第155回直木三十五賞(以下、直木賞)を受賞した荻原浩(おぎわら・ひろし)さん(60)が19日、東京都内のホテルで行われた受賞会見に出席。5度目の直木賞ノミネートにして、今回「海の見える理髪店」(集英社)で受賞した荻原さんは、第一声で「ほっとしています」と胸をなで下ろし、「肩の荷が下りたような感じ。どんな賞もそうなんですが、いつも心の平和を保つために、落ちるシミュレーションしか頭でしていないので、今回は逆パターンが来て、『どうしようかな』と少し戸惑ってもいます」と素直な感想を語った。
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荻原さんは、1956年6月30日生まれ、埼玉県出身。成城大学経済学部卒業。広告制作会社勤務、フリーのコピーライターを経て、97年「オロロ畑でつかまえて」で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2004年の「明日の記憶」で第18回山本周五郎賞、14年の「二千七百の夏と冬」で第5回山田風太郎賞を受賞。これまで「明日の記憶」が渡辺謙さん、「愛しの座敷わらし」が水谷豊さんの主演で映画化されている。直木賞には、05年の「あの日にドライブ」、06年の「四度目の氷河期」、08年の「愛しの座敷わらし」、10年の「砂の王国」が過去に候補に挙がった。
受賞の心境を改めて聞かれた荻原さんは、「本当にありがたい」と喜びつつ、「でも、結果がどうあれ、すでに出してしまった本は中身を1文字も変えられないのと一緒で、受賞したからといって自分が変わったりするのはおかしい。だから、直木賞を取ったからどうだ、というのは自分の中では考えないようにしている」とコメント。一方で「作家の寿命は延びたかな。ちょっといやらしいですけど」と笑いながら語り、前職にちなんで“受賞につけるコピーライト”をリクエストされると「『明日もまた書こう』みたいなことですかね」とシンプルに語った。
また、荻原さんは今年還暦、作家人生20周年を間近に控えた節目での受賞にもなるが、「年齢は向こうからやってくるもので、自分自身は何も変わるところがない。20年もたまたま。だから、そういう意味での感慨はないですね」とあっさりした感想。しかし、周囲からそのように言われることには「せっかくそう思ってもらえる年でもあるので、気持ちを新たに頑張ってみようかなと」と発奮し、「何か新しいことにチャレンジしてもいいかなと思っています」と意欲を見せていた。
芥川賞は村田沙耶香(むらた・さやか)さんの「コンビニ人間」(文學界6月号)が受賞した。
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