劇場版アニメ「それいけ！アンパンマン おもちゃの星のナンダとルンダ」（川越淳監督）が2日に公開された。映画は、原作者のやなせたかしさんが残した楽曲「勇気のルンダ」がモチーフで、おもちゃの星からやってきたわがままなお姫様ルンダが、大切な「おもちゃスティック」を落としてしまったことから巻き起こる騒動を描く。ゲスト声優を務めるお笑いコンビ「中川家」の剛さんと礼二さんに、「アンパンマン」の魅力や子供の頃のヒーローについて聞いた。

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　◇今作への出演に「世界観をどうやったら壊さないか」意識

　剛さんは海が汚れないように守る海の主のヌラ、礼二さんは女優の波瑠さんが演じるルンダといつも一緒に行動する優しくて体の大きなロボット・ナンダの声をそれぞれ担当した。自身が演じた役について、「ナンダはルンダにとって、なくてはならない存在。（ルンダに）振り回されますが、怒らないし、優しい。（自分も）こういう性格だったらいいなと思います」と礼二さんは笑顔で語る。

　一方、剛さんは「（ヌラは）海の主ですが、低い声でゆっくりしゃべりるので僕らしくないかな」と照れ笑い。「『アンパンマン』を見ていて、初心に返らされるというか、いつも『自分はなんて汚れているんだろう』と思います（笑い）」と自虐的に語る。そして、「子供が中学生なので、もうちょっと（出演が）早かったら（見てもらえたのに）なとは思いました」とほほ笑む。

　アフレコで、礼二さんは「与えられたことに対して、それ以上にやったり、わざと外してみたりするのが（普段の）僕らの仕事ですが、信頼と実績の『アンパンマン』なので、この世界観をどうやったら壊さないようにできるか」を意識したという。「役作りというと自分が出てしまうので、自分を消しながらもゲスト声優としてやっていることを出すのは難しかった」と振り返る。

　続けて、礼二さんは「世界観を崩すのはだめだと思いますし、老舗のところに行って勝手なことをするのも違う。さじ加減がうまくいったかどうか、楽しみでもあるし、不安でもあります。ただ、違和感なく楽しかったと言われるのが一番」と神妙な表情で語る。

　剛さんも「普段とはまったく別の仕事なので、普通に臨もうと思いました」と同意し、「自分の声がどう聞こえるかという仕事を普段はしていないので、極力余計なことはしないようにしました。例えば、俳優さんがバラエティー番組に出ると、お笑いのイメージでテンションを上げてきたりしますが、『あっ……違います』となったりもするので」と体験談を交えて説明すると、礼二さんも「それはある！」と言ってうなずく。さらに剛さんは、「多分、監督さんも僕らがいきなり変なキャラクターを作っていったら『違います』となるでしょうし（笑い）。だから最初は普通でいい」と持論を語る。

　◇「感動するし、大人もハマる」

　中川家の2人が子供の頃は、まだ「アンパンマン」がテレビ放送されていなかったが、「僕らが若手の頃は『アンパンマン』をネタにしていましたし、当時、ネタにしている芸人は多かった。アンパンマンのいじり方で、芸風が分かる」と礼二さんが明かすと、「今でも若手はやっています。それだけ知られているということ」と剛さんが言い、「まさか何年もたってから、声のお仕事をいただけるとは夢にも思わなかった（笑い）」と礼二さんは笑顔を見せる。

　そんな「アンパンマン」の作品の魅力について、「純粋さというか、今の世間と真逆なのがすごいなと思う」と礼二さんは切り出し、「一瞬でも嫌なことを忘れられるから、意外と大人が見た方が、自然とストレス解消になったりしていいかもしれない。大人にとっては簡単な物語だから気軽に見られるし、子供はもう夢中になって見られる」と大人にも視聴を勧める。

　剛さんも「『アンパンマン』は結構感動するし、大人もハマる」と賛同し、さらに「（『アンパンマン』の）DVDでは最後に『これを見たら片づけよう』とか言ってくれるし、歯磨きから国語や英語も全部教えてくれるなど、いろいろ教えてくれるから大人は楽かも（笑い）。見た後の半日はその通りに行動してくれますから」と楽しそうに話すと、礼二さんが、「仕上げはアンパンマンこどもミュージアムに連れて行って、パンを買って帰る。すてきです」と絶妙な返しで笑いを誘う。

