらない。また、母親役のマッカーシーさん、オリバーの学校の教師役クリス・オダウドさんの演技が軽妙な笑いを与える。さらに、ナオミ・ワッツさんが、ヴィンセントの家に出入りするロシア語なまりのきつい英語で毒舌をはく妊娠中のストリッパーに扮(ふん)し、普段と一味違う演技を見せ、作品にさらなる味わいをもたらしている。ちなみに今回の物語のアイデアは、今作が監督デビュー作となるメルフィ監督自身の体験から生まれたものだという。4日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で順次公開。 (りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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