ダンダダン
第5話「タマはどこじゃんよ」
10月31日(木)放送分
人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の最新シリーズで、1978年に公開された「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」をモチーフにした「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」が2月25日に公開される。イスカンダルからヤマトが帰還して3年後、宇宙の平和を願う女神テレサの願いとは反対に、宇宙の覇者を目指す帝星・ガトランティスが台頭し、地球は軍備増強の道を歩み始める……というストーリーだ。シリーズ構成・脚本を手がけた小説家の福井晴敏さんに話を聞いた。
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劇場版ではないのですが、小学生のころにテレビで放送されたのを見て、子供ながらに「このアニメはすごい大事なことを話そうとしているんじゃないか」と思って、泣いた記憶があります。当時はビデオが普及しておらず、ソフトもない時代でしたから、リアルタイムで見るしか方法がなかった。そしてレンタルビデオが流行した大学生のころ「昔泣いたけれど、今になって泣くことはないだろう」と思ってみたら、当時よりぼろ泣きでした。大学生といえば、現実社会に組み込まれることが迫っていて、だからこそ彼らの純粋さがダイレクトに刺さったのでしょう。見る年齢によって印象の変わる作品でした。
「なんじゃそりゃ」と思われる人もいるでしょうけど(笑い)。メインコピーは「この『愛』は宇宙を壊す」とあって、決して良いものとして書いていないんです。今世界を壊しているのは愛で、ほかの人との愛が違いすぎて争いが起きる。そういう複雑化した社会を踏まえて、サブタイトルを「愛の戦士たち」としています。昔の「ヤマト」が好きな人には、裏切らない筋運びになっていると思いますよ。
当時は「特攻賛美」と言われましたが、今になって見返すと「もっと広いところから描いている作品ではないか」と思い、「じゃあオレにもやれるな」と思いましたね。現在の人たちはみな今の社会の未来を予想するとき「想像していたものと違う。もっと悪くなりそうだ」というのは、何となく感じているでしょう。今は当時よりも困難な時代ですから、ヤマトの旅路にシンクロできると思います。
今は、文芸と一般の市場が乖離(かいり)して、小説は商売にならないんです。普通の読者に「お気に入りの作家」を聞いて半分は言えるとして、では「その作家の最新作は?」と聞くと答えられない。小説で弾を打ち続けても、もう閉じられた層にしか届かないのが現実。世間にアピールしつつ、世に広がる発表をする媒体はアニメが適当でしょう。そこは冷静に見ないと。
元々は小説を書いていたときも、映像を想定した部分もあるので、あまり苦労はありません。アニメの脚本は限られた時間の尺で、こなさなければいけないものを提示するように、狙いすまして撃つ感じです。機関銃と狙撃銃の差ですね。アニメの脚本はあくまでも全体の1ピースで、音楽や演出と合体するものなので、テキストで全部をやる必要はありません。今回も、もっと良くならないか?という細部の悩みはありましたが、基本航路はそのまま反射的に行けた感じで迷いはなかったですね。
「ガンダム」は、既に多くの設定があり、それを踏まえればいいので、第二次世界大戦のフィクションを作るのと変わりがないんです。逆に「ヤマト」は、「ガンダム」ほど緻密(ちみつ)な設定はないので、「何を語るのか」を設定した上で、作品の世界を起こしていく形になるので、ガンダムとは違いますね。
前作の「2199」の残っている宿題にも答えつつ、今の日本のことを考えました。震災で我々は国が亡びるような、それに近しい経験をしました。そういう意味では、ガミラス戦争で地球が置かれた立場とは類似点があるわけで、同じような距離感で描けそうとは思いました。滅亡寸前の経験をした人間がどういう選択をするのか。だからヤマトの持っていた空気を選択するのは、それほど大変ではありませんでした。元のヤマトも時代と対話した物語だからこそ、人々の心に響くんです。
さすがに前作「2199」のヤマトを知っていた方がいいですね。しかし、見ていない人も公式サイトにある動画「内田彩の4分でわかる宇宙戦艦ヤマト2199」を見ていただければ、見られると思います。難しいことはないので、劇場に足を運んでぜひ楽しんでください。
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