　◇わがままな姫ルンダを見て「女の子は難しい」

　映画にはわがままな性格のルンダが登場するが、礼二さんは現在6歳の女の子の父親として、「今ちょうどその時期なので悩んでいます。何をするのも僕が言ったことの反対を言う。女の子は難しい」と打ち明けると、「女の子は『例えば？』とか言う（笑い）」と剛さん。「そう。ああ言えばこう言う感じ」と礼二さんは深くうなずき、「ちょっと注意するとすねたりするし、そのへんは嫁のほうが冷静。突き放したり、ときには真剣に叱ったりと、男は意外とそれができない」と苦笑い。

　双子の男の子の父親である剛さんは「女の子はうそもうまいから、大変だと思う。男はアホですから、すぐうそがばれる。『誰これやったの？』って言われて、女の子はうまいことかわすだろうけど、男は『えー』って、もうばれてる（笑い）」と笑い、さらに、「浮気がばれたときも『えー』とか言うから、『えーじゃないでしょ！』と怒られる」と大人に置き換えて話す。すると礼二さんが「大人になってもアホ」と言って笑う。

　◇「しょくぱんまんは二の線でカッコいい」（礼二）

　中川家の2人は「アンパンマン」の中で「カバおくん」が好きなキャラクターだが、それ以外に気になるキャラクターとして、剛さんは「ばいきんまん」、礼二さんは「しょくぱんまん」を挙げる。その理由を、礼二さんは「二の線でカッコいい」と切り出し、「子供のときから僕にはなかった、優秀で男前でよくもててみたいな（笑い）。そんなこと関係ないし、違うところで頑張ればいいと思いますが、一人の男として立ち返ってみると結局やっぱりそっちかい！というのはある。そういう人になってみたいという憧れがあります」と説明する。

　一方、剛さんはばいきんまんについて「やられてもやられてもぶれない」と評し、「ドキンちゃんの面倒を見て、こいついいやつなんじゃないかなと、たまに思ったりする」と笑いを交えて語ると、礼二さんも「ばいきんまんが変装するのが好き。（正体）分かるやろと思いながらも、あれが可愛い」と賛同する。

　◇「海水浴に行ったときに思い出して」（剛）

　アンパンマンは子供たちのヒーローだが、2人とってのヒーローとは……。「僕らにとっては漫才師がヒーローというか。ちょうど漫才ブームの頃で、寝ても覚めてもという感じでした」と剛さんが話すと、礼二さんも「確かにそうだった」と同意する。続けて、「親戚のお兄ちゃんとか親は、漫才師をバカにした感じで見てましたけれど、僕らにはカッコよく映っていて、“芸人様”という感じだった」と剛さんは感慨深げに語るも、「この世界に入って先輩にあいさつしに行ったときは、パンツ一丁で寝ていたりしていたので、『夢を壊さないでください』って言いましたけど」と笑う。うなずきながら聞いていた礼二さんも「人を笑わせるのはカッコいいなと子供ながらに思っていた」と振り返る。

　それぞれが演じたキャラクターの見どころについて、礼二さんは「ナンダは心が優しくて、最初は目立ちませんが、最後の方はレールの上を走って機関車にもなったりと大活躍します」とアピールするも、「僕は気は長くないし、こういう優しい人にならないとだめだなと。アフレコしながら（ナンダは）優しいと思っていました」と自身の性格とは違うと自虐的に語る。そしてヌラ役の剛さんは、「海水浴に行ったときに思い出してくれたら（笑い）。海を汚さないようにお願いします」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。

　＜プロフィル＞

　中川剛さん（1970年12月4日生まれ）と礼二さん（1972年1月19日生まれ）のお笑いコンビ。大阪府出身。96年にABCお笑い新人グランプリで最優秀新人賞受賞したほか、多数受賞。2001年にM－1グランプリで初代チャンピオンに輝く。テレビのレギュラー番組を持つほか、CMやテレビドラマなど活動の幅を広げ、02年には映画「明日があるさTHE MOVIE」、04年には「スクール・ウォーズHERO」に兄弟で出演。声の出演は11年にテレビアニメ「遊☆戯☆王ZEXAL」（テレビ東京系）に本人役で出演し、14年公開の「ポケモン・ザ・ムービーXY『破壊の繭とディアンシー』」で劇場版アニメに初挑戦している。

　（インタビュー・文・撮影：遠藤政樹）