小野憲史のゲーム時評:韓国で「アトム」「真・三國無双」のゲーム登場 モバイルゲーム盛況

韓国のゲームイベント「G-STAR」
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韓国のゲームイベント「G-STAR」

 超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」元代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、韓国の釜山で開かれたゲームイベント「G-STAR」と、韓国の最新ゲーム事情について語ります。

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 韓国最大級のゲーム展示会「G-STAR (Game Show & Trade All Round) 2016」(主催・韓国インターネットデジタルエンターテインメント協会)が釜山のBEXCO (Busan EXhibition & Convention center)で11月17~20日、開催された。PCのオンラインゲームが盛んで“オンラインゲーム大国”で知られる韓国だが、今回はモバイルゲームの新作が注目を集めた。

 日本では2016年のゲーム市場予測がモバイルゲーム7800億円、家庭用ゲーム4050億円、PCゲーム650億円(ファミ通調べ)だが、韓国では2017年の市場予測がPCゲーム7兆7000億ウォン(約7200億円)、モバイルゲーム4兆4000億ウォン(約4100億円、韓国コンテンツ振興院調べ)と、依然としてPCゲームのシェアが大きい。しかし横ばいのPCゲーム市場に対して、モバイルゲーム市場は成長を続けており、大手ゲーム会社も無視できなくなってきた。

 PCゲームで韓国トップのネクソンは、一般展示エリアで3分の1を占める巨大ブースを設営し、過去最大となる35タイトルの新作ソフトを出展した。うちPCゲームは7タイトルでモバイルゲームは28タイトルとなり、モバイルゲームへの力の入れ具合が感じられた。ブースでは開発に3年をかけたPCゲーム「ペリアクロニクルズ」をはじめ、平均1時間半待ちの列となった。モバイルゲームでは、コーエーテクモゲームスが台湾XPECと共同開発し、韓国ではネクソンコリアが運営する「Project 真・三國無双(仮称)」や、人気PCゲーム「テイルズウィーバー」が原作の「テイルズウィーバーM」などが人気を集めた。

 一方、モバイルゲームで韓国トップのネットマーブルは、人気映画が原作の「スター・ウォーズ:フォース・アリーナ」、韓国PCゲームの顔とも言える「リネージュ2」のモバイル版「リネージュ2:レボリューション」などを出展した。手塚プロダクションと契約したLONGTU KOREAは「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」が登場するモバイルゲーム「CatchCatch of Atom」を出し、注目を集めた。

 日本企業ではソニー・インタラクティブエンタテインメントがプレイステーション(PS)4の新作タイトルを出し、PSVRの試遊コーナーも設置した。初出展のバンダイナムコエンターテインメントは「SDガンダム Gジェネ ジェネシス」や「鉄拳7」など、家庭用のキャラクターゲームを中心に出展した。

 モバイルゲームは、基本プレー無料のアイテム課金モデルが主流で、ユーザー数を増やす施策が求められる。しかし韓国では、高機能・高性能のハイエンド端末を対象にしたゲームも数多く見られた。日本より人口が少ない韓国では海外展開が前提となり、そのため世界規模でユーザー数がどのくらい見込めるという判断が重要視されるからだ。

 ゲームのクオリティーもおしなべて高く、「セブンナイツ」(ネットマーブル)「サマナーズウォー:Sky Arena」(Qikuyx)など、日本でヒットするタイトルも多い。韓国企業が本格的にモバイルゲームに舵を切り始めたことで、日本のゲーム業界にも影響を与えそうだ。

 ◇プロフィル

 おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長をへて2000年からフリーのゲームジャーナリスト。08年に結婚して妻と猫3匹を支える主夫に“ジョブチェンジ”した。11~16年に国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表として活躍。退任後も事務局長として活動している。

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