ゴシック小説の名作「フランケンシュタイン」を基にした同名ミュージカルが17、18日に名古屋市東区の劇場「愛知県芸術劇場大ホール」で上演される。科学者ビクター・フランケンシュタインを慕う軍医のアンリ・デュプレと、ビクターが生んだ怪物の2役を演じる、ご当地出身の加藤和樹さんに、役への思いや見どころを聞いた。
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「フランケンシュタイン」は、韓国でロングランヒット。日本初演として今年1月から東京、大阪などで上演された。物語の舞台は19世紀初頭のヨーロッパ。戦死した兵士をよみがえらせる研究をしていたビクターが、自分の身代わりに処刑された友人のアンリを生き返らせようとする。しかし、誕生したのはアンリの記憶を失った怪物。怪物はビクターを恨み、復讐(ふくしゅう)を誓う……というストーリーだ。
自身が演じるアンリについて「曇りのない、まっすぐな人」と語る加藤さん。「生きることに絶望していた人間が、ビクターの太陽のようなところに引かれて、ともに歩み、その人のために死ぬ。とても悲しいんですけど、彼としてはとても幸せな人生だったんじゃないかな」。物語には「絶望しかない」と言いながらも、「僕、個人としては、怪物もある意味、幸せだったのかな」と考えている。
加藤さんらメインキャストが1人2役を演じる。ビクターを演じる中川晃教さんと柿澤勇人(はやと)さんは闇の闘技場の主人ジャックも演じる。加藤さんとともにアンリと怪物を演じるのは小西遼生さんだ。
「それぞれ真逆のキャラクターを演じるので、一度で2度おいしい。ファンの方にとってはたまらないと思います。衣装は凝っていますし、メークや歌がキャラクター(役)によって全く違って、声質も変えたりしている。聴きどころであり、見どころですね」と加藤さん。
壮大な音楽も話題で、「歌う側からすると難解な音楽ですが聴き心地はとてもいいと思います。(音域が)低いところから高いところまでありますし、面白い仕掛けみたいなものがちりばめられていますね。オーケストラの編成も大人数。とても上質な音楽を楽しんでいただけると思います」と自信を見せる。
ビクターとアンリは柿澤さんと小西さん、中川さんと加藤さん、柿澤さんと加藤さんの組み合わせで演じられる。中川さん、柿澤さんのビクター2人とのやりとりは「全く違う感情が芽生えますね」という。
「中川さんはとにかく天才気質。もちろん努力の人でもありますけれど、歌が素晴らしくて天才という役が似合う。だからこそ、そこに引かれていくし、この人についていきたいと思える。柿澤さんは、芝居への熱量がものすごい。そこに胸を打たれる部分もあるし、支えてあげたいと思える」
しかし自らは、芝居において「やることは変わらない」とクールな表情。一方で「そういう心づもりがあるだけで見え方が変わってくると思います。どの公演も僕らは命を懸けてやっています」と熱い思いをみなぎらせた。
「名古屋公演で楽しみなこと」を聞くと「ごはんです」と即答した加藤さん。「公演のことじゃないですね」と照れ笑いしつつ、「地元が大好きなので、地元の空気の中でお芝居ができるのも楽しみの一つなんです。それに加えて、生まれて18年間育った場所のものを食べられるというのは力強く、心強いですね」と話す。
みそカツ、みそ煮込みうどん、ラーメンチェーンのスガキヤ、喫茶店チェーンのコメダ珈琲店などが好き。“名古屋人”の定番品で、加藤さんの住む関東では手に入りづらいチューブ型みそ「つけてみそかけてみそ」などは帰省の度に「必ず買って帰りますよ」という。
音響の良さに定評がある愛知県芸術劇場大ホールに出演するのは初めて。「劇場によって聴こえ方や気候が変わってくるので、とても楽しみです」と笑顔を見せた。
<プロフィル>
かとう・かずき。2005年にミュージカル「テニスの王子様」で注目され、06年4月にミニアルバム「Rough Diamond」でCDデビュー。特撮ドラマ「仮面ライダーカブト」、「真田十勇士」の舞台版と映画版、舞台「No.9~不滅の旋律」などに出演。声優としても活動している。今年6月に東京、大阪、名古屋でライブ「Kazuki Kato Live "GIG" TOUR 2017~pop'n splash!」を開催。10月からは東京でミュージカル「レディ・ベス」に出演する。